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6.真央兄に、協力してもらうことにしました【前編】

 お昼休みのカフェテリア。

 賑わうその一角の特等席に、俺は座っていた。


「はいユメ。今日のお昼は有名な料亭に作らせた、ヘルシーなご膳ですわよ。これならいくら食べても大丈夫ですわ」

 にこにこと笑いながら、俺の幼馴染であるユメに、五段重ねの重箱をすっと差し出しているのは、一条いちじょう桜子さくらこ

 いかにもな金髪縦ロールで、この学園を牛耳っているお嬢様だ。


「桜子、ユメには俺が弁当を作ってきてあるんだ。というか、いくらカロリー控えめでもその量は太るだろ!」

 この秋、どうにかユメはダイエットすることに成功したものの、まだ油断は許されなかった。

 肌フェチの桜子は、ぽっちゃりした女の子のぷにゅっとしたお肉が大好きらしく、隙あらばユメを肥えさせようとするのだ。


 女の子しか恋愛対象にならない百合というやつである桜子は、ユメの初めての友達であり、そしてファーストキス(未遂)の相手でもある。

 割とアグレッシブな性格らしく、ユメに大胆な告白をしてあとも、何度かアタックを繰り返していた。


 さすがのユメも、これはやばいと気づいたらしい。

 桜子好みのぽっちゃりから、普通の体型に戻る努力を惜しまなかった。

 太って動きが鈍いままだと、襲われても逃げられないと思ったのかもしれない。

 実際元の体型に戻ったせいか、桜子のアタックは少し落ち着いて、ユメに食べ物を与える程度のものになっていた。


 ちなみに、以前桜子に喧嘩を売ってしまった俺だったが、今では和解した。

 敵とみなすと『宣戦布告』されてしまい、学園中からのけ者にされた時は、人生終わったと思ったものだ。

 しかし、俺が桜子の弟である竜馬たつまと仲良くなり、ユメが桜子に気に入られた事をきっかけに、思わぬ方向へ話は転がった。


 本当に、俺の思惑とは、全く違う方向へ。

 なんでこうなったのだと、心の底から叫びたい。


 この世界は、乙女ゲーム『ドキドキ★エステリア』の世界。

 元の世界にいた頃からの幼馴染で、お隣さんだったユメがやっていたゲーム。

 高校の三年間を過ごし、攻略対象を落とせばクリア。

 気がついたらこの世界にいた俺は、主人公のサポートキャラという役どころだった。


 主人公であるユメに、さっさとゲームをユメにクリアしてもらい、元の世界に帰る。

 そう決めてここまで頑張ってきたのだけど。

 頑張れば頑張るほどに、ユメは残念ぶりを発揮して。


 五人いる攻略対象のうち、まだ二人しか出会いをクリアしていない上に、その二人はユメに全く興味がないような状態だった。

 現在は二年生の冬。

 残り一年とあとわずか。



「おれがユメちゃんの代わりに、先輩の弁当食べるよ。というか、そのつもりで何も買ってないしさ」

 そう言って、俺の側に座っていた竜馬たつまが、弁当に手を伸ばしてくる。


 竜馬はこのゲームの攻略対象の一人で、桜子の弟。

 後輩なのに大人っぽい外見で、妙に色気のあるイケメンだ。

 俺が学園で孤立した際に友達となり、それ以来妙に懐かれている。


 まぁいいかと弁当を渡せば、竜馬はそれを嬉しそうに受け取った。

「このから揚げ美味しいね。ちょっとしょうがの味がする気がする」

「わかるか。ちょっと肉に揉みこんでみたんだ」

 ユメだと美味しいしか言わないから、工夫をわかってくれるのは正直嬉しいものがある。

 作りがいがあるというものだ。


「先輩、いいお嫁さんになれるよ。おれのところに、嫁においで」

「遠慮しておく。つーか俺、男だしな」

 柔らかそうな髪をさらりと揺らし、竜馬が俺に流し目を送ってきた。

 男のくせに色気が半端ない、気まぐれな猫を思わせる一つ年下の後輩。

 あと、冗談めかしているけれど、半分ぐらい本気じゃないかと思われるところが怖かったので、きっぱり断っておいた。


