異世界身体能力事情
結局その日は、レイのテントで寝た。
ホモになりたいという位の相手と一緒だったので、和哉は熟睡するつもりなかったが、いつの間にかぐっすりと寝入っていたらしい。
起きるとすでにレイは起きており、朝食の支度をしながら火の番をしていた。
「なぁ、あんた、ちゃんと眠ったのか?」
あくびをしながら尋ねる和哉にレイは言った。
「そんなに不用心に寝入っているようじゃ、この世界ではすぐに死ぬぞ」
「誘拐しといてよく言う」
カズヤの言葉にレイは一瞬の沈黙のあと言った。
「すまなかった。カズヤの世界では当たり前の事だったよな。
だが、こっちではこっち風に慣れろ。たとえば剣の扱いとかな」
剣を押し付けられ、和哉は眉をひそめたままそれを受け取った。
体育の授業で剣道を少しした程度でこんな危険物とは関わった事がない。
「まずは慣れろ」
それから一週間程、剣や弓などの基本的な扱いを強制的にレイから学ばされた。
不本意だ。
ギフトや加護のような物は和哉にはない。
だが元の世界では並の運動神経とセンスしかない和哉だったが、世界を渡った時に魔力に親和性が出来るらしくこちらの人間よりは多い魔力を持つ事が出来ていた。
和哉はレイに教わりながら「身体強化」や「身体と思考の加速」を身に着け
現代モヤシっ子のグレードをアップする事に成功していた。
早い話が標高が高く重力も重い土地から平地で重力の軽い地に来たのと一緒で
身体が軽かった。
視力はあがり感覚は研ぎ澄まされ、今まで曇りガラス越しに見ていた世界が一気にクリアになったかのようだった。
もちろん身体能力もあがっている、そこに魔力による強化を施せばこっちの世界ではほどほどに強い人になるらしい。
試しにその辺の木を抜いてみれば雑草を抜くかのように簡単に抜ける。
和哉はそれに男子の浪漫を感じたが同時に危惧をも感じた。
これはこちらでよほど鍛えないと戻った時に下手をすると前より身体能力が落ちる可能性に気がついたからだ。
水中から出たばかりの身体のように、無重力生活をしている宇宙飛行士のように 元の世界に戻ったとたん身体が重く感じられ、動きずらく感じる事になるかもしれない。
レイはこちらでレベルUPした分は元の世界にも反映されると言っていたが
元の世界はこちらの世界より魔力がなく、いわば標高の高い場所にあると言える。
こちらで適応した身体は、元の世界では不適応な事も十分に考えられる。
ウエイトを手に入れ、絶えず身体に負荷を与えて生活しようと和哉は決めた。




