↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lythraen ― 逆なる条理 ―  作者: 白想玲夢
第1章 波紋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/77

さざなみの広がり

27年9月15日


午前二時十三分。


総理官邸地下、危機管理センター。


赤色灯が静かに点灯した。


「総理、緊急です」


叩き起こされた総理大臣は、上着を羽織りながら大型モニターの前に立った。

画面に表示されているのは、一枚の文書。


だが、それは単なる怪文書ではなかった。


⸻


三年以内にAIによる国家機能の自動化および富の再分配モデルを実装せよ。


実装できない場合、日本は“空洞化”する。


これは警告である。


⸻


「悪質ないたずらだろう」


経済産業大臣が吐き捨てる。


しかしサイバー対策室長が首を横に振る。


「生成AIの痕跡なし。既存文体とも一致しません。暗号構造も独自設計です。さらに……」


「さらに?」


「経団連主要企業三十二社へ、同時刻に別文書が送信されています」


画面が切り替わる。


⸻


機械化を拒む企業には売上の半分を徴収する。


段階的自動化を進めよ。


ベーシックインカムを導入せよ。


国家は最適化できる。


⸻


室内の空気が張り詰める。


「脅迫だ」


「しかし理屈は通っています」


別の官僚が静かに言う。


同時刻、夜間市場は急落。

投資家の投稿がSNSに溢れる。


《国家転覆だ》

《BI強制とか正気か》

《でも……理論上は可能じゃないか?》


スタートアップ企業からは逆に提案が殺到していた。


「分散型再分配アルゴリズムを提供できる」

「AI国家基盤の実証実験を」


経団連会長は怒鳴る。


「屈するのか!?」


だが、若手経営者の一部は沈黙していた。


なぜなら――


このモデルは、成立する可能性がある。


それが最も危険だった。


「差出人は?」


画面に一行の署名が映る。


⸻


Lythraen


⸻


官邸の外では、まだ夜が支配している。


だが、日本という構造のどこかに、

見えない亀裂が走り始めていた。


国家は制度か。

それとも設計可能な構造か。


秒針は、動き始めている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。