「そうですよ。なんではる先輩があなたの嫁にならないといけないんですか。はる先輩はこの先もオレの弁当をつくるって決まってるんです」

「いや、決まってねーよ。作ってやるのは俺が卒業するまでだから」

 俺を挟んで竜馬の反対側に座っているのは、同じバスケ部の後輩であるヨシキ。

 いつも差し入れている俺の弁当を食べながら、むっとした様子でそう言ってきたので、とりあえず突っ込んでおく。


 ヨシキもこのゲームの攻略対象の一人で、爽やかで少し可愛い感じのする顔立ちをしたバスケ少年だ。

 どことなく犬っぽく、俺のことを先輩として慕ってくれている。

 

「そうだはる先輩。今日、バスケ部に顔を出しますよね。ずっと休んでたから、みんな心配してますよ」

「何言ってるの? 先輩は今日帰りに俺と遊びにいくんだけど」

 ヨシキと竜馬が、両脇からそれぞれ俺に話しかけてくる。

 互いに睨みあって、その背後には犬と猫が火花を散らしあっているのが見えるようだ。


「はぁ……」

 盛大な溜息をつく。

 なんで俺が攻略対象に取り合いされてるんだ。

 本来、このポジションは主人公であるユメのはずだろう。

 

 攻略対象であるこの二人は、何故か俺にもの凄く懐いてしまっていて。

 目の前に主人公であるユメがいるというのに、全く見向きもしない。

 正直、このゲーム……詰んでいた。



●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●


「もう俺、どうしたらいいかわからない」

「うーん。その二人は諦めて、別の攻略対象に行った方がいいんじゃないかな?」

 俺の弱音に、従兄弟の真央まおにぃが困ったように笑う。


 今日は俺の家に、久しぶりに従兄弟の真央兄が遊びにきていた。

 真央兄は、俺の父方の従兄弟で、俺が全てを相談できる相手だ。

 物心ついた頃から、元の世界の記憶があった俺を、真央兄だけは変な顔もせずに受け入れてくれた。


 俺より一つ年上の三年生で、成績優秀、運動神経抜群。

 性格のよさがにじみ出るような、優しい顔立ちをしたイケメンであり、今はその座を退いたものの、学院ではその人望の厚さから生徒会長を勤めていた。

 もの凄くできた人なのだ。


「そうは言ってもさ。ユメのやつ出会いのイベントすら起こせてないんだぜ。もう俺、心が折れそうだよ」

「大丈夫だよ、はる。この一年は受験で忙しくて、話を聞く暇もなかったけど、これからは僕も手伝えるし」

「真央兄!」


 優しい言葉をかけてくれる真央兄が、天使に見える。

 俺のわけがわからないであろう話を聞いてくれるだけでなく、一緒に考えてくれる真央兄だけが、この世界で俺の味方だった。

 ちなみに、ユメは味方っていうのとはちょっと違う気がするんで除外だ。

 この世界に俺を巻き込んだ張本人でもあるしな。


「残りの攻略対象は、たしかメインヒーローのあまさき王子おうじと、学年主席の優等生くん、そして不良の子だっけ」

「うん。でも、出会いイベントすら起こってないんだ……」


 引きこもっていたせいで、王子との幼い頃のイベントは起きず。

 テストで一位を取る事でライバル視されるはずだった優等生には、劣等生すぎて相手にされず。

 不良の子には、何アイツみたいな生暖かい視線を貰うだけで終了した。

 恋愛イベントの、れの字すら出てきていない。

 もう、二年生も終わろうとしているのに。


「この子たちって全員、はるやユメと同級生だよね」

 うーんと真央兄が首を傾げる。

「何か気に掛かることでもあるのか?」

「前から思ってたんだけど、攻略対象は二人が一年生で、残りが二年生なんだよね。攻略対象に年上がいないっていうの、不思議な気がしない?」


 真央兄に言われてはっとする。

 確かにその通りな気がした。


「これは僕の予想なんだけど、もしかして他にも攻略対象がいたりして。ユメちゃんにカマをかけて、聞いてみたらどうかな?」

「うん、そうしてみる事にするよ。ありがとう」

 さすがは真央兄だ。頼りになる。

 

