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第三十八話 求めても、求めても

 父親を殺した事は間もなくして、兄上の耳にも届くようになる。

 血眼になって、僕を探したようだが捉えたところで返り討ちにした。

  

 そのまま、僕は少ない仲間を連れて数年は故郷から離れていた。


 父親を殺した事で、僕は怪異として更なる力を得た。

 それだけは事実だった。


 なのに、納得出来ない僕があって何処か心に空いたものがずっと何かが分からなくて……、


 空いた何かを埋めるように、僕は力をより求めていた


 「…………、僕に何の用です、タマモ?」


 「数年ぶりだね、水獺お兄さん?」


 そんなある日、いつかの女狐が再び僕を尋ねてきた。

 

 「全く、僕等を捨てて行方をくらましていた癖に、今度はわざわざ僕の元を訪ねてくるとは。

 一体あなたは何がしたいんです?」


 「うーん、まぁ色々とね。

 それで?お兄さんはずっと探し求めていた父親を殺して、満足したの?」


 「どうでしょうね?

 力は強くなったので、まずまずといったところ。

 問題は、元々解決しなければならなかった事の解決策は見当たらない事ですが……」


 「ふーん、もしかして力を得たのってお役目を何とかしたかったから?

 でも残念、人を殺した時点であなたじゃ無理だよ」


 「でしょうね」


 「そんな君達の為に、私からもう少しばかり手助けをしてあげる?」


 「手助けだと?」


 「あなたのお兄さんには私から話をしてあるの。

 新たな後継者として、千歳を育てる案をね?」


 「………」


 「でもさ、少し面白いことになってたね?

 あなた故郷でその存在を消されているわよ?」


 「何?」


 「そして、ミカちゃんは死んだ。

 ってことになってるの、ほんとは隠れて何か企んでるみたい。

 というか、むしろそっちが本命?」


 母上が死んだ?

 いや、死んだことにして隠れて何かをしている?


 コイツ、一体何を言っている?


 「どういう意味だ?

 それに、千歳はどうなってる?」


 「千歳ちゃんは、秋重ちゃんのところで養子として暮らしているの。

 新たなお役目を担うものとして、もう少ししたらミヤコの征伐隊ってところに入る予定ね」


 女狐はそう言うと、懐から袋を取り出しそこから飴玉を一つ取り出すと、僕の口の中へと無理やり押し込んで話を続けた。


 「そろそろ教えてあげよっか?

 お役目の本当の意味、あの戦いの日にミカちゃんの身に何が起こったのかを………」


 言葉を焦らし、翻弄する女狐に苛立ち放り込まれた飴玉を僕は噛み砕く。


 「さっさと言えよ、タマモ。

 お前は僕に何が言いたい?」


 「そんなに焦らないでよ。

 ここからが良いところなんだからさ?

 でね、ミカちゃんってさ?

 本当は記憶なんて消えてないの。

 ただ、もうあの身体には何もないってだけなんだ」

  

 「何もないだと?」


 「自分の魂の力を代償に黒の怪異の封印を維持する。

 魂っていうのは、まぁ怪異の力の源だね。

 畏れっていう概念は、その魂の力を表すモノ。

 で、ミカちゃんはね?

 多分、過去の戦いで既に自己を形成する魂まで使い果たしてしまったの。

 で、抜け殻となった身体には新たな魂が外部からいつの間にか入り込んでしまった。

 そして今、ミカちゃんとして過ごしているアレはその外から入り込んだ魂の意識ってこと」

 

 「そんな事が何故分かる?」


 「お兄さん達、双子でしょ?

 怪異は普通、双子で生まれないの。

 兄妹とかはあり得るんだけどね、双子は二つの魂が関与しない限りは絶対に生まれないの。

 ミカちゃんって一途だから、不倫はしないだろうし。

 となると、外部の魂が影響した結果双子が生まれた可能性しかないわけ。

 それが、お兄さんと秋重ちゃんってこと。

 姿が違うのも多分それが影響してるのかな?」


 「じゃあ、外から入った魂って何だよ?

 母上は、兄上が実の家族ではないというのか?」


 「血縁は確かにあると思うよ。

 でも、中身は多分違うんじゃない?

 今、ミカちゃんの中には本来封印されているはずの黒の怪異の力の一部が入ってる。

 だから、アレって逆効果だったの。

 お兄さん達がミカちゃんの為に人を食わせてた事。

 アレが全部、黒の怪異が復活する為の贄となっていたんだからさ?」


 何を言っている?

 コイツは何を言っている?


 僕の母上が黒の怪異だと?

 それも、ずっと前から?

 それも、昨日今日という話ではない。

 僕が生まれてから、いや……。

 生まれる前から既に、中身が違っていた?


 「面白いことになりそうだよね、お兄さん?

 一体、これから何が起こるんだろうね?」


 「ふざけるな。

 タマモ、お前は何がしたいんだよ?

 女と言えど事と次第によっては容赦はしない」


 「怖いことを言うね、全く。

 そういうところは父親譲り?」


 「っ!!!」


 感情を刺激され、僕は躊躇わず短刀を振るう。

 しかし、目の前の女狐は容易く刃を指で掴んで見せたのだった。


 「無理だよ、その程度で死ぬ訳ないじゃん?

 強くなっても、所詮はこの程度。

 悪くはないと思うよ、勿論私には劣るけどね?」


 「…………」


 「で、どうする?

 これから先、お兄さんはどちらにしろ死ぬしか選択肢がないんだけどね?

 家族を生かす為に、人を殺した事。

 これだけで、私が今所属してるところの判断じゃ死罪確定なんだよね?

 でもさ、やっぱり死ぬには惜しい逸材」


 「つまり、僕をお前のところへ勧誘しているのか?」


 「そーそー、話が早い。

 お兄さん、自分のところで何体か小さい怪異を匿ってるよね?

 適当な人間を傘下に、彼等の畏れの食事として小さな怪異を育てている。

 面白いことしてるとは思うけど、まぁやっぱり効率は悪いよね?」


 「お前の元につくことで、奴等の育成に繋がると?」


 「そーそ、まぁ私からは適当に仕事を押し付ける感じにはなると思うけど、君一人よりは効率が良いと思う

よ?

 で、どうする?

 私の元につくのか、それともここで死ぬ?」


 「…………、選択の余地もないか。

 不服ではあるが、その方が賢明か………」


 「理解してくれてありがと?

 飴ちゃん、もう一つ食べる?」


 「要らない」


 「残念、それじゃ早速お仕事お願いしようかな?」


 そう言うと何事も無かったかのように、女狐は僕の横を素通りしていく。

 これからどうするか、これからどうなるのか?

 

 ただ、いずれこの決着は付けなくてはならない。


 故郷を守ること、例えどんな形になろうとも……

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