↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力最下位の理系転生者は、魔法を誰でも使える技術に変えたい ~詠唱はコード、魔法陣は回路。才能がないなら、法則を探せ~  作者: Ita
第2章 理屈で灯す最初の炎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/116

第9話 試練の夜と決意


 夜は、音が増える。


 昼間の村は、人の声が主役だ。笑い、怒鳴り、桶を引きずる音、家畜の鼻息。全部が混ざって「生活」になる。

 けれど夜は違う。人の声が引く代わりに、村そのものの音が浮き上がる。


 木が軋む。

 井戸の水が、どこかでぽとりと落ちる。

 遠い虫の羽音が、薄い膜みたいに空気を張る。


 工房の中は、炉の低い呼吸だけが残っていた。

 赤い熾が炭の奥で脈打ち、煤けた梁の影がゆっくりと揺れる。


「……寝ろって言っただろ」


 ガルドが言う。口調は荒いが、目は焔じゃなく俺の指先を見ていた。

 指先は煤で黒い。銀線を巻き、穴を増やし、負帰還のループを一段強くする――その作業を、つい続けてしまった。


「寝る。……これだけ終わったら」


「“これだけ”が増えてくのが寝不足の始まりだ」


 タリヤは工房の隅で、丸くなって毛布にくるまっている。眠いのに、俺の作業が気になって目だけが動く。


「ねえ、お兄さん。今日はもう火はやらないの?」


「火は……たぶん、やらない」


「“たぶん”って、こわい言葉」


 昼間も言われた。

 未定は怖い。でも、夜はもっと怖い。未定が形を持って近づいてくるからだ。


 俺は石英板の縁に、最後の穴を開けた。

 銀線の端を追加する。ダミー負荷へ落とす逃げ道をもう一本。

 外乱耐性を上げる――というより、「外乱が来ても死なない」ための保険。


(止められないと、実験はできない)

(実験ができないと、明日がない)

(明日がないと、……俺はまた“偶然”に負ける)


 木札を並べ直す。

 起動、維持、停止。

 順番だけは、嘘をつかない。


 そのとき――村の外から、犬の遠吠えみたいな声が混ざった。


 ひとつじゃない。

 重なって、広がる。

 空気が薄く震えた。


 ガルドの背中が、一瞬で硬くなる。

 槌を握る職人の背じゃない。獣を見たことのある背だ。


「……来たな」


「何が?」


 俺が訊ね終わる前に、工房の戸が叩かれた。

 乱暴じゃない。でも急いでいる音。


「ガルドじい! ガルドじい、起きてる!?」


 村の男の声だ。息が切れている。


 ガルドが戸を開けると、外気が流れ込んできた。夜の湿り気と、土の匂い――そして、焦げた毛みたいな嫌な匂い。


「魔獣だ! 森側の柵が……っ、二匹、いや三匹――いや、もっといる!」


 男の目は白い。

 恐怖は、嘘をつかない。


 タリヤが毛布から飛び起きた。


「まじゅう……?」


 俺は、頭の中で一瞬だけ“単語”を置き換える。


 魔獣=外乱入力。

 村=システム。

 住民=保護対象。

 火=資源。

 時間=臨界。


 ――やることは、決まっている。


「避難は?」


 俺が訊くと、男が戸惑った顔をする。

 この村で「避難」という単語は、まだ手順になっていないのだ。


 ガルドが代わりに言う。


「広場に集めろ! 井戸の柱の近くだ。……結界が薄いなら、柱の膜が頼りだ!」


「わ、分かった!」


 男が走り去る。


 ガルドが俺を見る。


「ユウマ。お前――」


「行く」


 言葉が先に出た。


「お前の火は、飼う火だ。噛まれたら痛ぇ」


「噛まれない檻を、作った」


 俺は石英板――核外皮の二号機を掴み、木札をまとめて懐に入れた。

 白衣にポケットはない。だから布の内側に紐で括ってぶら下げる。揺れる。邪魔だ。

 でも、今はそれでいい。完璧じゃなくていい。再現できればいい。


 タリヤが俺の袖を掴む。


「お兄さん、行っちゃだめ! まじゅう、こわい!」


「怖いから、行く」


「意味わかんない!」


「意味は後で説明する」


 ガルドがタリヤの肩を掴んで押し戻した。


「嬢ちゃんは広場だ。言うこと聞け。……ユウマ、無茶はすんな」


「無茶はしない。手順でやる」


「それが無茶だ」


 ガルドが鼻で笑う。けど、目が少しだけ柔らかい。


 外へ出ると、村の夜がざわついていた。

 家々の扉が開き、灯りが点々と揺れる。

 子どもの泣き声、誰かを呼ぶ声、走る足音。


 遠く、森側――柵の方から、低い唸りが波みたいに押してくる。

 その音の中に、金属を引っ掻くような高い鳴き声が混じる。


(複数)

