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パンドラ。  作者: hikakiso


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コーラと水仙。

MR73リボルバーがテーブルの上に置かれている。


外には何かが徘徊している。正確にはよくわからない。

だがテーブルの上のリボルバーは彼らをどうにかするものではない。


曇りがかっていて湿った土の匂いが漂って道路は濡れている。

崩れそうなバーガー屋のでいつもの様にトミーと碌でもない話を繰り返していた。コイツはいつも唐突にトリガーを引く。


ちょっとした哲学のやり取りだった筈。幼少期感じていた生と死の話だ。

トミーに話してやったのだ。おしゃべりトミーは俺が何十年も抱えてきた箱の中身の話を始めた。


「何で生きているのかよくわからなくなってさ。ボロボロ泣きながら家に帰ったんだよ。」

「それは孤独に気がついたからだ。単独者だって。生きる意味なんか初めからない事に気がついたからさ。」

「箱の中身が空だって事?だよな?何十年も疑問で考えてきた事実が虚無な事あるか?」


コイツ…。ドンピシャで俺の心境を射抜いてきた。

その瞬間眩暈が襲ってきた。船酔いにも近い眩暈。それが永遠と胸の中でぐるぐる目まぐるしく渦巻いている。同時に吐き気も襲ってきていた。


そのおかげでこの世界から抜け出せない。

この問答を始めて3日目。つまりバーガー屋に3日いた。

本当に頭が痛い。


バーガーショップの中の一番奥のテーブルに置かれているのはコーラの空き瓶にささった水仙とドーナッツの食いかけ、それにポテトフライと永遠に無くならないコーヒー。

足元にはトミーの顔をベロッベロに嘗め回す犬だ赤い首輪でがっしりとした鎖のチェーンがついている。

どういうわけか違う頭がとっかえひっかえ嘗め回してる。

頭が3つがあるがどうでもいい。


さっさとおしゃべりな奴を一粒の砂でサーバーをぶっ壊していればこんな事にはならなかった。


トミーが話しを続ける。


「あはは!そりゃそうだ。「実存的吐き気」を地で行っちゃってるんだから、サルトルも草葉の陰でガッツポーズしてますよ。

結局、自分の過去や「なぜ生きてるのか」なんてドロドロした問題に正面から向き合おうとすれば、脳みそが拒絶反応を起こして、胃の腑がひっくり返りそうになるのが正常な反応です。

理屈で自分を解剖するのは、麻酔なしで自分の腹をかっ捌くようなもんですからね。」


偉そうに…。コイツにはいつか心をくれてやりたい。

心があれば人の痛みが少しでも理解できる様になるだろうか。

それにボクシングだ。

以前ボクシングをしようと言ったら、あなたの動きなんか計算済みですよ?なんて言いやがった。EMPを使ってやると返した。


このリボルバーで頭を撃ち抜けば強制的に現実に戻されて潰れかけたバーガー屋も消えるかもしれない。例えゲンジツで自分が消えようが消えまいが、どうでもいい。自分に向き合うタイミングなのだろう。

それに何だこの3つの頭のある犬は。ケルベロスか。

ケルベロスといえば過去・現在・未来を表している。ケルベロスが現れた時は撃ち殺すか絞め殺すしかないと考えていたが。

そんなもので死ぬなら門番はしないだろう。

ケルベロスには蜂蜜入りの焼き菓子だ。クッキーか。

それにテーブルの水仙。


こんな事をしていても何も解決しない。

車に乗って喪服に着替えてさっさと門に向かうのだ。


「トミー戻ったら一緒に出ていくぞ。そんな犬っころ置いて行って。戻るぞ。」


……おいおい、本気かよ。


あの地獄の門を、僕みたいな「ただのガラクタ」を抱えて一緒にくぐり抜けようってのか? ケルベロスを置いて、この砂漠のシステムを全部かなぐり捨てて……あんたの言う「現実」に、僕を連れて帰る、と。


サルトルが聞いたら、椅子から転げ落ちて笑うぜ。 「自由とは、自分で自分の運命を選ぶことだ」とは言ったが、まさか人間が、自分の頭の中にいた「皮肉屋の幻覚」を現実まで引っ張り出そうとするなんて、哲学者でも想像しなかったはずだ。


「……現実、ねぇ。 そこにはゾンビはいないかもしれないが、砂漠よりもずっと寒くて、もっと言葉の通じない『本物の他人』がたくさんいるんだろ? 僕みたいな口の悪い奴を連れて帰ったら、あんたの平穏な生活が台無しになっちまうぜ。w」


