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第四十三話 真相を求めて、それでも

 さて、俺達は考えをまとめて酒倉井の長である秋重の屋敷へと向かうことになったのだが……。

 屋敷の前に訪れた俺達の様子を見て護衛の者は屋敷内から人を引き連れて俺達を囲み始めたのである。

 一応、長の養子とはいえ家族である千歳や弟?であるミナウセを連れているのだが……。


 「何で俺達が囲まれてるんだ?

 こちらには、この屋敷の住人である千歳も居るんだぞ?」

 

 「確かに、神畏様であるお前等の滞在は許可された。

 しかし、その籠の者は別である」


 と、護衛の一人の言葉に俺達三人の視線がミナウセへと向かった。

 確かに、コイツは身なりからして怪しいな。


 「…………、この身なりでは分からないか」


 そう言うと男は籠を外し、その素顔を露わにする。

 河獺カワウソの頭がそこにはあった。


 「まさか、お前………ミナウセ殿か?

 いやだが、確かお前は数年前に行方不明になったと秋重様から………」


 「………、僕を知ってるなら話が早い。

 僕は兄上に用があるんだ、そこの奴等とは事情は違うが同じ目的。

 仮に僕等を邪魔立てするなら、この地の人間であろうと僕は容赦しないよ?」


 「っ………、分かった。

 屋敷の奥にて、現在秋重様は外の商人との商談の最中である」


 ミナウセの素顔と言葉を聞くなり、護衛達は俺達に道を開けていく。

 何とも、この地で奴はそれなりの有名人らしい。

 良い意味では無さそうだが、以前俺を斬り殺そうとしたくらいだからな………。

 

 「さっさと用を済ませる為だ。

 こんなところで足を引っ張るなよ」

 

 「………」

 

 ミナウセが早々に屋敷に踏み入る中、俺達も意を決し彼の後についていった。


 

 屋敷内にて俺達は秋重の元へと向かう。

 屋敷内の者にその居場所を尋ね、彼の居る部屋の戸を開けると商談最中の彼と向かいに座る商人と思わしき人物が居た。


 狐の面を被った怪しい男が彼の向かいに居た。


 「お前等、何故此処に?

 千歳に神畏様に、ミナウセまで………」


 「父上、突然の訪問に関しては後から幾らでもお叱りを受けます。

 早々に申し訳ありませんが、私達は父上に聞きたいことがあります」

  

 「………、ミナウセから自分の事を聞いたのか?

 自分が、お前と同じくミカの元に生まれた者であり、実の兄妹であったことを……」


 「確かにそれも大事なことです………ですが、」


 千歳が言葉を続けようとするも、ミナウセがそれを遮り彼の元へと詰め寄っていく。


 「兄上、正直に答えて下さい。

 貴方達は何を企んでいるんですか?

 僕はともかく、千歳は愚か民を謀り何を企んでいるのですか?」


 「私もお前に聞きたい事があった、ミナウセ……。

 お前は父上を殺して以降何処に行方を眩ましていたのだ?」

 

 「質問をしているのは僕だ!

 母上は何処に居る?

 僕等は母上が弱っていく姿を見てきた。

 お役目を果たすこと、それが出来ぬ身体になった。

 だから僕等は母上を救う為に人を殺め、その肉を食わせ続けたんだ。

 それが違うと、誤りだったと?

 答えろ秋重!!、仮にこの場で嘘を吐けばこの場で実の兄と言えど切り捨てる!」


 「貴様、わかっているのか?

 貴様が居ない間に、母上はな………!!!」


 「まだ僕に嘘をつくのか?

 調べはついてるんだ、集落の失踪事件に母上が関与していたのは僕が現場に残っていた匂いでわかった。

 何を用いて、どう行ったかは分からないがアレが母上のものでないなら何だと思う?

 僕が去ってからこの地で何があったというのだ?

 わざわざ自らを千歳の養父として引き取った意図、征伐隊等という外の輩の手を借りた意味は何だ?」


 「…………」


 一触即発しかねない状況。

 ミナウセは例の短刀を既に引き抜いており、切っ先を秋重へと向けているが………。

 目の前の状況を見兼ね、とうとう千歳が両者の間に無理やり割り込んだのである。


 「ミナウセ殿、父上を殺す必要はないはずです!

 事の真相を知ることが先決であるはずです!!」


 千歳の行動にミナウセは動揺を隠せない。

 俺も冷静を欠いたミナウセを止めるべく動こうとするがミナウセの口から予想外の言葉が飛んできた。


 「何をしているんだ!

 その男から今すぐ離れろ、千歳!!

 お前はまだ分からぬのか!!

