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第四十二話 兄と妹

 ミタモとミナウセと名乗る以前俺を斬った男を、俺と千歳は必死に追っていた。

 しかし、二人の足の速さに俺と並走してやっとの千歳は早々に息が上がっていた。


 「みんなちょっ、待ってよ!!

 私にもちゃんと説明してぇぇ!!」

 

 当然、まだ未熟な彼女に大人二人に付いてこれる訳がなかった。

 彼女の嘆きに、ミタモは呆れ、籠の男も顔は見えないが同じ反応をしているように思える。

 いや、よく見るとミタモは若干息が上がっているような?


 「ぜぇぜぇ………全くこれだから今の若い奴は……」


 「お前も疲れてるじゃないか!?」


 「妾はいいんじゃ!

 とにかく、先を急ぐぞ!」


 「待てミタモ、まずは説明をして欲しい。

 というか、そのミナウセだっけ?

 お前、この前俺を斬った奴だろ?!」


 「あー、面倒じゃなもう。

 というか、お前じゃったのか。

 この間小童を斬ったのは?」


 「そういやそんな事もありましたね」


 「そんな事って……」


 「まぁ良い、そんな事はどうでもいい。

 そうじゃなぁ、なんというかその……」


 この二人揃って俺の扱い酷くね?

 千歳は依然として、少し後ろで息を上げながらゆっくりと近づいてくる。

 うーん、単純に運動不足なだけに見える。

 いやだが、午前中に身体を動かした分の疲労だろうか。


 「で、説明をして欲しい。

 ミタモ、お前は何をしようとしている?」


 「端的に言うならミカの奴が隠れてお役目を果たすどころか、封印を解こうとしているからこれから皆で止めに行くんじゃよ」


 「「は?」」

  

 思わず俺と籠の男の声が揃う。

 

 「待て待て、ミカはとっくに死んでるんだろう?

 千歳の発言からして、結構前に亡くなっている」


 「いや、母上は亡くなっていない。

 今も何処かに隠れて何かをしようとしている。

 兄上が母上の身柄を何処かへ隠し、千歳を養子として育てた事が事実だろう?」


 「ちょっと、私を抜きに話を進めないでよ!!」

  

 「うるさい、お前等!!

 少しは落ち着け、たわけが!!!」



 ひとまず落ち着いた頃に、ようやくミタモが話を切り出した。

 ミタモ曰く、かつてミカはこの地を守る為に大きな力を用いてお役目に臨んだ際、身体に大きな後遺症を背負う事になった。


 一つが記憶を失ったこと、もう一つが彼女の核となる魂に大きな傷が入ったこと。


 魂の傷に関しては、ある程度処置方法があったが記憶を失った事が最も大きな問題となってしまった。

 何故なら、ミカは自分の魂を大きく削って力を行使してしまったということ。


 その結果、彼女は記憶を失った。

 いや抜け殻となった身体に別の新たな魂が彼女の身体に宿ってしまった。

 その魂こそ、本来ミカが封じるべき黒の怪異の魂の一部であった。

  

 黒の怪異の魂の影響を受け、本来怪異としてはあり得ぬ双子の怪異が生まれてしまった。

 それが、目の前の籠男であるミナウセと千歳の養父である秋重殿である。


 そして、現在。

 ミカは己の生死を偽装し、隠れて黒の怪異の復活に向けて暗躍している。

 その結果が、俺達が此処に訪れるまでに見た人の消えた集落達の存在。


 あの集落はミカの力によって住人は皆食われた。

 その可能性が非常に高いというのが、ミタモの見解。


 コレを聞いた千歳は口を手で覆い困惑している様子。

 ミナウセに関しては籠を被っているので反応が読めないが動揺している気がする。


 「なるほど、大体分かった。

 で、俺達でミカのいるであろうところに乗り込んで黒の怪異の復活を阻止する気なのか?」


 「ああ、そうじゃ」


 「無理だろ、流石に……」


 「なっ……いや、妾と小童とそこのミナウセと千歳が居れば上手いこと止められるじゃろ?」

 

 「止められるのかよ?

 中身がどうであれ、仮にも何百年も生きられるだけの力がある怪異なんだろ?

 確かにミタモの力は認めるが……俺達だけじゃ無理だ。

 それに、ミカは生きてるんだろ?

 ミタモは、千歳の実の親を千歳の家族に始末させる気なのか?」


 「仕方なかろう、これ以上犠牲が増えると妾達にとっても非常に厄介な事になる。

 ミナウセとやらも、わかっておるよな?