 真央兄はこれから父さんに頼まれてパソコンを教えるらしい。

 ならさっそくユメのところへ行って、聞いてみるかと思った俺を、真央兄が引きとめた。


「そうだ、後で月島の家にも合格したって挨拶しにいくから、叔母さんにそう伝えといてもらえるかな」

「わかった」


 真央兄にそう返して、ユメの家に向かう。

 俺の従兄弟の真央兄は、実はユメの従兄弟でもあったりする。

 俺の父さんの兄と、ユメの母さんの妹の子供が真央兄なのだ。

 そういうわけで、真央兄はユメと俺の共通の親戚でもあった。


 ユメの家に上がりこみ、ノックして返事がないので部屋に入る。

 布団に包まっている蓑虫状態のユメがいた。

 テレビの画面には、二次元のイケメン。

 

 こいつ、次の日が休みだからって、夜遅くまでゲームをして、そのまま寝オチしたな。

 夜更かしは美容の大敵だって、何度言ったらわかるのだろうか。

 ゲームは一日一時間までと口をすっぱくして言っているのに、全く聞く気がないようだ。


 とりあえずユメを叩き起こして、身支度を整えてやる。

 珍しくユメの母さんがいたので、世間話をしながら一緒に昼ご飯を作り、真央兄からの伝言をする。

 それから、ユメの部屋に昼飯を持って行ってやった。


「あのさ、ユメ。聞きたいことがあるんだが」

「なぁに、はるひゃん」

 くちをもごもごさせながら、ユメがこちらを見る。

 お腹が空いていたのか、ご飯を水で飲み込むようにして、いっきに平らげていた。


「攻略対象、もう一人いるよな」

 俺の言葉に、ユメが勢いよく飲んでいた水を、口から吹き出す。

「なな、なんで!」

 カマをかけてみたのだが、まるでお笑い芸人のような見事な反応だった。


「やっぱりいるんだな」

「うっ……」

 俺の睨みに、あまり嘘がつけない性格のユメが怯む。

 どうやら、真央兄の読みは当たっていたようだ。


「なんで言わなかった」

「黙っててごめんなさい! でも、あのキャラだけは、あのキャラだけは勘弁してください!」

 ユメは勢いよく、床に頭をつけて懇願してくる。

 そのびびり方は尋常じゃなかった。


「なんだよ。そんなに嫌なキャラなのか?」

 俺の言葉に、ユメはゆっくりと頷いた。

「見た目は優しそうで、凄くわたしの好みだったんです。前情報では、主人公に最初から優しいっていう設定だったし」


 ユメの好きなタイプは、主人公に優しいキャラだ。

 主人公の兄のような存在とか、幼馴染とか、無条件に甘やかしてくれるタイプが好みらしい。


「主人公が酷い目にあっても、彼だけは味方でいてくれて。ユメはそんな彼にメロメロになっていきました。けれど、最終的にそれは全て、彼が主人公を孤立させて、自分しか頼れないようにするための罠だったんです! つまりは優しいフリをした、ヤンデレ腹黒キャラだったんです!」

 騙されたというように、ユメは唇をくっと噛み締めた。


「ハッピーエンドは彼の愛を受け入れ、束縛されます。ノーマルは彼を拒んで、監禁されます。バッドは『僕だけを見るようにしないとね』と、調教されます。正直どれもユメには違いがわかりません!」


