三角帽子の無口無愛想魔女っ子少女
なるほどこうしてパーティメンバーが増えていくのか、女子限定で。
和哉は、さっそく既存ハーレムメンバーに交じって牽制し合っている美少女忍者を見て思った。
レイは病的な女好きな訳じゃない、究極の惚れさせ体質なのだ。ただ惚れさせておいてそこから先は面倒は見れないというダメダメ仕様ではあるが。
別にホモにならなくてもいいんじゃないだろうか。
和哉はややほっとしてそんな事を思っていた。
このあととんでもない隠し要素が明らかになるとも知らずに。
朝もやけぶる野営地早朝。
和哉は今日もレイと剣を打ち合っていた。
「よしいいぞ、カズヤ。今のコンビネーションは悪くない」
背後の「そんな男より私を構って」という殺人光線が気になるが、日毎にレイから褒められる頻度が多くなってきてそれは楽しい。
「さ、今日はもう終わりにしよう。準備をして午後から出発だ」
とたんにレイのハーレムメンバーが駆け寄ってくる。
「勇者様っ!お疲れ様です」
「勇者様、冷やしたタオルですどうぞ」
「勇者様、わたし果物を絞ってジュースにしましたの」
「お体をお拭きいたしますわ勇者様」
「わが君、疲れを軽減させる秘蔵の丸薬を是非」
もみくちゃになるレイ。
ご愁傷様、もはや見慣れた光景だ。
心の中で拝んでいると袖の先をツンツンと引っ張られた。
引っ張られた先を見ると黒いとんがり帽子をかぶった無表情の少女が和哉を見上げていた。
「ん。カズヤ、勇者から頼まれた。こっち」
この前、レイが言っていた魔法の訓練なのだろうと当たりをつけ和哉は無愛想なその少女の後ろをついて言った。
暫く歩くとただっぴろい草原についた。 後方に野営地のテント類が見える。
どうやら撤収にむけて準備をしているらしい。
「ん。心配いらない」
撤収の手伝いをしなくてもいいのだろうか?と考えていたのでどうもそれに対する回答のようだ。
「こちら側なら平気」
この場所でなら魔法を使ってもいいと言う事らしい。
どうやらこの少女は無愛想な上に言葉も足りないらしい。
「見て」
その少女の黒ローブからのびた手の先から炎が生まれる。
それは青い焔の槍となって飛んでいき、草原から顔を出している岩にあたると
岩が高熱で溶けた。
「魔法、イメージ大切」
今度はその岩を取り囲むように氷の柱ができる。
「効果と範囲をイメージする」
氷が高熱で溶けた岩の熱で溶けて水蒸気がもうもうとあがる。
今度は竜巻が起き、水蒸気を巻き込んで空にあがっていく。
中で氷の粒がぶつかっているのだろう稲光が輝いている。
バリバリバリ
その稲光が立木に向かって落ちると木が真っ二つに割れ倒れていく。
「威力の増減大事」
倒れた木にむかってその少女が魔力を放つと今度はその木が細切れになっていく。
「今夜の分の薪」
少女が言うので俺は薪として丁度いいサイズになった木を拾っていく。
ご丁寧に乾燥の魔法もかけてあるようだ。
「空間魔法でアイテムボックスを開く」
少女が和哉に何かをした。
するとあれだけあった拾ってきた薪がなくなっている。
「魔力量による」
よく言われているように、アイテムボックスに収納できる量は魔力量によって変わるようだ。
和哉はそのへんの石や草をアイテムボックスに入れたり出したりしてみた。
「ん」
和哉がアイテムボックスの具合を確かめているのを見て、満足そうにうなずく三角帽子の黒ローブの少女。
「練習、終わり。忠告いい?」
無愛想な態度はそのまま少女は言った。
「ここの魔物、精神攻撃をする。強さよりそちらが問題」
それだけ言うとさっさと戻っていってしまう。
見れば勇者が右側の林から出てくるところだった。
「ん」
三角帽子の黒ローブの少女は近づいてきた勇者に向かって両手をつきだした。
レイは微笑むとその少女を抱き上げて子どものように片腕に乗せるともう片方の手で頭を撫でた。
「カズヤに教えてくれてありがとうな」
いや実演はしてくれたけど教えてもらった気がしない、和哉はそう思ったが黙っていた。
たぶんレイは小用のために林に行った帰りだと思われた。
肉体強化された和哉の鼻にはその事実である匂いが届いていたのだ。
頭撫でていたけど手は洗ったよね?
さっき実演された魔法のことよりその事の方が和哉は気になっていたのであった。




