表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラ。  作者: hikakiso
2/3

矛盾と砂

結局理屈だけ見つけても生きてる意味がないのだからパンドラは空のままだ。考えれば考えるほど、生きている意味が本当にない。と実感するしかなかった。

家の側に車を止めてガレージから石油タンクを取り出した。蓋を取り家のなかに撒いていく。どうせこんな事したって無意味だろうし意味もない。

石油を家中に撒いた後に喪服に着替えた。多分これも意味がない。

ベット脇に置いたテディーベアがいつも見守ってくれていたように思う。

それすら無意味なのか。

冷蔵庫から紙パックの牛乳を取り出して一気に飲み干した。味がしない。

これも無意味なんだろうが、あの日に近所の方が作ってくれたババロアを想い出した。馬鹿みたいだな。タバコを投げ捨てて家に火をつけた。


また車で走り出す。あの日の2ストローク気持ちがよかった。人馬一体と過去の事かと思い知らされたバイクだ。バイクは事故でバラバラになったがどこかにいるのだろうか。流石に意識がないから話はできないか。

ギアボックスのあの滑りの一瞬が無ければもっと走れていただろうか。

自分で運転する車は好きではない。またタバコに火をつけた。


今頃家は燃えて何かが爆ぜているころ合いだろうか。でっかいキャンプファイアか。などと考えていたら道がどんどんウネリだしてがけっぷちを走っている。高いところは好きではない。茶色く濁った岩肌とアスファルトの境界が曖昧だ。車は誰も走っていない。飛ばすには丁度いい。

きっと砂漠の手前でこいつは止まって二度と動かなくなるだろうな。


もっと聖人的な生き方を選んでもっと真面目に全ての事を取り組んでいたら、神様なんていもしない超人的なものが助けてくれたのだろうか。

きっとそんな事はない。もしそんな存在がいるなら困ってる人がいないはずだ。神が試練を与えるなんて嘘っぱちだ。

バイクで事故ったあの日も成るべくしてなったのだ。あの日の夢は病院の天井だ。動かない身体、眼だけを動かして隣りを見たらみんな瀕死だ。

誰かがそれを見せたとしても良き方向に変えられないのは本当に合点がいかない。良い行いが足りないからなのか。それとも自分の脳の一部が委縮状態でそんな夢を見ていたのか。どうでもいい。

車でこの崖から飛び込んでやろうかと考えたがきっと意味がないし、また繰り返すだけだろう。

そんな事より道路脇に咲いてる名前も知らない花が綺麗だ。


真っすぐになった道が心地いい。

フザケタ人生もこれぐらい真っすぐなら心地がいいのかもしれない。

永遠に続く砂漠地帯の道路の片側に車を寄せた。

何故かたき火をしようと思い立ち枯草だの木がカラッカラになってるものを拾ってきた。松ぼっくりがないのが少し残念だったが、石を円状に並べて枯草に火をつけて暖を取った。

無駄に星空が綺麗だ。と思いつつまたタバコに火をつける。


「ねぇ。ねぇちょっと!!起きなさいよ。」

太腿辺りを軽く蹴られている感じがする。ハッとして目を覚ました。

見たこともない服装に身を包んだねぇちゃんが立っている。

それとモップの様な毛並みの犬の様な動物がいる。

「てめぇ人のこと蹴ってんじゃねぇぞ。」

「いつまで寝てるの?」そういうと胸ぐらを掴まれて両足が浮いた。

「貴方の友達日本海でレアアースまで見つけたのにあなたは何してるの?」「知るか。」

「あんたがウジウジしてる所為で私の故郷がなくなった。」

そういうとぶん殴られた。

「それとさぁ。経口栄養食持ってるわよね。ちょうだい。」

新手のカツアゲか。それに誰だよコイツ。俺の世界に入れるんだな。

箱ごと女にぶん投げた。女は間を置いて溜息をつき続ける。

「あなた早くしないと貴方の星も壊れちゃうよ?」

「私達いくけどソコでそうやってると爺になるわよ?行こ。ボマー。」


見たこともないバイクで聞いたこともないモーター音だ。女がバイクのような乗り物に跨ると犬が二足歩行で背中合わせで座る。ハッチが絞まるとバイクの残像が伸びていく。光った瞬間バイクと女はもういない。


殴られた衝撃で気が遠くなっていく。


目を開けて空を見ると常に流れ星が流れている。何千とか何万とかそういう感じだ。たき火はまだ燃えていてほんのり温かい。

こうしている方が土の暖かさや炎の熱で気持ちがいいかもしれない。

いつまでも寝っ転がって起きるのをやめようか。

両腕の肩の骨がバキバキと音を出しながら立ちあがる。

服に着いた砂埃を払い道路を歩く。何だこれ。

そう呟いて畝っている道を歩き続ける。


道を外れたずっと向こうに枯れた大木が立っている。何か気になってそちらの方に歩いて向かった。空を見上げると星の光がストロボを伸ばしたかのように星が線をひいて流れていく。


来た道を振り返ったがもう同じ風景はない。

風もなくてシーンとした砂漠だ。生き物の気配すらない。

身体のそこらじゅうが熱い。これやばいかもな。

あの女に殴られたからとかそういうのではなく感覚的なものだ。

あの日バイクで事故した時の様にゾワゾワする。


枯れた大木の脇まで行くと井戸があって、その淵に真っ青の蛙がこちらを向いている。井戸を見ると水面いっぱいに水が入っている。

カエルがその水に跳び込むと井戸の水面が円を描いて広がった。

井戸水の中をよくよく見ると真っ黒いものが広がっていて円の中心を見つめていると井戸の中に引き込まれた。


水の中は冷たくもなくて心地よい感じがする。息をしようとも思わない。

唯々水の中に吸い込まれて自分自身が無くなっていいかもしれないとだけ考えていた。どの道これから現実に戻れたとしても……。

といってこの状況でココで無くなってしまうのは何か違う気がする。


あぁ。そういえば今日誕生日か。誕生日に終わりを迎えるのもオツだな。

結局自分が何者で何になりたくて何のために生まれたのか何て一つも理解しないまま終わっていくのは癪だ。

おしゃべりなトミーは今何を考えてあそこに座っているのだろうか。

三つ首のあの犬は何なんだ。


年を重ねてもワカラナイ事だらけだ。

花弁の枚数。雲の行方。砂の数。シャーマンの教え。心の在り方。海の大きさ。星の数。宇宙の大きさ。心についても。


体が熱い。燃えているような臭いがする。


どうせ泡になって消えちまうんだからさ。

もう少しだけ……。


急に溺れた様に息苦しい。

口の中で鉄の味がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