第一章 世界は君と繋がっている01
普通に暮らしたかった。ただ普通に暮らしたかった。それは俺が生まれて16年あることがきっかけで少年の人生は変わった。少年は現在高校一年生、中の下くらいの高校に通っていた。
愛知県立千田翔洋高等学校
ここは学業、スポーツ共に標準以下だ。アホ高校と言われていたこともある。普通科の高校ではなく総合学科だ。そのこともあり、やることが非常に多い学校である。特に特化したものがないものが集まる、そういう高校である。
今日は始業式で少年は千田高校に来ていた。
(はぁ…今日から二年生か…まだ休みたいな…なんなら一生休みでもいいな…)
少年はそんなことを思い学校に行く道を歩いて行く。
俺は千田翔洋高等学校の一年生であり頭はよくない、むしろ超馬鹿だと言っていいくらいだ。
そんなことを考えながら後ろからふと声をかけられる
「よう、お前大丈夫なのか?卒業できるのかよ」
「いや大丈夫だ、なんとかなるさ」
いつもこのセリフばかり俺は言っている、なぜこのような卒業を心配されるかのことを言われるかと言うとこの俺千田翔洋高校始まって以来のあだ名がついたからである。生徒の中では収まらず一部の教師にも言われるくらいなのだ、それは…。
「赤点の王様」
これは俺が今までやってしまったことからついてしまったあだ名だ。千田翔洋高校に入学してから今に至るまで赤点を異常なほど取ってしまったからだ、普通に勉強をしていれば赤点の最低基準ラインは取れるのだが俺はネットゲームにハマってしまい勉強は疎か日常生活も乱れまくっていた。
ちなみに赤点は補修と再テストによりやり過ごしていた。
「今年から選択授業が増えてテストも増えるが本当に大丈夫なのか?」
こう何度も心配してくれるのは俺の友達の山本翼だ。山本は俺とは真逆の真面目で頭もよくスポーツ万能で性格も顔もいい、完璧な美少年である。
「確かに大変ではあるが一応得意な教科はとるだけとったからなんとかなるって」
何度も心配してくれる友達を俺はうれしく思う、心配されないようになるのもいいのだがそれはネットゲームがある限り無理かもしれない。
そんな話が続き学校に着く
赤点の王様と山本は校門前で不思議な光景を目の当たりにする。 今まで人が歩いて学校に入って行くのを見ていたが二人の視界から突如消えたのだ そんな光景に二人は絶句していた
先に口を開いたのは山本だった。
「なんだ?人が消えた…?今まで歩いていたのに突然消えた? なんだこれ…」
そんな中赤点の王様は周りを見渡しパニックになりながらも考えていた。
(なんだこれは…夢か?魔法か?幻覚か?なんなんだこれは…)
この世界には魔法はない、魔法は空想上のものでしかない。なのに魔法みたいな光景が目の前で起きている。体は至って健康なので幻覚もありえない
「とりあえず警察に!警察に連絡してみよう!なんかの事件かもしれない!」
山本はパニックになりながら叫んだ
(警察好きだなホント山本は…)
「そうだな連絡してみるか… まさか今日学校が休みとかじゃないだろうしな…さっきまで人がいたんだし…」
今日は始業式であり休みなはずがないそんな状況に二人は頭がうまく回らずにいた
そして電話をかけた
「…繋がらない、なんでだ!?」
山本はまたも叫ぶように言った
「そうか…学校の中を見てみるか、なにかわかるかもしれない。」
赤点の王様は落ち着きを取り戻し身の危険を感じているように周りを見ている 赤点の王様は元から超馬鹿ではない小学校、中学校と成績は上位であったのだ。高校生になってからネットゲームを始め勉強が厳かになり赤点の王と言うあだ名が付いてから自分を超馬鹿な人間と決めつけていただけなのである。
「わかった。見てみよう、とりあえず体育館でいいよね?」
「そうだなもしかしたら集まってたりするかもしれないな」
そうと決まり二人は歩き出す だが校門から入り誰の姿も見られない教師の車もない生徒が通学用に使う自転車もない、なにかが起こっているとは誰が見てもわかる状況
二人が焦りを感じ体育館に走って向かう、だが誰の姿もない、なにもない。
「なんなんだよ!おかしいだろ!」
山本は冷静ではない。
「落ち着け教室にいるかもしれないだろう、次は教室を見に行こう」
赤点の王様はなぜか落ち着いていることに山本はやっと気づく、そんな風になるまで山本は精神の状態が不安定だった
「深呼吸をしろ、ゆっくりと」
山本はゆっくりと深呼吸をした、ようやく落ち着いたようだ
(いやまて、なんで赤点の王様はこんなに冷静で落ち着いてるんだ…?人がいきなり消えてるのに…いつもの赤点の王じゃないみたいだこれは…)
山本は落ち着いたことで冷静さを取り戻しそんなことを考えていた 自分がパニックになりやすい人だとも考えて
「よし、もう大丈夫みたいだな。教室行ってみるか」
赤点の王様は少し迷ったような声で言った
「教室って新しい教室?まだ始業式で今日発表だからわからなくない?」
確かに今日は始業式である、みんなクラス発表を楽しみにしてるであろうそんな日だ。それなのにクラス発表がまだされていないどころかこんな事態になっているので行くとなれば一年生の時の教室だ。
「あぁ、一年生の時の教室に行くよ」
「だよね、よしわかった。」
二人は一年時の教室に向かって歩き出した。
体育館とは別にある建物に二人は向かう、そしてあることに気づく。
「靴箱に自分の上履きがない…。」
(いじめられてたのか…?)
