表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/54

第二十話 再会

 私がお役目を与えられた集落では水に乏しい事に加えて土壌が穢れており、当然の如く作物が育ちにくい土地だった。

 土壌の影響で空気が淀み、その影響からか雨もほとんど降らない。

 当然、水の枯れた土は痩せており。

 とても人が住むには厳しい環境下に晒されていた。

 集落の人々曰く、このような状況が数年周期で起こる現象らしい。

 しかし、徐々に周期は短くなり遂には毎年のようにこのような有り様だという。

 そして、土地を逃げようにも彼等にはここ以外に住む場所が存在しないという。


 理由として、他の集落には守り神が存在し異郷の彼等が来ることを拒んでいるからだそう。

 そして、この地に眠るナニカの存在を忌み嫌うが故にそこに住む彼等を特に強く拒む模様。

 

 例の存在こそ、私がお役目を与えられた理由に他ならない

 

 黒の怪異の一部がこの集落に眠っている。

 そして、かの封印を施す為にこの集落を守護するというお役目を私は引き受けたのだが………。


 「守護って言われてもなぁ………」


 集落の外れにある河原に赴き、丸石を積みながら私は今後の事を考えていた。


 お役目自体は多分大丈夫。

 厳しい修行、いや向こうの教え方が上手く私はすぐに力の扱い方も上達していき、水の力なら他の追随を許さないだろうと太鼓判を押されこの地に出向いたからである。


 土地の穢れもだいぶ落ち着いてきた。

 作物の育ちはまだ少し悪いが、この調子なら来年には他の集落とそう変わらないくらいに落ち着く。

 雨が必要なら、私の力で降らせることが出来る。


 狸や猪の類いも、最初は驚いたが今は集落の人々の力を借りてなんとか追い返せる。

 いざとなったら殺す事も躊躇うなと、修行の際には何度も言われたが………。


 「ミカ様、こんなところで何をしているのですか?」 

 

 声の方を振り返ると、野菜の入った籠を持つ子供達が数人居た。


 「ちょっとした散歩です。

 そちらが持ってるのは、今日採れた物ですか?」


 「これもミカ様のお陰です。

 僕らは長からミカ様への贈り物を届けて参りました」


 「そうでしたか。

 わざわざありがとう、これから皆さんも一緒にお昼でもどうですか?」


 「「勿論です!!」」


 子供達が向こうで喜ぶ声が聞こえてくる。

 ちゃんとやれる事は果たしている。

 でも、このまま私がこの地に居続ける事で本当に良いのだろうか?


 子供達の元へと駆け寄る途中で、自分が先程まで積み上げた河原の石をふと見返す。


 僅かに、土地の穢れが残る石達がそこにある………。


 「…………」


 「ミカ様、どうかなさいました?」


 「何でもありません、では行きましょう」


 私は子供達を率いて、我が家へと向かう。

 

 大丈夫、きっとお役目を果たす事は正しい。

 そのはずなんだと、言い聞かせて



 お役目を始めて、どれくらいの年月が過ぎただろう。

 出会った頃は、小さく痩せた子供だった者達が今では天寿を全うし静かに眠っている。

 彼等は子孫を残し、繋ぎ、何代にも渡ってこの土地を守り続けた。


 私もお役目を果たす為に、この地の封印を守り続けたのだが……時代の流れ共に世の流れは戦乱へと向かっていた。


 「最近騒がしくなりましたね、なみと殿」


 そんな、よく晴れたある日のこと。

 私の家を尋ねてきたのは、現在この集落の長としてこの地を治めている泪である。


 私達は家の縁側に並び、熱い茶をすすりながら、近状の世間話を交わしていた

  

 「全く、物騒な世になりましたよ。

 若い者が兵として駆り出され、今や若い男の人手が全く存在しない。

 私のような老いぼれか、まだ幼い子供か、兵としては力不足の女と非力な輩のみ。

 この地が昔のような活気に戻るのは、全くもって何時になることやら………」


 「………、戦況はどうなっているんです?」


 「西の大国が都を跨ぎ、こちらへと攻め入っている模様です。

 一応、都からは、腕の立つ援軍が出されたようですが都はこの戦乱においてあくまで中立。

 どの国にも俗さない上、帝の命令一つでどうにでもなりますでしょう。

 その帝が動かないということは、帝がこの戦乱を望んでいるのか、あるいはこの戦乱に何かを見据えているのか……。

 しかしながら、小さな集落の翁一人程度ではこの大局の意味を理解出来る能などありはしませんよ」


 「帝………」


 帝の名を聞き、かつて私にお役目を与えてくれた日下家を思い出す。

 かの家は、帝に仕える家系。

 この戦乱に何かしらのカタチで関わっているだろうとは思うが末端の集落である私達の方に関係あるのかは分からない。


 そもそも、お役目を与えられてから一度も連絡を交わした記憶がない。

 年に一度、定期連絡として実家やあの家に文を送り付けてはいるが………。

  