 人を食った怪異の末路、黒の怪異についてお主がアレをどれほど知ってるかは分からんが……。

 アレが仮に復活してしまえば、妾達では本当に手が負えなくなる程の脅威となる」


 「だから僕は母上を止めに来たんだ。

 元を辿れば、自分達の撒いた種でもある。

 これ以上、母上に罪を重ね続けさせる訳にはいかない」

 

 「どういう意味じゃ?」


 「…………、僕達兄弟はお役目を果たす度に弱っていく母上を助ける為に、母上に人を食わせたんだ。

 その結果、定期的に人を食わせ無ければ禁断症状が起き自ら人の肉を求めるようになる。

 恐らく、集落の一件は母上の禁断症状が関係しているだろう」


 「何?」


 「僕は長らく故郷を離れ、母上の禁断症状を抑える為の方法を探していた。

 でもその間に様々な状況が大きく変わった………。

 気付けば千歳は兄上の養子となり、母上は亡きものとして扱われていた。

 本当死んだのか、この目で確かめる必要もある。

 生きているのかも知れないが、この地を現在治めている兄上……秋重に直接尋ねれば分かるだろうが」


 「お主が聞いたところだアレが素直に答えてくれるとは思えんぞ?

 あの者、妾達を見てかなりの敵意を抱いていたようだからな………」


 「余所者とはいえ、酒倉井は外部との取引が多いが故に余程の者ではない限り無下な扱いはしないはずだ。

 お前等が無礼な事を働いたか、あるいは推測通りに後ろめたい何かを隠しているのか……」


 彼の言葉に俺達は考え込む。

 誰であれ隠し事や後ろめたい事の一つや二つある。

 だが、ミタモの言葉が事実なら千歳の養父である秋重殿はこちらに知られると不味い何かと関わっている。

 千歳を征伐隊というミヤコの組織に送り込んでおきながら、いざ来てみれば警戒した………。


 予想外だった事があるとすれば、俺達二人なのか?

 いや、ただの人間の俺ではなく過去にミカと関わりがあったミタモを警戒したのだろうか?


 過去にミタモとミカがどのような関係であり、どのような関わりがあったのか当事者でない俺達では彼女の発言を辿る事でしか推測出来ない。


 過去の酒倉井とミタモとの関係。

 ミタモは籠の男を見てすぐに千歳の父親であろう黒鼬であるかと尋ねたり……。

 大方、厄六の者達の何らかの関係があったのだろう。

 俺より長命の彼女が何処で誰と関わってるかなど、知り得る訳がないのだから。


 とにかく、今俺達がやるべき事は………。

 

 「例の黒の怪異が封印されている場所に赴くのが先か、この地の長である秋重の元に向かい真相を聞いてがまた動くか………。

 俺達四人ではどちらにしろ判断不足。

 征伐隊もまだ戻ってきていない。

 彼等の帰還を待つか、そのまま強行するか……」


 俺の言葉にミタモは僅かに思考を巡らすと、すぐに視線を返答を伺う千歳等へと向けた。

 

 「……、お主ら兄妹はどうしたい?」


 判断に迷ったのか?

 あるいは彼等の意思を尊重したのか定かではない。

 しかし、彼女の言葉に間もなくして籠の男よりも先に千歳が声を上げたのだった。


 「私、お父さんに……秋重殿に真相を尋ねるのが先だと思います。

 お父さんやそこの人が私の実の兄であること、色々と聞いてからでも遅くはないはずなんです。

 早急に対処が必要であれば、ミタモがすぐにその異変に気付けたはずですから……」


 「分かった。

 で、ミナウセとやらは?」


 「千歳の意思を尊重する。

 だが、僕はお前等の指図は受けない。

 僕の意思で僕は君達と行動を共にする、それだけのことなので、変な勘違いしないで下さいね」


 と、何とも面倒な性格故の返答を返す彼。

 コイツ、やっぱ今すぐ斬るべきではないのか?


 「ならば、秋重の屋敷に乗り込むかの」


 ミタモの言葉にぎりぎり平静を装う

 とにもかくにも俺達の意見はまとまった。

 それからは、ミタモを先頭に俺達は酒倉井の長である秋重の屋敷へと向かう事になる。

 

 「もう少し、素直になれないんですが貴方は?」


 「…………」


 千歳の言葉に返答はない模様。

 しかし、以前に俺達を付けていたのはコイツ。

 千歳の身を案じてはいたのだろう。

 だが、まぁ……。

 最初の方の会った頃の千歳と比べると、流石兄妹。

 ほとんど同じような性格をしている気がする、そんな事を俺は走りながら思っていた。

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