魔物が現れた
「勇者パーティ諸君に幸あれ、女神の祝福がいつも貴方たちを守りますよう~」
えらそうな軍人ぽい壮年のおっちゃんがなんか言ってる。
背後の騎士さん達も剣を空に捧げ整然と並んで和哉達を見送る構えのようだ。
和哉達勇者パーティはここで他の騎士さん達や軍人さん達と別れ先に行く、らしい。
「あれ?共闘はしないの?」
和哉の疑問にレイが答える。
「彼らの役目は僕たちが魔物を倒した後の始末だよ」
いやいやいや、魔王だって魔王パーティだけで攻めてこないよね?
魔王軍とか率いて来ちゃったりするんでしょ?
和哉は大丈夫か? こんな人数で、と考えるが、いまだ魔王配下の魔物とは真の意味では闘っていない。こっちの世界にはこっちの世界の戦い方があるのだろうととりあえず自分を納得させる。
「まぁ、魔王配下の魔物は精神攻撃をしてくるからね。大勢で行って同士討ちとか洒落にならないからね」
なるほどそんな理由があるのか。精神攻撃ってどんなんだろう。
「はじめて戦うカズヤにとっては不安だろうけれど。大丈夫僕たちが一緒にいるから」
レイに肩を組まれて励まされた。
こういう事を男女構わなくレイはする。女の子ならドキドキしちゃうだろうなぁ。
今も和哉の背には嫉妬の矢がささってジェラシービームが照射され高熱で焦がされているような気がする。
なんかもう、女の子達と仲良くできる気がしない。
和哉はがっくりと項垂れすっかりと諦めた。
野営していた丘をおり、なだらかな草原の坂をゆるゆると下り、勇者パーティと和哉は和気藹々と歩いていた。
いや違う、一方的に和気藹々としてキャッキャしてたのはレイとその仲間のパーティメンバーだけである。
和哉はただ手持ち無沙汰に歩いていただけである。
物欲しげな態度であったとは思いたくない。ないったらないのだ。
草原が切れ、まばらに木が生えている場所に出た。そこから先は森のようである。
「さてそろそろ魔王の統治する土地に入るぞ。気をひきしめて」
レイの合図で女の子達も静かになる。
美少女忍者は斥候を自ら名乗り出して先行していった。
レイと和哉が先頭を歩き、左右をバトルアクスを片手に持つ少女とメガネメイド服の少女、後衛を三角帽子の魔女っ子美少女と狐耳の女冒険者、それに爆乳美少女巫女、しんがりをたれ目女騎士といった布陣で進んでいく。
「これでも人数を厳選したんだ」
「レイのパーティって最大何人?」
「400人くらいかな」
レイの瞳からハイライトが消える。
「全員女の子なんだけどね」
レイは天然タラシだけど、それを歓迎してる訳ではなさそうだとカズヤは思った。
「魔物だっ。この先のあの木の影にいる。スライムが数10体程度」
上から声か降ってきた。どうやら斥候から美少女忍者が戻ってきたようだ。
「全員戦闘準備!」
こっちの世界のスライムは雑魚ではない。物理攻撃が全然効かない上に魔法耐性ももっている。
それが数十体とは…和哉は気を引き締めた。
戦闘ゾーンに入る。それは誰かの攻撃が届く距離になったことを示す。
チャラララッ
電子音が頭に鳴り響くそしてついでに音楽も… えっ音楽?
そしてガイダンスが流れる。えっ? ガイダンス?
和哉は慌てた。何そのゲームのような仕様は…。
゛タートルスライムが現れた!゛
タートルスライム?
亀なの?スライムなの? どっち?




