エルフ
「レイ。君は、だからホモになりたかったんだな」
「ああ。もう女性に心乱されるのはごめんなんだ」
俺ももうタートルに心乱れされたくないよ。
和哉はレイと背中合わせに寄りかかりながら座り込んでいた。
あたりは焦土と化し、豊かだったはずの森は燃え、ゴツゴツとした岩と土くれ、そして魔物の死体であふれていた。
疲れていた。もう限界だった。
周囲を見れば死屍累々。
レイのハーレムメンバーの女の子達も皆、目から光を失ったまま涙を流して倒れていた。
魔王配下の魔物と戦うという事は身体的負担よりも精神的な負担の方が大きい。
ここで勇者たるレイの心まで折れてしまったら、この世界に明日はないだろう。
魔物が跋扈する世界になってしまう。
「だから世界を滅ぼそう」
魔女っ娘さんが、魔王化しそうな感じなんですけど?
本末転倒じゃん! 大丈夫?
「ゆうしゃぁぁぁ。つらかったのじゃ。イイコイイコしてなのじゃぁぁ」
「スキマ…スキマ、こんなところにもスキマ…… はっ!私は何を!」
「汚物は焼却、汚物は焼却、あははっ綺麗に燃えた~あはははは」
「大丈夫、もうどこもとんがっていない…くっ」
勇者は甲斐甲斐しく倒れた仲間一人ひとりに声をかけ励ましていく。
聖母のような微笑みを浮かべ…男だけど。
和哉にはそういうスキルはないので、黙って食事の支度と野営の準備をした。
元の世界ではお米を研いでセットし炊飯器のスイッチを押すという簡単な事もしたことがなかったので、そういう意味ではあきらかに家事能力に限っていえばレベルアップしたと言えよう。
起き上れるぐらいに回復した仲間の一人ひとりに食事の乗った皿を渡していく。
「ありがとう…ってあなた誰だっけ?」
今更に和哉の存在に気がつく者もいる。いくら勇者しか目に入らないと言っても程度があるだろうに。
「おお来た来た」
バトルアクスのそばかす少女が丘の上に登ってどこかを見ていたようだが、人間側の軍勢を見つけて勇者に報告していた。
それから間もなく、召喚されてから最初に連れていかれた野営地にいた軍勢と合流した。
軍勢は、魔物の死体を片づける者、野営地の設置をするもの、消化活動を行う者にわかれててきぱきと仕事をしていく。
「勇者殿、無事魔物の殲滅、ご苦労であった」
あのえらそうな壮年のおっちゃんの隣に見慣れない人物が立っていた。
この世の者とも思えない美貌、すんなりと高く凹凸の少ない身体、輝くうすい金髪、若葉のごときペリトッドの瞳、そしてとんがった耳。
エルフだっ!!!
和哉のテンションは再びマックスになった。




