気がついたら水中からの人工呼吸
「うぁあああああああ~」
いざとなると「助けて!」も「誰か!」も言えないものなんて知らなかった。
工藤和哉(17歳)は恐怖からただ叫び声を上げ続けた。
が、急にその叫び声は泡となって彼の口から吐き出される事になった。
あの絡みついていた手のような物はいつの間にかなくなっていたが和哉はいつの間にか水中にいて溺れかけていた。
がぼっ ごぼぼぼ ごぶっ
息がつげず苦しかった。
思わず吸い込んでしまった水が気管に入ってしまい苦しい。
めちゃくちゃに手を動かして浮上しようとするする。
水面らしき面が見えるのだが、むせた拍子にまた水を吸い込んでしまって
これはもう詰んだと和哉は思った。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ…死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
苦しいクルシイクルシ…
がぼっっ
最後の残っていた空気が出てしまったようだ。
視界が急に狭くなっていく。
がむしゃらに動いていた手もすでに動かない。
和哉の閉じかけた視界に何かが水面から飛び込んで来るのが見えた。
痛い痛い痛いクルシイクルシイクルシイ
ぐぼっごぼっごぶっぐぼぼぼぼぼ
今までに経験したことのない気分の悪さだった。
強烈な吐き気とともに和哉は大量の水を吐き出した。
どうやらうつ伏せにされて背中からぎゅぅぎゅぅ押されているようである。
ついでひっくり返されると口のあたりにふにっとした感触がすると同時に口内に息が吹き込まれる。
和哉はびっくりして目を開けた。
目の前には肌色の何か。
手をばたつかせてみると、その何かは離れていったみたいだが、和哉は咳の発作で離れていったその何かが何かまで確認することができなかった。