 Mな女の子たちには大人気だったそうだが、ユメにとっては地雷だったらしい。

 ユメがこのキャラの事を隠していた理由が、ようやくわかった。

 ゲームではよくても、実際にこれをやられるとしたら、怖いものがある。

 あと、最初から主人公に優しいという設定を聞いて、俺がそのキャラとくっつけようとするんじゃないか、心配だったんだろう。


「落ち着けユメ。さすがの俺も、そんなにお前が嫌がるような奴を攻略しろなんて、言うつもりはないから」

「はるちゃん!」

 ユメが瞳をキラキラさせる。

 よっぽどそのキャラが苦手なんだろう。


「あっ、でも一応名前は教えてくれ。どんな奴か知りたいし」

「えっと……それは……」

 ユメの顔が突然曇り、視線が泳ぐ。


「なんだよ。もしかして、もう知り合いだったりするのか?」

 こくりとユメが頷いた。

 なんてことだ。すでに出会いを果たしている攻略対象がいるなんて。

 ユメにああは言ったものの、興味が湧いた。


「誰だよ」

「……魔王様」

 意を決したような表情で、ぽつりとユメが呟く。


 魔王まおう……真央まおう

「もしかして、真央兄のことを言ってるのか?」

「その通りです」

 ユメは神妙な顔をしていた。


「真央兄が攻略対象か。確かにおかしい話じゃないな」

 言われてみれば納得だ。

 乙女ゲームの攻略対象というものは、大体がイケメンでハイスペック。

 今までの攻略キャラの誰よりも、真央兄はスペックが高い。


 さらさらとした茶の髪に、人好きのする優しい面立ち。

 成績優秀で、運動もできて、おまけに性格もいい。

 さらには元生徒会長という付加価値付きだ。


「でもな、ユメ。さすがに嘘はよくないぞ。あんなに優しい真央兄を魔王だなんて。昔から俺たちの面倒をよくみてくれてたし、真央兄はユメにもあんなに優しかったじゃないか」


 真央兄が腹黒でヤンデレとか、そんなわけはない。

 疑うのも恐れ多い。

 真央兄は、今時いないようなとてもできた人なのだ。

 自分が優秀なのを鼻にかけることもないし、常に姿勢は謙虚で丁寧。

 人の話を聞いて、親身になってくれる。

 いい人すぎて、自分から面倒事を抱え込むところがあるところが、ちょっと心配なくらいだ。


「昔から、はるちゃんは騙されてるんだよ! なんでそんな真央兄に甘いの!」

「別に甘くはないだろ。人徳の差だ」

「余計に酷いよ!」

 当たり前のことを言ったら、ユメがショックを受けたような顔になる。


 つまり、ユメは簡単に真央兄だと簡単に攻略できそうだから、俺に黙っていたと考えるのが正解だろう。

 元の世界に帰りたいと必死な俺に対し、ユメはこの世界の居心地がいいらしく、あまり帰りたがっていないようだったし。


「それよりも、真央兄が攻略対象だとしたら、これ以上に理想的なことはないんじゃないか? 真央兄なら、事情を知ってるからユメと付き合ってくれそうだし」

「そうなるような気がしたから言いたくなかったんだよ! はるちゃんの馬鹿!」


 ユメが俺をなじる。

 なぜかユメは昔から、真央兄が苦手みたいだった。


「今日俺の家に来てるし、さっそく頼んでみようぜ」

「やだ! 絶対反対! 本当に真央兄は腹黒でヤンデレなんだよ、はるちゃん! ユメを信じて!」

 お願いします、後生だからやめてくださいとユメがすがりついてくる。

 その必死っぷりに、もしかして嘘を言っているわけではないのかもしれないと、ちょっぴり思い直す。


「ゲーム内での真央兄は、本当にヤンデレだったのか」

「うん。はるちゃん、信じてくれるんだね!」

 ぱぁっとユメの顔が輝く。

 俺に信じてもらえたのが嬉しいらしい。

 

