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衝撃の美形

 食後にお茶の葉を直接コップに入れてお湯を注いだ飲み物を飲み、一息つくとイケメン兄さん――レイが話をはじめた。


 「何から話そうか?カズヤ。…そうだな。まずは…」


 お茶をただ飲んでいるだけなのに、イケメンは恰好よく見える。

 フツメンの和哉にはそんな効果はない、世の中不公平だ。


 コップの中のお茶の葉を一緒に飲みこまないように注意しつつ和哉はお茶をすすった。


 「気がついていると思うが、ここは君のいた世界とは異なる世界だ」


 なんとなくそんな気がしていたよ。と和哉はレイのことをやや非難めいた視線で見た。


 「あの泉は覗く者に違う世界を見せる、僕は泉を覗いていて君を見つけた。ただ生きているだけで夢や希望の持てない君を。

どうだろう?ただ息をして死なないように生きているだけでは『生きている』とは言えないよ? レベルのあるこの世界で『生きている現実感』を自分のものとしてレベルアップしていかないか? 」


 やけにいい声で紡がれる言葉は魅力的だ。

 たしかにレベルのあるゲームなどは自分の成長を実感し易くて楽しい。

 

 だが、和哉本人の同意なしに違うこちらの世界に引っ張り込む行為は頂けない。


 「帰れるの?」


 元の世界に、という意味で聞けばイケメン兄さんのレイは頼もしく頷いた。


「こちらの世界での君のやるべき事を済ませれば。あの時間、あの場所へ返してあげよう。もちろんこちらの世界で手にしたスキルやレベルは向こうに持ち越しできる」


 「痛いのとか、怪我したり死んじゃうのはナシで」


 そこは譲れない。レイの服装を見ればこっちの世界は元の世界よりだいぶ遅れているように見える。

 ひ弱な現代日本人が中世ヨーロッパ的な世界観の世界に来て、普通に考えていきなり無双とかできるはずもない。


 「こっちの世界に召喚された時の特典の『ギフト』によるチートとか加護とかあるの?」



 よく暇つぶしで読んでいるネット小説ではそういうのがお約束なはずだ。

 和哉も男子である。厨二っぽいアレコレにはいまだ憧れがある。


 「君がよく読んでいた物語ではそういうのがよく出てきたね」


 怖い、いつからどれだけ自分の行動を覗き見られていたんだ?

 和哉は後ろめたいアレコレを思い出してブルった。


 「残念ながら、僕は神様でも管理者? でもないから、そういうのはあげられないな」


 レイは残念そうに言った。

 そういうのがあげられたら良かったんだけど。と



 コップの中のお茶はあらかた飲んでしまった。これ以上器を傾けてもお茶の葉が口の中に入ってきてしまう。

 和哉は口をすぼめて最後のお茶の雫を葉と一緒に口内に流れこませないように注意しつつ飲んだ。


「でも、僕のすべてをかけて君をサポートするよ。君が勇者になれるようにね」

 


 これはテンプレの魔王討伐依頼なのだろうか?


 それにしては我儘な巫女姫とか傲慢王族とかの姿がないが。


 どこか非現実感につきまとわれつつ ぼんやりとレイを見る。

 ほれぼれするような男前だ。さぞかし女の子にもてるだろう。

 イケメン滅べとひそかに和哉は胸のうちで呪詛を吐いた。


 「君をかならず勇者にするから、ひとつお願いを聞いてくれないか?」



 呪詛をはかれているとも知らず、あいかわらずのいい声でレイはとんでもない事を言い放った。


 「君を勇者にするから俺をホモにして欲しいんだ」



 ファッ????????


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