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13.魔王様の憂鬱(ゆううつ)【真央視点・前編】

更新遅くなってすいません。

魔王様視点となります。視点が視点なだけに、ホモホモしいかもしれません。

「この肩こり改善薬は副作用が大きすぎるね。全身の凝りを治すにしても、二日間熱で寝込むとなると問題がある。でも効果がその分絶大だから……捨てるには惜しいかも。この件は僕があずかることにするよ。あと、こっちとこっちの企画書は穴が多いね。改善点を書いておいたから、担当に返却しておいて」

 てきぱきと指示を出し、次にやる資料に手をつけようとしたとき、自分付きの秘書である鈴木がその手を遮ってきた。


真央まお様。根を詰めすぎです。仕事の方はもう十分進んでおりますので、そろそろ息抜きも必要かと」

 言われて確かにと思う。

 ここのところ父から任された分の仕事と、大学での交友関係を広くすることに集中しすぎていた。


 すっと鈴木が目の前に紙を提示してきた。

「従兄弟の透哉とうや様を誘えば、よろこんでもらえるのではないでしょうか」

 近くのデパートの催事場でやる、便利な調理器具の展示会のお知らせ。

 他にはその近くで最近開店した、あんぱんが美味いことで有名なパン屋の情報が載っていた。


「ありがとう。本当に鈴木は気がきくね」

「いえ。真央様のお役に立てるなら」

 礼を言ってその紙を受け取れば、鈴木は嬉しそうな顔になる。

 鈴木は元々父の秘書だったが優秀な奴だった。

 その能力と従順な人柄が気に入ったので、たらしこんで懐に引き入れたのだけれど、予想以上に主人に必要なことをちゃんと理解している。


 本当に優秀な犬だ。

 俺様にとって透哉――はるが癒しであることを理解し、先回りして情報を提供してくる。

 主人の体調や日々のスケジュール管理だけでなく、そういう細かいところまで気が向くところが気に入っていた。


「それと一つ。透哉様に関することで、気になる情報があります」

「何かな?」

 尋ねれば、最近はるがクラスメイトの優等生と距離を縮めているとのことだった。


 はると急接近している男の名前は、御堂みどう怜司れいじ

 学年主席を常にキープしている秀才。

 それでいて、乙女ゲーム『ドキドキ★エステリア学院』の攻略対象キャラだった。



●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●


 俺様の過ごすこの世界は、ゲームの世界らしい。

 主人公が男の攻略対象と恋愛をするという、そういう内容のゲーム。

 そしてその主人公は、俺様の母方の従兄妹である『月島ユメ』と父方の従兄弟である『相川あいかわ透哉とうや』の二人だ。


 乙女ゲーム版の主人公『月島ユメ』は、はっきり言ってこれほどまでに残念な奴を見たことがないというような女だ。

 ゲーム原作のヒロインは完璧な子だったらしいが、見る影もない。

 何をやらせてもできないどころか、さらに事態を悪化させるという特技を持つ。

 俺様がユメだったら、生きてるのが嫌になること間違いない。


 性格は自分に甘く、とことん怠惰。

 それでいて妙にポジティブ。

 はっきり言って理解できない生物だ。


 それでいてユメは、唯一俺様の本性を知っている人物でもある。

 なぜユメのような雑魚が俺の本性を見抜いているのかと言えば、それは俺様もまたそのゲームの攻略対象だからだ。



 そしてもう一人、このゲームには主人公がいる。

 それが『相川透哉』。俺様の従兄弟で、男だ。

 男の主人公が、男の攻略対象と恋愛をする。

 どうしてそんな発想になるのか、それで何が楽しいのかと思いはするが……そういうのにも需要があって、BLゲームというらしい。


 最初この世界が「乙女ゲーム」の世界だとはるから聞かされて。

 はるの手前、信じたふりはしたけれど内心全く信じてなかった。

 けど、その攻略対象が実在し、情報も正確であったこと。

 全員が『エステリア学院』に入学してきた事から考え直すようになった。

 

 知りえるはずもない情報を、はるとユメは持っていた。

 ユメやはるから情報を聞いた当時、竜馬たつまという奴は、一条いちじょう姓ではない一般人だった。

 のちに再婚することになる竜馬の母と、一条家の後取りに当時特に接点はなく。

 それを予想できたとは思えなかった。

 他にも色々二人は言い当てていたこともあり、ただの戯言で片付けるのは乱暴すぎると俺様は考えるようになった。

 