(群れ)

(狙いは……食糧か、結晶か)


 この世界の魔獣が何を食うかは知らない。

 でも、群れで来るなら「単独の偶然」じゃない。必然の入力だ。


 俺は走りながら、頭の中でSOPを組む。


 ――目的:村人を守る。

 ――制約:俺の魔力量は少ない。スキル層に連結していない。

 ――資源:場、燃料、結晶媒体、そして“火の回路”。


(場から熱を引く)

(燃料は補助。外部資源を使う)

(運動量は……押し返される。だから反力を逃がす)

(反力塔はない。なら地面へ、地脈へ――アンカーを打つ)


 広場に近づくと、青い結晶柱が見えた。

 薄い膜が村を囲むように揺れている。結界。だけど、弱い。呼吸が浅い。


 村人が集まり始めていた。

 抱えられる子ども、震える老人、鍋を抱えた女。

 誰もが目だけで森の方向を見ている。


 その中に、昼間見た紅の外套があった。


 エリシア=ヴァーミリオン。


 護衛を二人連れている。昼間と同じ。だけど夜の彼女は、違う色だ。

 赤が暗い。目が光っている。観測者の目じゃない。戦う人間の目だ。


 彼女が俺を見つける。


「……来たのね」


「あなたも」


「私は責任がある。“異常ログ”を放置したくない」


 言い方は冷たい。

 でも、その中に焦りが混じっているのが分かる。


 護衛が俺を見て眉を寄せた。


「無籍が前へ出るな」


「前へ出ないと、後ろが死ぬ」


 俺が言うと、護衛が言い返そうとする。

 でもエリシアが一言で止めた。


「黙って。――彼は手順を持っている」


 俺は頷き、広場の端にある木杭を指差した。


「ここは石が多く、地面が硬い。……アンカーに使える」


「アンカー?」


「反力を地面へ逃がす。押したら押し返されるから」


 エリシアが短く息を吐く。


「……あなたの言葉、全部“理屈”ね」


「理屈は裏切らない」


 言った瞬間、胸の奥が一瞬だけ痛んだ。

 前世のラボの蛍光灯。爆音。白い閃光。

 ――思い出す暇はない。


 森側の柵が、折れる音がした。

 バキ、という乾いた破裂音。


 村人の悲鳴が上がる。


 影が跳ねた。


 月明かりの下、犬より大きい獣が三匹――いや、もっと。草の陰にもう二、三の影。

 体毛が黒く、目が淡く光る。口から白い息。爪が地面を削る。


 魔獣。


 獣は結界の薄い膜に触れ、バチ、と火花みたいな光を散らす。

 膜が揺れる。耐えきれない。薄いガラスが震える音に似ている。


「……間に合わない!」


 誰かが叫ぶ。


 俺は石英板を地面に置いた。

 周囲に木札を並べる。起動、維持、停止。

 並べる動作が、俺の心拍を落ち着かせる。


(順番)

(順番があれば、手が迷わない)


 ガルドが走ってきて、手に小さな桶を持っていた。

 中身は油――獣脂か、植物油か。匂いが重い。


「これだ! 火の足しにしろ!」


「助かる」


 燃料は外部媒体。エネルギー保存の帳尻を合わせるための現実だ。


 エリシアが杖を構える。


「私が結界を補強する。あなたは――」


「照明と誘導をやる。あと、分断」


「分断?」


「群れは、まとまってると強い。分ければ弱い」


 エリシアが一瞬だけ口角を動かした。


「合理的ね」


「合理的じゃないと生きられない」


 結界が再びバチ、と鳴る。

 魔獣が一匹、膜の隙間に鼻先を突っ込んだ。裂け目が生まれる。


 俺は息を吸い、短く囁く。


「……bind。δ固定。Δφ、ゼロ寄せ」


 空気が薄く波打つ。

 石英板の中心に、熱の点が立つ。


 次。


「……shell。∂φ/∂n=0」


 粘土層が淡く光る。

 外皮が立つ。熱の逃げ道を縛る。


 ここで、燃料を投入する。

 ガルドの桶から油を少し、中心の凹みに垂らす。少しでいい。足りない分は場から引く。

 燃料は“起爆剤”であり、補助熱源だ。


 俺はふいごを踏まない。

 代わりに、息で最小の風を送る。村人の前で大きな送風は危険だ。火が跳ねる。


 焔が立ち上がる。

 小さいが、白い芯を持つ焔。


 ――ここからが、今日の本番だ。


 俺は石英板の縁に打った銀線の端を、木杭に巻き付けた。

 杭を地面に叩き込む。ガルドが槌で一発、二発。

 杭が地面に刺さる。


(反力アンカー)

(場へ押す力を、地面へ逃がす)


