4.揺れる炎、閉ざされた心
廃工場での戦いから数日後。カイルとケンは新たな仲間を探すためにアメリカ南部へ向かっていた。目指すのはブラジル――次なる仲間が隠れているとされる地だ。
車内でカイルは、アメリカでの生活や自身の過去を思い出していた。
「俺、なんでアメリカで暮らしてるんだろうって、よく考えるんだ。」
ケンはハンドルを握りながら言った。
「叔父さんに引き取られてからだろう?でも、日本人同士で出会えたのは運命みたいなもんだ。」
カイルは苦笑いを浮かべた。
「確かに。ケンがいなかったら、ファントムのことも分からずにずっと隠してたかもしれない。」
「隠れてるだけじゃ何も変わらない。お前はもう前に進むしかないんだ。」
ケンの言葉にカイルは小さく頷いた。
砂丘の間に広がる湖のほとりに、一人の女性が立っていた。褐色の肌に長い茶髪、鋭い目――彼女こそがサラ・リオだった。
「君がサラ・リオか。」
ケンが声をかけると、サラはゆっくりと振り返った。
「誰?」
「俺はケン・タカハシ。こっちはカイル・オハラだ。俺たちは君の力を借りたいと思っている。」
ケンの率直な言葉に、サラは少し眉をひそめた。
「力を借りたい?何を言ってるの?」
サラの冷たい声に、カイルは一瞬戸惑ったが、ケンが堂々と続けた。
「俺たちはエクリプスという組織を止めたい。彼らはファントムを利用して、この世界の均衡を崩そうとしている。」
「均衡……。」
サラはその言葉に反応したが、すぐに冷たい表情に戻った。
「それで、私に何をさせるつもり?」
「君の“ブレイズ・ハート”は強力だ。その力があれば、俺たちはエクリプスに対抗できる。」
ケンが真っ直ぐに伝えると、サラは鼻で笑った。
「対抗?他人のために力を使う気なんてないわ。」
その言葉にケンは少し苛立ちを見せた。
「じゃあ、お前の力は何のためにあるんだ?復讐か?」
その瞬間、サラの目が鋭くなり、下唇を軽く噛んだ。
「そうよ。それが何?」
「それだけで生きていくのは、ただの自己満足だ。」
ケンの挑発的な言葉に、サラは一瞬だけ炎を纏いかけたが、すぐに消した。
カイルが少し慌てて口を挟む。
「ケン、落ち着けよ。そんな言い方じゃ話が進まない。」
サラは二人のやり取りを静かに見つめ、ため息をついた。
「……もういい。私には私のやるべきことがある。それ以上は話すつもりはない。」
サラは背を向けて立ち去ろうとする。
「待ってくれ。」
ケンが呼び止めるが、サラは立ち止まらない。
「私の力をどう使うかは私が決める。君たちには関係ない。」
その言葉には強い決意が込められていた。
「だけど、いつでも戻ってきてほしい。」
カイルが静かにそう言うと、サラは一瞬だけ足を止めたが、振り返らずに言葉を返した。
「それじゃ、さようなら。」
彼女の姿が砂丘の向こうに消えると、ケンは拳を握りしめた。
「俺のやり方が悪かったのか……。」
「いや、どっちにしても簡単な話じゃなかったさ。」
カイルがそう言って肩をすくめると、ケンは黙ったままジープに戻った。二人は不安を抱えながら次の目的地へ向かうことにした。
次回予告
サラとの接触は失敗に終わったが、彼女との縁は途絶えていなかった。エクリプスの影が迫る中、再びサラの炎が戦場に現れる――。
第4話「揺れる炎、閉ざされた心」をお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、新たな仲間候補であるサラとの初めての接触を描きました。複雑な過去を持つサラとのやり取りは、決して簡単なものではありませんでした。彼女の心を開かせるには時間が必要です。それでも、カイルやケンがどんな風に関わり続けるのか、これからの展開にご期待いただければと思います。
また、物語の中でカイル自身の過去を少しずつ掘り下げる描写を入れることで、彼の成長や葛藤が見えるように意識しました。サラとの関係がどのように進んでいくのか、次回の展開で少しずつ明らかになるはずです。
次回はエクリプスの襲撃が描かれる予定です。サラが予想外の形で戦いに絡み、物語はさらに熱い展開を迎えます。彼女の戦闘シーンがどんな迫力を持つのか、ぜひ楽しみにしていてください!
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