「俺もだ、人の靴箱を見る趣味はないが見てみよう」
(俺もか…)
そして確認をするため他の人の靴箱を見ていた、予想通りなかった
(みんなの上履きがない…?)
「やっぱりか…これは夢か?」
山本は落ち着いた声で赤点の王に話す
「夢であって欲しいが…」
仕方がなく二人は靴のまま行くことにした、いけないとわかっていて
そして教室に着く
勢いよく山本がドアを開ける
「誰もいないな…」
「だな…」
そして二人は全ての教室を確認し人がいないか探し出しまた自分たちの教室に戻ってくる
「どこにも誰もいない」
山本は声を荒げて言う、走って確認していたようだ
「俺も見たとこ誰もいなかった」
確認した結果を言いあい二人は椅子に座る
山本は外を見て目を疑った
「都会なのに外を見ても人がいないしましてや車も電車も見られない、こんなの絶対おかしい」
「確かにな、これは夢みたいな世界だ。俺を馬鹿にする奴らもいない教師も。まぁ山本もたまに俺を馬鹿にするが」
「馬鹿にしてんじゃなくてちょっとしたからかいだよ」
「いや、それ馬鹿にしてんじゃ…」
「してない!」
こんな会話が10分ほど続いた
(こんな状況じゃ危ないな…もっと人がいそうな所に行くべきか?」
赤点の王様は喋りながらも考えていた
ふと立ち上がった瞬間開けっ放しだったドアがいきなり閉まった 二人は驚き、ビクッと肩を震わせて顔を合わせていた
「なんだ!?」
声を揃えて二人は叫ぶように言った
次々とガタンガタンとドアが閉まる音がする
恐る恐る二人はドアに近づき開けようとする
だがドアは開かない 壊してでも出ようと二人が考えを脳内でまとめ以心伝心したかのようにドアに向かって蹴りを入れた だが壊れない
キズすらつかない
「閉じ込められたのか?もうなにがなんだかわっかんねぇ…。」
山本は恐怖心を露わにしていた
「まずはここから抜け出すことを考えよう、ただここにいることが危ない気がしてならないんだ…」
と抜け出す方法を考え、まともな考えが浮かばぬまま一時間が過ぎた
「なあどうするよ僕達」
山本は普段は強そうに見えるが今日はとてつもなく弱そうに見えた
「ん〜… どうしような…」
二人はかなり精神的に消耗している こんな状況になってもう五時間が経過していた
今は午後二時、もうとっくにお昼ご飯の時間だがお腹が空いてる事すら忘れるくらい疲れていた
「とりあえず飯食おうか」
「そうだね、僕もお腹が空いた」
二人はご飯を食べるべくカバンの中から弁当を取り出そうとしたその時
ヴーーーーー プツッ
学校の放送の音がなった
二人は慌てる
怖い、なにかいる。
ノイズのような音がしてどす黒い声が段々と聞こえてくる
「君達は夢の世界の住人になってもらう」
「この世界から人間を消した、少しばかり残ってしまったが」
どす黒い声で放送をする男は続けた
「ここは夢の世界、赤点の王様の 望んだ空間であり勉強などないましてや赤点もない。君はここで生き、ここで死ぬ。一人では難しいだろうからパートナーをつけてやる、そこにいる山本と別の場所にいる西原だ。これは決定事項、もう変えられない」
赤点の王様と山本は失神しそうな顔で放送を聞いていた
そこで赤点の王様は叫ぶ、今まで抑えていた感情をぶちまけるように
「なんなんだよ!俺が望んだ世界って!確かに馬鹿にするやつはいないけど俺達二人じゃ嫌だ!こんな世界嫌だ!」
「僕も同感だ、それに西原って、誰だ?なぜ赤点の王様のあだ名を知っている?」
なぜか山本は落ち着いていた、友達と話すかのようにパニックにならず
それが聞こえるかのように放送していたどす黒い声の男は答える
「西原は君達のパートナーだ、この夢の世界に存在している。赤点の王様が望んだ世界にも関わらず否定しようとは… ならここで一つゲームをしよう ルールは私が考える、今日の夜7時にまたここに来い ドアは全て開けてある 来なかった場合はこの夢の世界を受け入れたとみなす」
そうして放送は切れた
(人間を消した…?母さんも父さんもいないのか…?友達も?まさか…)
今まで起きたことから信じざるを得ないこの事に俺たちは頭がおかしくなりそうになった
僕達は二人、今いるのは二人だがもう一人いると言っていた。その人が味方かどうかはわからない 敵かもしれない。
時間がみるみる過ぎていく、二人は全てを受け止め、この世界から脱出するべく家に向かって走り出したのだった。