 魔獣が結界の裂け目をこじ開ける。

 膜が破れる音がした。薄い布が裂けるみたいな、嫌な音。


 獣が一匹、村へ入った。


 村人が後退する。

 泣き声が大きくなる。


 俺は、焔を“散らす”準備をする。


 焔を大きくするのは簡単だ。

 でもそれは危険だ。制御できない火は、魔獣より先に村を焼く。


 必要なのは、細かく、薄く、しかし熱い火。

 群れを分けるための炎の柵。


(炎の散弾化)

(核を複数に分割)

(外皮は全体で束縛)

(余剰はダミーへ)


 俺は短く言った。


「……core。Q、分割。pulse、三」


 意味はこの世界にない。

 でも場は応答する。応答するように、俺が条件を置く。


 焔の芯が、三つに割れる。

 白い点が、板の上で三拍子みたいに点滅した。


 そして――俺は腕を振る。


 石英板を持ち上げ、扇ぐように横へ振る。

 焔が板の上で伸び、薄い火の帯になる。


 帯が空中に走る。


 ボッ、ではない。

 パッ、と光が広がる。

 熱の面が立つ。


 魔獣が帯に触れた瞬間、毛が焦げる匂いが弾けた。

 獣が跳ねる。痛覚はある。なら止まる。


 もう一匹が別方向から回り込もうとする。


 俺はすぐに短く。


「……FB。gain、下げる。dummy、接続」


 外周の煤層が暗く濃く光る。

 熱の余剰を捨て、焔が暴れないように絞る。


 火の帯は薄いまま保たれる。

 厚い炎じゃない。熱の境界線だ。


「――右!」


 エリシアが叫ぶ。

 彼女の杖から赤い光が走り、魔獣の足元の地面が一瞬だけ赤く焼ける。

 高出力。火属性の貴族魔法。

 でも、彼女の火は“切る”火だ。瞬間で止める。村を焼かない。


(この子……火の扱いが上手い)

(感覚派、って言うには精密すぎる)


 魔獣が二匹、火の帯に阻まれ、左右に分かれる。

 群れの形が崩れる。まとまりが失われる。


 ――分断成功。


 だが、ここで終わりじゃない。

 群れは分かれても、まだ数がいる。

 そして結界は破れている。時間がない。


 俺は叫ぶ。村人に向けて。


「広場の中心へ! 井戸の柱の近くに固まって! 走るな、転ぶ!」


 自分でも驚くほど声が出た。

 研究室の夜の俺は、こんな大声は出さない。

 でも今は、測定も計算も、全部“人命”の下だ。


 ガルドが続ける。


「言うこと聞け! 子どもは抱け! 荷物捨てろ!」


 生活が抵抗する音がする。

 鍋を離せない女。布袋を抱えた男。

 でも、火の帯が目の前を切った瞬間、皆が理解する。


 命が優先だと。


 魔獣が火の帯の外側を回り、別の家の影へ向かう。


「逃がすな!」


 護衛が剣を抜いて走り出す。

 正しい。だが、近接は危険だ。魔獣の爪は速い。


 エリシアが一瞬、迷う顔をした。

 彼女の火は強い。でも、強すぎれば家が燃える。


 だから俺は、手順で補う。


 俺は石英板を地面に置き直し、油をほんの少し追加する。

 場から引く熱だけでは追いつかない。外部資源を入れる。

 保存則に従って、現実に払う。


「……core。Q、上げる。range、短」


 焔が一段、白くなる。

 でも、飛ばさない。射出しない。近距離だけ。


 俺は板を前に突き出す。

 火の帯じゃなく、短い熱流――熱の噴流を作る。


 シュッ、と空気が鳴る。

 見た目は小さい。だが、当たれば熱い。毛が焼ける。


 魔獣が足を止め、唸る。

 その隙に、護衛が横から結界札――いや、束縛符のようなものを投げる。

 魔獣の動きが一拍遅れる。


(協調)

(それでいい)

(俺が全部やる必要はない)

(手順は共有できる)


 その瞬間、背中が冷たくなった。


 焔の芯が、白く強くなる。

 風が変わった。夜風が一段強い。

 外乱入力。共振。出力上昇。


(発振する)

(今、“ちょっとだけ”危ない)