「だとすると、本来のゲームと誤差が出てきてるんだな。本来の主人公とユメだって、月とスッポンどころか、スポンジくらいの差があるわけだし。竜馬やヨシキとのシナリオも、ユメから聞いたものとは違ってきてたしな」

 納得する俺に対して、ユメは絶望したような顔になる。

 仮にも乙女ゲームのヒロインなのに、その顔芸はやめたほうがいいと心から思った。

 

「何ではるちゃんは気づかないの! 魔王様あんなに魔王様なのに! はるちゃんのチョロイン!」

「意味がわからない。ゲーム内では嫌なやつだったかもしれないけど、今の真央兄は違うだろ。猫を追いかけて迷子になったユメを見つけてくれたのも真央兄だったし、泥団子食べてお腹壊したお前を看病してくれたのも真央兄だっただろうが。それに学校で何かユメが問題起こすたびに、フォローしてくれたのは真央兄だろ」


 真央兄は、駄目駄目なユメにも優しかった。

 しかたないなぁなんて言って笑って、嫌な顔ひとつせずに俺たちに付き合ってくれていたのだ。


「ユメは猫を追いかけて迷子になんてなったりしないし、泥団子食べたりもしないよ! この世界に来た時点で見た目は子供でも中身は大人なんだから、それくらいわかるもの! あれは全部真央兄が仕組んで……」


 ガチャリとドアが開く音で、ユメの言葉が遮られた。

 そちらの方に顔をむけると真央兄が立っている。

「あっ、ごめんユメちゃん。僕としたことが、ノックしわすれちゃった。もう一回入りなおすね!」

 慌ててドアをしめて、コンコンと叩く真央兄に、噴出しそうになる。


「真央兄、今更それ意味ないだろ。本当、真央兄って天然なところあるよな」

「そっか、ごめん意味なかったね」

 ちょっと照れたように、真央兄がユメの部屋に入ってきた。


「ひぃっ!」

 真央兄の登場に、ユメが尻餅をついて、凄い勢いで後ずさる。

 周りのものを蹴散らして、背中をベッドで守るように後退したユメは、ぷるぷると小動物のように震えだす。

 全く、いくらなんでもその反応は真央兄に失礼だ。


「はる、ユメちゃんはどうかしたの? 様子がおかしいけど」

「いつものことだから、気にすることないよ。それよりも真央兄、相談があるんだけど」

 首を傾げる真央兄に声をかけると、ユメは俺の脚に勢いよくがりついてきて、首をブンブンと横に振って、駄目だと訴えかけてきた。


「あぁ、もしかして、やっぱり僕が攻略対象だったんだ?」

 ユメの反応を見て、真央兄はそう言った。

「知ってたのか?」

 俺は目を見開く。


「なんとなく気づいてたかな。はるが乙女ゲームを勉強してるときに、色々僕も側で見ていたからね。主人公に一番近い、年上のキャラって言ったら僕だし」

 察しのよさは、さすがといったところで感心してしまう。


「ユメちゃん水臭いよ。言ってくれれば、僕いつでも協力したのに。それに、はるから聞いたけど、色々大変なことになってたみたいだね。どうして電話で教えてくれなかったの?」

「魔お……真央兄は受験で忙しいから、お手を煩わせたくなくてですね」

 真央兄に尋ねられて、悪戯して叱られた小学生のように、ユメは正座で俯いていた。


「何を言ってるの。僕は二人のためなら、何だって協力したいんだ。だから僕、ユメちゃんと付き合うよ」

「いいのか、真央兄!」

 その言葉に、思わず俺は食いついた。


「うん。これも二人のためだし、ユメちゃんのこと大好きだしね」

 にっこりと真央兄が、ユメの手をとって笑いかける。

 どんな女の子でもくらりときてしまう極上スマイルに、慣れているユメですらやられてしまったらしい。


「おい、ユメ!」

「あらら。気絶しちゃった。照れて可愛いなぁ」

 そんなこんなで、晴れてユメは真央兄と付き合うことになった。

3/30 少し矛盾があったので、ユメの台詞を修正しました。

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