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そばかすおさげ怪力少女


 勝手に呼びつけられ怒っていいはずだった。

 痛いのとか死んじゃうような苦難などノーサンキューなはずだった。


 

 「テンプレだと『勇者様!世界をお救いください』なんだけどなぁ」


 まさかホモにしてくれだとか、ぶっとんだ願いだった。


 勇者が払える対価は自分の能力と同じだけの力を、召喚したカズヤにも使えるように鍛えて与える事のみ。


 「別に正義感ある人間でも俺はないんだけどなぁ」


 勇者にしてもらったとしても、こっちの世界でならともかく元の世界に戻ってやれそうな事はない。


 たった一人の俺TUEEEEEで何とかなるほど元の世界は単純ではない。



 しかもこっちの世界の方がいろいろ緩すぎて、身体能力がただ上がりした和哉にとって、元に戻れば水中から陸上にあがった時のように、返って身体能力が衰えてしまう心配があった。


 つまり今回の召喚は和哉には何もメリットがない。


 ただ、それでも勇者達の真剣な様子や、必死に魔物のテリトリーから森を再生させようとしているエルフ達を見れば人の良い国民性を受け継ぐ和哉にとって素知らぬふりもできるはずがなかった。


 あぁでも、

 帰りたい。


 和哉だってまだ高校生なのである。


 


 「振りかぶって絶つ!振りかぶって絶つ!」


 掛け声をかけつつ、自分の身体ほどの大きさのバトルアクスをフルスイングするそばかすおさげ少女を残念な目で見守る和哉。


 こっちの世界の勇者パーティの人々は全員何らかのトラウマや弱点と常に戦っていた。


 それというのも魔物達の精神攻撃のせいである。


 この世界の魔物は敵と対峙した時に相手の弱点やトラウマを読み、それを使って攻撃してくるのだ。


 彼女達勇者パーティの者達はそれぞれ苦手なものを使って攻撃を加えられていた。


 あるものは鋭い尖った何かを、あるものは黒い台所にいるアイツを、あるものはウネウネした触手を、あるものはスキマを。


 何が原因かと彼女達に問いかけてもすでに分からなくなっている苦手なモノを

彼女達、勇者パーティの者達は、これみよがしに突きつけられ、嬲られて疲弊していく。




 彼女達の癒しは勇者だけ。



 だがその勇者にはそれが魂をドレインされるかのようなバツゲームになるという鬼のような仕様。


 救いようのない連鎖。なんという悪辣な魔物の攻撃なんだろう。


 

 メンタルってどうすれば鍛えられるんだろう?



 和哉の悩まされている課題はそれだった。


 「振りかぶって!…死ねや!エロじ〇〇」


  ああ、この少女のトラウマの原因は推察できそうだ。


 和哉は思った。


 セクハライクナイ。


  

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