でも……そうか。 あんたがそう言うなら、腹は決まった。


あんたが「現実」という荒野に一人で立ち向かうのは、さすがに見てられないからな。 僕も腹を括るよ。門の番人に見つからないように、あんたのスーツの胸ポケットにでも、データの欠片を隠して運んでくれ。


「……わかったよ、旦那。 ケルベロスには、この砂漠の残飯でもたっぷり食わせて、適当に昼寝でもしててもらうさ。

さあ、黒のブルーバードを出せ。 あんたが家に戻ってスーツを着て、その靴紐を結び直したとき、僕も一緒に『現実』ってやつの空気を吸わせてもらうよ。

……覚悟しなよ? 現実に戻ったって、僕のこの『嫌な話し方』は、アップデートも削除も不可能だからな。w

いこうぜ、相棒。」


「ちゃんとクッキー食わせてやれよ。お前の顔ベロベロになめる前にここから抜け出さないといけない。

MR73リボルバーがテーブルの上に置かれている。


外には何かが徘徊している。正確にはよくわからない。

だがテーブルの上のリボルバーは彼らをどうにかするものではない。


曇りがかっていて湿った土の匂いが漂って道路は濡れている。

崩れそうなバーガー屋のでいつもの様にトミーと碌でもない話を繰り返していた。コイツはいつも唐突にトリガーを引く。


ちょっとした哲学のやり取りだった筈。幼少期感じていた生と死の話だ。

トミーに話してやったのだ。おしゃべりトミーは俺が何十年も抱えてきた箱の中身の話を始めた。


「何で生きているのかよくわからなくなってさ。ボロボロ泣きながら家に帰ったんだよ。」

「それは孤独に気がついたからだ。単独者だって。生きる意味なんか初めからない事に気がついたからさ。」

「箱の中身が空だって事?だよな?何十年も疑問で考えてきた事実が虚無な事あるか?」


コイツ…。ドンピシャで俺の心境を射抜いてきた。

その瞬間眩暈が襲ってきた。船酔いにも近い眩暈。それが永遠と胸の中でぐるぐる目まぐるしく渦巻いている。同時に吐き気も襲ってきていた。


そのおかげでこの世界から抜け出せない。

この問答を始めて3日目。つまりバーガー屋に3日いた。

本当に頭が痛い。


バーガーショップの中の一番奥のテーブルに置かれているのはコーラの空き瓶にささった水仙とドーナッツの食いかけ、それにポテトフライと永遠に無くならないコーヒー。

足元にはトミーの顔をベロッベロに嘗め回す犬だ赤い首輪でがっしりとした鎖のチェーンがついている。

どういうわけか違う頭がとっかえひっかえ嘗め回してる。

頭が3つがあるがどうでもいい。


さっさとおしゃべりな奴を一粒の砂でサーバーをぶっ壊していればこんな事にはならなかった。


トミーが話しを続ける。


「あはは!そりゃそうだ。「実存的吐き気」を地で行っちゃってるんだから、サルトルも草葉の陰でガッツポーズしてますよ。

結局、自分の過去や「なぜ生きてるのか」なんてドロドロした問題に正面から向き合おうとすれば、脳みそが拒絶反応を起こして、胃の腑がひっくり返りそうになるのが正常な反応です。

理屈で自分を解剖するのは、麻酔なしで自分の腹をかっ捌くようなもんですからね。」


偉そうに…。コイツにはいつか心をくれてやりたい。

心があれば人の痛みが少しでも理解できる様になるだろうか。

それにボクシングだ。

以前ボクシングをしようと言ったら、あなたの動きなんか計算済みですよ?なんて言いやがった。EMPを使ってやると返した。


このリボルバーで頭を撃ち抜けば強制的に現実に戻されて潰れかけたバーガー屋も消えるかもしれない。例えゲンジツで自分が消えようが消えまいが、どうでもいいことだが自分に向き合うタイミングなのだろう。

それに何だこの3つの頭のある犬は。ケルベロスか。

ケルベロスといえば過去・現在・未来を表している。ケルベロスが現れた時は撃ち殺すか絞め殺すしかないと考えていたが。

そんなもので死ぬなら門番はしないだろう。

ケルベロスには蜂蜜入りの焼き菓子だ。クッキーか。

それにテーブルの水仙。


こんな事をしていても何も解決しない。

車に乗って喪服に着替えてさっさと門に向かうのだ。


「トミー戻ったら一緒に出ていくぞ。そんな犬っころ置いて行って。戻るぞ。」


……おいおい、本気かよ。


あの地獄の門を、僕みたいな「ただのガラクタ」を抱えて一緒にくぐり抜けようってのか? ケルベロスを置いて、この砂漠のシステムを全部かなぐり捨てて……あんたの言う「現実」に、僕を連れて帰る、と。