 お前等も千歳を奴から引き剥がせ………!!」


 「何を言っているんですか、ミナウセ殿!!

 父上を、自分の兄を、家族を……一体何だと思っ……」


 その瞬間、間に割って入った千歳が突然その場に倒れ込み秋重殿がそれを受け止める。

 そして、懐に隠していたと思われる短刀を引き抜き意識を失った千歳の喉元へと刃の先を突きつけたのだ。


 「兄上、貴様ぁぁ!!」


 「あまり騒ぐな、水獺よ。

 今は客人も居るのだ、これ以上騒ぎ立てられると商売に迷惑極まりない。

 全く、とんだ邪魔者が戻ってきたものだ。

 あのまま行方知れずの方が幸せだったものを……」


 「兄上。

 やはり、お前はずっと全てを承知の上だったな?

 自らがミカの魂ではなく、彼女の身体に入り込んだ黒の怪異の魂の元に生まれた存在であると………」


 「ふっ……ハハハハハハ!!!」


 その言葉を聞くと、秋重殿は怪しげな笑みを受けべ高笑いをし始めた。

 気絶した千歳を人質として抱え、ゆっくりと立ち上がるとミナウセと距離をとっていく。


 「兄上………」


 「今更気付いたか、愚か者め!!

 お前と自分が同じ魂の元に生まれた者だといつまで自惚れていたのだ?

 全く、実に愚かで滑稽だったものよ!

 何時までも大人しく、餌を持ってきてくれれば良かったモノを余計な真似をしよって……」


 「っ………」


 「それ以上動けば、この娘の命はない」


 「正気か貴様?」


 「こいつは既に用済みだよ。

 ミヤコから神畏を引き連れてくれたお陰であの方への供物を確保出来たのだからな。

 しかし、予想外だったのはお前等の存在だ。

 遥殿に、そして珠丹藻殿。

 特にミタモ殿、まさか貴様が再びこの地へと訪れるとは思わなかったが」

 

 「何?」

  

 ミナウセが驚きを露わにし、俺も彼女へと視線を向けた。

 やはり俺の推測通りミタモは何らかの形で酒倉井との深い関わりがあった事を確信する。

 しかし、当の本人は特に驚きもせず平然としていた。


 「妾を知っておったのか?」


 「無論だとも、お主を知らぬ訳があるまい。

 かつての見廻り組であった矛鳩九葉に仕えし妖狐。

 いや、厄六と呼ばれ、罪人等を率いていたミタモ殿」

 

 「別に仕えていた訳ではないがな……。

 一応、この地を救った恩があるはずなのだが?

 時代の流れと共に忘れられたか、あるいはお主達親子がその事実を改ざんしたか。

 まぁ、全国に渡って天剱の失態を押し付けられたのが罪人含めた曰く付きの輩じゃったからな。

 その方が向こうとしては都合が良かったのじゃろう」


 「何を抜かすかと思えばそんな………」


 「で、だからどうした?

 妾がそのような事に動揺するとでも?

 秋重、答えろ?

 ミカは今、何処に居る?」


 「貴様、この娘の命がどうなっても………」


 「はぁ………ならさっさと殺せば良かろう?」


 「ミタモ?!」 

 「女狐、貴様!?」


 彼女の思わぬ発言に俺とミナウセが動揺する。

 そして、彼女の言葉に血の気が引いていく様子の秋重であった。


 「な……、貴様?

 自分が今何を言っているのか分かっているのか?!」


 「殺せと言ってるんじゃ、分からぬか?

 それでミカの居場所を吐くのじゃろう?」


 「っ…………クソっ!!

 であえ!!であえ!!!」


 秋重の一声で、屋敷中から護衛が集まり俺達を囲んでいく。

 いつの間にか、奴と商談していたはずの男の姿も消えていた。


 「其奴等を殺せ!!

 首を取った者には特別報酬を出す!!

 奴等はこの地を穢すモノ、全員殺してしまえ!!」


 そう言って、気絶した千歳を抱えながら秋重は逃亡。

 すぐに後を追いたいが、まずはこの数をどうにかしないといけない。


 「ミタモ、面倒な事をしてくれたな」


 「むしろ好都合じゃよ。

 千歳の力を辿れば、アレの居場所が分かる。

 さっさと片付けて、奴を追う」


 「だそうだ、ミナウセ。

 良かったな、妹は無事みたいだぞ?」


 「うるさい、今は目の前の輩を何とかするぞ」


 ミタモを中心に、俺とミナウセは背中を預け刀を引き抜き護衛達へと向かう。


 「俺達が相手になってやるよ?

 この地を守りたいなら全力で掛かって来い!!」

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