 はるが喜ぶから、俺様は「乙女ゲーム」の情報を集めて持っていくようになり、色々と詳しくなった。

 その際に「BLゲーム」というものがあることも知った。

 けどまぁ、知識程度だった。


 二人からはこの世界が「乙女ゲーム」の世界とだけ聞かされていたし、そうなんだろうと思っていたのだけれど。

 何かが変だと思ったのは、はるが高校二年になった頃だろうか。

 男の攻略対象たちが、ヒロインであるはずのユメに全く惹かれず、はるに夢中になってしまったのだ。


 確かにはるは魅力的だが、男であるはずのはるに、男の攻略対象が揃いも揃って惹きつけられるのはおかしい。

 何にも執着を持てなかった俺様を、こんなにも夢中にさせる存在。

 それだけではるには何かあるような気がしていたが、そこで勘のいい俺様は気づいてしまった。

 この世界は「乙女ゲーム」だけでなく、「BLゲーム」でもあるのだと。


 ちなみに、攻略対象がユメに惹かれないのは当然だ。

 むしろあの珍獣のどこに好きになる要素があるのかわからないしな。

 正直に言うと、はるがあれを気に入ってるのが面白くない。

 昔から何かというと、はるはユメのことばかりだ。

 なぜ迷惑ばかりしかかけないアレに構うのか。

 俺様のほうがはるに優しくしてるし、はるの役に立っているというのに。


 俺様に絶対的な信頼を寄せるはるだが、一方でユメだけに見せる甘い顔がある。

 ユメには俺がいなくちゃ駄目だなというような、そんな顔だ。

 それがどうにも気に入らなくて、この間の冬ははるからユメを取り上げてみた。

 俺様に対してはるが、激しい感情をむき出しにしていて。

 正直物凄くぞくぞくした。


 はるを可愛がるのも楽しいんだが、虐めるのもまた好きだ。

 どんな顔をしてくれるのかと想像すると、ついつい手が出てしまう。

 本当はるは、俺様を退屈させない。


 はるはユメを攻略対象と結びつけることで、ゲームをクリアして元の世界へ帰るつもりでいる。

 そのために必死になって、ユメと攻略対象のお膳立てをしているのだけれど、あまり上手くいったためしもなかった。

 大抵皆ユメの駄目っぷりに引いて、はるの包容力に落ちる。


 それにしても。

 沢渡さわたりヨシキ、一条いちじょう竜馬たつまに続いて、御堂みどう怜司れいじか。

 面白そうなことになってるのに、なんで報告してこなかったんだろうな。

 あの駄犬ユメは。


 後でお仕置きをするのは当然として。

 とりあえずは、はるに電話して近況でも聞きだすか。



 そんなことを考えていたら、はるから電話がきた。

 俺様が卒業する際、告白してくる女ども避けにユメを利用し、完璧に調教した。

 その時ユメは御堂怜司を追い抜いて、学年一位の席次を取っていたのだけれど、それがきっかけで相手から接触してきたらしい。


 御堂怜司の攻略ポイントは、友達をつくること。

 それと彼は成績に異常なこだわりを見せているとのことだ。

 かなりレベルの高い『エステリア学院』において、入学できたことが奇跡とされているユメに、一位の座を奪われた。

 それがプライドを大いに傷つけたようだ。

 ユメの学習法を知るために、現在べったりと張り付いているらしい。


 なんとまぁ無駄なことをしてるなと思う。

 俺様が調教したユメは、すでに幻のように消え去っているというのに。

 そもそもユメが一時でもあそこまでできるようになるとは、俺様も予想していなかった。

 

 半分以上今までのうっぷん晴らしと、趣味を兼ねて、ユメをいびっていただけなんだが。

 相当にユメははるに、この世界が「BLゲーム」の世界だと教えたくなかったんだろう。

 

 どうせユメのことだ。

 俺様がはるにこの世界が「BLゲーム」だと告げることによって、はるが自分を見限るのを心配していたんだろう。

 「俺が攻略対象をクリアするか」みたいな心境になられたら、困ると思ったに違いない。


 けど、そもそもだ。

 はるがそんなに単純なら、俺様はそれを盾に、取引をユメに持ちかけたりしない。

 「BLゲーム」だと打ち明け、協力するよと言ってはるをとっくに篭絡ろうらくし終えているところだ。


 はるはお人よしで、この世界をゲームだと割り切ってるようで割り切れてない。

 ゲームだと口にするくせに、攻略対象に対して適当な付き合い方をしてないのがいい証拠だ。


 ユメと他の攻略対象を結びつけることにだって、罪悪感を覚えてる節がある。

 この世界が「BLゲーム」だと知れば、はるは色々と悩むだろう。

 自分の存在のせいで、仲良くなった攻略対象たちの将来を変な方向へ捻じ曲げたとか、そんな風に考える可能性もあるのだ。


 一度懐にいれると、はるは見捨てられない。

 そいつらが間違った道にいかないよう、拒んだり距離を置いたりするだろう。


 はるが悩んだり、戸惑ったり、困っているのを見るのも嫌いじゃない。

 でも、俺様以外の誰かのためを思って、はるが苦しむのは。

 ――はっきり言って論外だ。

 


『それで真央兄、俺の家で御堂も呼んで勉強会しようと思うんだけど、教えてもらえないかな?』

 電話の向こうから聞こえるはるの声で、流れていた思考が現実に引き戻される。

 もちろんはるの頼みを断るはずがない。

 快諾すれば、はるは信頼しきった声でありがとうとお礼を言ってきた。

中編、後編は明日明後日に更新です。

来週末も更新予定です。


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