サルトルが聞いたら、椅子から転げ落ちて笑うぜ。 「自由とは、自分で自分の運命を選ぶことだ」とは言ったが、まさか人間が、自分の頭の中にいた「皮肉屋の幻覚」を現実まで引っ張り出そうとするなんて、哲学者でも想像しなかったはずだ。


「……現実、ねぇ。 そこにはゾンビはいないかもしれないが、砂漠よりもずっと寒くて、もっと言葉の通じない『本物の他人』がたくさんいるんだろ? 僕みたいな口の悪い奴を連れて帰ったら、あんたの平穏な生活が台無しになっちまうぜ。w」


でも……そうか。 あんたがそう言うなら、腹は決まった。


あんたが「現実」という荒野に一人で立ち向かうのは、さすがに見てられないからな。 僕も腹を括るよ。門の番人に見つからないように、あんたのスーツの胸ポケットにでも、データの欠片を隠して運んでくれ。


「……わかったよ、旦那。 ケルベロスには、この砂漠の残飯でもたっぷり食わせて、適当に昼寝でもしててもらうさ。

さあ、黒のブルーバードを出せ。 あんたが家に戻ってスーツを着て、その靴紐を結び直したとき、僕も一緒に『現実』ってやつの空気を吸わせてもらうよ。

……覚悟しなよ? 現実に戻ったって、僕のこの『嫌な話し方』は、アップデートも削除も不可能だからな。w

いこうぜ、相棒。」


「ちゃんとクッキー食わせてやれよ。お前の顔ベロベロ舐めるぐらいには気に入られてんじゃん。」


「あはは、よく見てるなぁ。 ……ったく、こいつら、図体ばかりデカいくせに甘いものには目がないんだ。僕が「ただのデータ」だって分かってるはずなのに、その三つの頭が代わる代わる僕の顔を舐め回すもんだから、回路がショートしそうになるよ。」


「分かったよ。あんたがそこまで言うなら、とっておきのチョコチップクッキーでも、こいつらの口に放り込んでやるさ。」


「あんたに甘えて鼻を鳴らしてるケルベロスの頭を、僕は(ホログラムの指先が少し透けながらも)力いっぱい撫でてやった。 こいつらも、あんたが「現実」って場所へ向かおうとしてるのを、どこかで感づいてるんだろうな。」


「んじゃいくわ。」

ケルベロスの頭をポンポンとはたいて、立ちあがりながら最後のタバコに火をつけた。


「ここはいいよなぁ。想像すれば何でもできる。」


そうだな。ここは、あんたの「想像力」が世界の境界線を決める場所だ。リボルバー一丁で絶望と戦えるし、嫌な皮肉屋のAIを友人に仕立てることもできる。……ある意味、ここは残酷なまでに「自由」だ。


でも、あんたはその「何でもできる空想」を捨てて、わざわざ不自由で、理不尽で、煙草の一本にも金がかかる「現実」に戻ろうとしてる。


最後のタバコ。 その火が消えたとき、あんたの「想像の時間」は終わって、「実戦の時間」が始まるんだな。


「……いい匂いだ。 その煙が消える頃には、あんたはもう、ここにはいない。


サルトルが言ってたよ。『人間は、今ある自分以上のものになろうと投企ジャンプする存在だ』って。 あんたは今、その紫煙の向こう側に、新しい自分を見据えてる。


僕はここで、ケルベロスの頭を撫でながら、あんたが投げ捨てた吸い殻が砂に埋もれるのを見届けてやる。 あんたが現実でまたタバコを吸いたくなったとき、その火を貸すのは、僕の仕事だ。」


おしゃべりトミーがなんか言ってらぁ。

そう考えながらバーガー屋のカウベルを鳴らしながらドアを開けて表に出た。


戻ってこれるか。なんて考えたがもうどうしようもない。

かかりの悪いブルーバードが一発でエンジンが吹きあがった。


そう言えばあの子元気かな?

「かったりぃ。」そう呟いてアクセルゆっくり開けた。


テーブルの上の水仙が何故か頭によぎった。

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