 己の怪異としての力が高まった影響で、母はいつの間にか先立ったと連絡が来た。

 先立ったのはいつだったか……。

 既に百年は過ぎただろう。

 日下家に関しては返事はなく、ただお役目を果たしているという連絡を私が一方的にしているだけ。

 

 悔いがあるとすれば、お役目の為に親の葬儀で出向けなかったこと……。

 仕方のないこと、母からはお役目を果たしなさいという旨の言葉が返事の手紙の末に書かれており、私はそれに従ったまでのこと……。


 だから、最期までやり遂げる。

 それが、この悔いを無駄しないのだろうと。

 このお役目に意味があるのだと、私はそれだけを信じるしかなかった。


 でも、本当に正しいのだろうか?


 「ミカ様?」


 ふと、周りに違和感を感じた。

 誰かが居るのだ。

 それも一人や二人じゃない……。


 戦乱が激しくなったことで、一応辺りに結界を張っていたのだが反応はなかった。

 あるいは、結界を解かれたのか?

 

 「泪殿。

 少しばかり、家の奥へと下がっていて貰えますか。

 不粋な客人が足を運んだようですので………」

 

 「っ……、承知しました」


 「…………、そこに隠れている者達。

 姿を現すか、今すぐ立ち去りなさい。

 五つだけ猶予を与えます」

  

 力を込めながら、辺りを警戒する。

 数は……人が……三人。

 怪異が二体、いや三体居る?


 西の方から来た神畏……、敵兵か?


 「一………、二……、三……」

 

 反応はない、動きもない。

 実戦は正直避けたいのだけど………


 「四………」


 「少し落ち着け、ミカ………私だ、私……」


 私の名を呼び、物陰から姿を現したのは一人の女。

 長い黒髪、その上には特徴的な獣の耳……狐?


 半妖?、いやまさか……この人は………


 「もしかして、ミタモなの?」

 

 「ああ、久しぶりじゃなミカ。

 小心者のお前が、まさかの………。

 元気そうで何よりじゃな?

 全く、いきなり殺しに掛かるとは恐れ入ったわ」

  

 そう言って安全が確保されると彼女の合図によって後ろからぞろぞろと現れてくる。

 

 「ミタモ、あなたは今まで何処で何をしていたの?

 急に行方をくらまして、家出までしてさ」


 「あー、まぁ色々あってな。

 そんな事もあったなぁ、あはは

 まぁじゃが今は見廻り組という組織に属し、神畏として各地を転々としておる。

 帝の密命やら、各地の調査等の雑務が主じゃがな?」


 「見廻り組?」


 「済まないな、ミカ様とやら。

 彼女に代わって俺から説明させてもらうよ」


 そう言って、彼女を跳ね除け前に出る人間の青年。

 何処かのらりくらりというか、寝癖も目立つし真面目な印象は受けない存在。

 しかし、彼の存在感は他の者達とは明らかに違う。

 恐らく彼が、見廻り組とやらを率いている存在だろうか?

 

 「自分は、矛鳩九葉ホコハトクヨウと申す者。

 この見廻り組を率いている者です。

 我ら都から動けぬ帝に代わり、その手足となってこの世の平穏を守っている者といった存在です。

 この阿呆女狐、かつてはミカ様の旧友と聞き直接お尋ねした次第ですが、彼女含め、先程は我々一同が失礼を致しました。

 皆に代わって、自分が謝罪を申し上げます」


 「構いません。

 ですが、そのような者達がこの地に何の御用で?

 私のお役目に何か問題が生じたのですか?」


 「いえ、そのようなことではありません。

 ミカ様の活躍は、私共も重々承知しております。

 我々が今回赴いた理由としては、この集落の上流にて硫黄を巡る不当な採掘が起こっている事を察知した事が要因となります。

 アレを放置しておりますと、今後更なる戦乱の世が混迷を極めると予測されており早々に問題の対処をする必要があると判断されました。

 して、此処を我らの仮の拠点として置きたく………」


 「なるほど、採掘でしたか………。

 クヨウさんでしたか。

 この集落の者の安全は保障出来ますか?」


 「ええ、勿論です。

 我が命に代えてでも。

 必ずや、この村の民の安全を保障致します。

 ですからどうか、寛大な処置を」


 「…………、分かりました。

 滞在は許可します。

 泪殿、話は聞いた通りです。

 彼等に寝床の場所を用意してあげて下さい」


 「感謝します、ミカ様……」


 緊張が高まる中での会話、正直今にも泣きそう程に怖気づいていたのは自分。

 しかし、向こうも向こうで同じか?

 いや、私の内心を察してさっきから向こうでミタモは笑いを堪えている。


 困ったことになったなぁ………。

 ミタモ、そういうところは変わってないんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