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記憶の先に  作者: 結季奏
1/2

一日目

ある朝めが覚めるとそこは、知らない場所だった。


真っ白な壁、床。そしてベット。

自分の手へつながる点滴。


そして、ずきずきと頭が痛む。

いや、体中が痛い。


そして。

一番に思ったことがある。




「僕は誰だ……?」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あなたの名前は、吉河けいご。おはよう、目が覚めたみたいね」


知らない人がいる。

ああ。頭が痛い。



「ここは、どこだ?」


「ふふふ。本当に記憶がないのね。ここは、病院よ。

けいごは、交通事故に遭って記憶をなくしたの。って言っても覚えてないよね」


「君は……?」


「ああ!私?私は、佐々村もも。君の恋人だよ」


初対面と思われる彼女はそう言った。


「佐々村さんが……僕の……恋人?」


「うん。大丈夫、覚えてないよね。気にしないで」


彼女は小さくわらった。

着ているのは制服。白のセーラー服に水色のリボン。それに、彼女のショートカットがよく似合う。


僕の学校は、彼女と同じなのだろうか。


ふ。とそんなことを考えた。

「ふふ。あんまり慌ててないのね」


佐々村さんが呟く。

ああ、確かに。

僕は、どうやら記憶をなくしたらしい。

しかし、焦らないし、驚きもしなかった。


「僕は、これからどうしたらいいのか?」


そのぐらいしか、考えることはなかった。


その問いを聞くと彼女は微笑んだ。そして、耳元で言う。

「記憶を、取り戻さないで生きることかな?」


「え。」


「君の名は吉河けいご。

中学一年生。西丘中学校へ通っている。

親は吉河花と、吉河しょうた。

部活は、入ってない。帰宅部よ

そして、私。佐々村ももと付き合ってるの

おとなしい性格で、運動は少し苦手。でも勉強はそこそこできる。はて、記憶を、なくしたけど勉強の方は大丈夫かしら?

君はこれから、普通に生きること。病院も今週中には退院できるわ。私がサポートするから」


「は……はい……」


頭の中はすでにショート寸前。

だけど、どうやら僕には、困っていることもないもなさそうだ。


「僕は、吉河けいご。……中学一年生……」


その時だった。

「けいご!!」


勢いよく開いたドア。

女の人と男の人が立っている。


「ええと……誰だ?」


すごい勢いでこちらにくる。

「……よかった……」


抱きしめられた。

ああ、なんとなく予想がつく。

「お母さん?お父さん?」


驚いたような目でこちらをみてくる。

「分かるの?けいご」


「ううん。わかんないけど、なんとなく」


二人は涙を流して喜んでくれた。


……僕は、きっと幸せな人だったんだ。

  佐々村さんは、微笑んでこちらを見ている。


どうして、僕は、記憶を取り戻さないで生きろと、言われたのだろうか。

そんな疑問が頭に浮かんだ。

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