 俺はすぐに短く言った。


「……stop。FB、強」


 煤層が濃く光り、熱が外周へ落ちる。

 焔の白が橙へ寄り、噴流が短くなる。


 止まった。

 ――ギリギリで。


 タリヤの泣き声が聞こえた。

 広場の中心で、彼女が膝を抱えている。目だけがこっちを見ている。


 俺は一瞬だけ目を逸らし、すぐ戻した。

 目を逸らすと、手が迷う。

 迷うと、火が迷う。


 魔獣の数が減っていく。

 火の帯と、エリシアの切る火、護衛の束縛で、群れは森側へ押し戻され始めた。


 最後の一匹が、結界の裂け目の向こうへ跳ぶ。


 夜の森が、それを飲み込む。


 ――静かになった。


 静かになった瞬間のほうが、怖い。

 音が戻ってくるまでの空白が、耳を刺す。


 村人の泣き声が戻る。

 誰かの安堵の息が戻る。

 誰かの祈りが戻る。


 エリシアが杖を下ろし、俺の方へ歩いてきた。

 外套の裾が煤で少し汚れている。貴族の服の汚れは、たぶん彼女の世界では“事件”だ。

 でも彼女は気にしない。今は。


 彼女は俺の石英板を見る。

 銀線。粘土。煤。木札。

 全部が夜の中で、まだ熱を持っている。


「……あなた、さっき“止めた”わね」


「止められない火は、村を焼く」


「当然よ。でも――あなたの火は、体系の外なのに、止まる」


 その言葉は褒め言葉じゃない。

 観測報告だ。評価だ。危険判定の前段。


 護衛が近づいて言う。


「エリシア様、無籍の術式は――」


「黙ってと言ったでしょう」


 エリシアの声は冷たい。でも、俺の背中にある熱を少しだけ冷ます温度だった。

 護衛は口を閉じる。


 ガルドが息を吐き、俺の肩を小突いた。


「……噛まれなかったな」


「噛まれたら、もう一段強く縛る」


「その発想が怖ぇ」


 俺は苦笑した。笑っていい場面じゃないのに、笑いが漏れる。

 緊張が切れた証拠だ。


 エリシアが、その笑いを見て眉を寄せた。


「……笑う余裕があるの?」


「余裕じゃない。……生きてるって確認してるだけ」


 言ってから、自分でも変な言い方だと思った。

 でも、嘘じゃない。前世のラボでは、確認できなかったから。


 エリシアは一拍置いて、結論だけを言った。


「あなた、誰?」


 その問いは、名前を聞いていない。

 所属を聞いていない。

 ――存在の分類を聞いている。


 体系の外。

 スキル非連結。

 低魔力。

 なのに、村を守る火を作る。


 俺は息を吐いて、答えた。


「……ただの理屈屋だ」


 エリシアの瞳が細くなる。

 怒りじゃない。興味だ。熱だ。


「理屈屋が、今夜、村を守った」


「守ったのは俺だけじゃない。あなたもガルドも、みんな動いた」


「でも、手順を“先に”持っていたのはあなたよ」


 彼女はそう言って、焔の残り香の中で俺の木札を見た。

 昼間、彼女が写した札。

 その順番が、今夜、生きた。


 俺は自分の手を見る。

 煤で黒い。汚い。

 でも、その汚れは、村が燃えていない理由だ。


(才能じゃない)

(手順だ)

(手順は、共有できる)

(共有できるなら、世界は変わる)


 胸の奥が熱くなる。

 それは焔の熱じゃない。決意の熱だ。


 ガルドが言った。


「ユウマ。……寝不足の面倒が来たな」


「うん。来た」


 エリシアが一歩近づき、低い声で言う。


「王都へ来なさい。あなたの理屈は、この村だけに置いておくには危険で、価値がある」


 価値。

 また、その言葉だ。

 利用の匂いがする。


 でも――逃げても、外乱は増える。

 隠しても、観測される範囲は広がる。


 だったら。

 自分で制御できる場所へ行く。

 制御できるように、手順を増やす。


 俺は頷いた。


「……行く。ただし条件がある」


「言いなさい」


「俺の手順は、独占させない。誰でも使える形にする。止め方も含めて」


 エリシアが一瞬だけ驚いた顔をした。

 そしてすぐ、笑う寸前の表情になる。


「……面倒な男ね」


「面倒じゃないと、世界は変わらない」


 夜の広場に、青い結晶柱の光が揺れる。

 破れた結界の膜が、ゆっくりと修復されていく。


 村人の泣き声が、少しずつ止む。

 代わりに、安堵の息が増える。


 俺は空を見上げた。

 雲の切れ間から月が出ていて、薄い光が村の煙を銀色に縁取っていた。


 試練の夜。

 でも――観測できた。


 外乱が来る。

 群れが来る。

 結界は破れる。

 火は発振する。

 そして、止められる。


 止められるなら、設計できる。

 設計できるなら、次は――もっと守れる。


 俺は石英板を拾い上げ、煤で黒い指を握りしめた。


(明日からは、火を“守り”に使う)

(火を、武器じゃなく、手順にする)

(誰でも、再現できる形に――)


 焔の匂いが、夜の湿り気に混ざって、深く肺に入った。


 俺は、決めた。


 この世界で生きるなら――理屈で、生き残る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。