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第十七話 求めるモノ

 小童に千歳を任せ、妾は適当に街を彷徨いていた。

 行く宛としては、この街で一番美味いと噂の団子屋か、それとも饅頭屋か……。


 酒のツマミでも求めに、干物屋でも向かおうか。


 この地の酒を求めに多くの人が行き交う影響か、様々な商店が並んでおり妾の選択を悩ませる。


 「うーん、迷うの」


 辺りを見渡しながら街道を歩く。

 人々の活気は満ちているように見えたが、少し注意深く見てみると何処か曇りのような淀みが見えた。

 水の淀みが人々に影響しているのか、あるいは人々の魂そのものが不安に駆られているのか……。


 「これはこれは、ミタモ殿ではありませんか?」


 「あー、お主は確かこの地の長のカネシ……いや秋重アキシゲだったかの……?」


 声を掛けてきたのは、千歳の養父である小太りの男。

 何かの用事で出掛けていたところか。


 「秋重アキシゲで合っております。

 娘の千歳の方が色々と世話になったようですね」


 「今は妾の連れの小童に預けておる。

 征伐隊とやらに属するに辺り、あの程度の剣術ではいつ死んでもおかしくないからの」


 「そうですか、娘の身を案じてくれて何よりです」


 「まぁ、そんな御託は良い。

 お主はここで何をしている?

 気分転換に街の見回りか?」


 「ええ、まぁそんなところです」


 「ほう、結構なことじゃ。

 街を支配するに辺り、人の身であれど畏れを民に振るい権威をかざすのは当然じゃからな」


 「なるほど、そういう見方もあるのですな」


 「そうじゃな。

 まぁ千歳の方はこちらに任せておけ、少々時間は掛かるじゃろうがな」

 

 「………そうですか、ではそちらにお任せしましょう。

 私はコレにて失礼致します」


 そう言って、秋重は妾の横を通り過ぎていく。

 しかし、奴の去り際、妾の方に向けて敵意を放っていたのが気に障る。


 この者、妾達に何か隠しておる。


 確証はない。

 が、妾の勘はそう告げていた。



 「疲れたぁ……」


 千歳はそう呟くと、その場に仰向けで倒れこんだ。

 

 「お前なぁ、まだ休むには早いんじゃ……」


 「もうお昼だよ、2時間くらい動きっぱなしだし」


 「はいはい、分かった分かった」


 休憩にはまだ早い気がしたが、まぁ体力に差があるのは仕方ないか……。

 無理のし過ぎで倒れても困るからな。


 「ねぇ、剣術を誰に習ったの?

 野良上がりにしては、割と基本の型には忠実だし。

 でも、我流特有の荒々しさもあるからさ」


 「剣術を教えてくれた師匠が居たんだよ。

 俺がミヤコに向かう前に亡くなったがな」


 「そうなんだ、何処の流派なの?」

  

 「落葉一刀流オチバイットウリュウ

 師匠が独自に編み出した流派だよ、だから扱えるのはあの人から教えを受けた一握りくらいしか居ない。

 俺を含めて、数えるくらいだが生きて尚扱えるのは俺くらいだろうな」


 「聞いた事がない流派だね。

 でも、立ち振舞いから凄い流派なのは分かる。

 試合形式に寄った正統派な型とは違って、貴方のそれは実戦に特化しているもの」


 「そりゃ、実戦向きの流派だろうよ。

 殺すモノに、美しさもクソも必要ない。

 殺しの剣だからな。

 だから扱った奴等はみんな死んだよ」


 「………、でも遥は殺す為に使ってないでしょ?

 少なくとも、神畏として人々を守る為に……」


 「………、どうだか。

 俺はお前等みたいな酔狂な世の為に人の為に神畏を目指したつもりはないんだ。

 復讐の為に力が必要だったから、だから強さの為に剣を求めた」


 「それでも、こうして私達に力を貸してくれるでしょう二人はさ?」


 「そりゃ、生きてく為に日銭は欲しいからな。

 だから協力する、要は利害関係の一致だ。

 久矛殿は、こちらに奴に対する情報提供を条件に俺達に協力を申し込んだ。

 だから協力をしている、本当にそれだけだよ」


 「ミタモの前に組んでた怪異とも、そうだったの?」


 「……何がだ?」


 「復讐の為に、その為だけに神畏を続けてた?」


 千歳はそう俺に問いかける。

 あの時、あの戦いの前に、アイツが俺に聞いてきたように。


 『ねぇ、遥。

 この旅が終わっても私と神畏を続けたい?』


 この時の問いに、今の俺なら何と答えたのだろう。

 脳裏に過ったかつての面影、今更それを後悔したところで戻る訳がない。


 俺達はただ、お互いに復讐の為に旅を続けた。

 神畏として組んだのも、全ては復讐の為に力を欲したからに過ぎない。


 実際、アイツもそうだった。

 そのはずだと、最期のあの時まで思っていた。


 「………前に組んでた奴も、最初は俺と同じように復讐に明け暮れたような奴だった。

 同じ師の元で、同じ釜の飯を食って、師匠にそいつの事を任されて、成り行きで組むようになった」


 「その方の名前は?」


 「………、野猪睡蓮クイナギスイレン

 師匠が拾った半妖の女で、黒獣の怪異という存在を追う為に神畏となる事を望んでいた奴だった」


 「黒獣の怪異って、確か四年前に倒された厄災の異名を持ったというあの黒獣をですか?」


 「ああ、そうだ。

 俺と似たように、ソイツも実の家族を奴に殺された。

 身寄りを無くして途方に暮れたところを師匠に拾われ、以後神畏となって復讐を果たすべく、その人の元で剣術を習い師匠を実の父親のように慕っていた。

 そんなところに、俺も食うに困って倒れたところを拾われて、いつの間にか神畏として組むようになるくらいには腐れ縁みたいになっていたよ。

 睡蓮とお前はある意味、そういうところでは似ているのかもな」


 「でも、黒獣は今はもう既に………。

 名のある若き神畏の手によって倒されたと、ミヤコの資料には記されていました。

 彼等の所在に関しては、本人達の意思で秘匿されたようですけど。」


 「倒したからな、4年前に俺と睡蓮が。

 その結果、睡蓮は深手を負った俺を助ける為に近くの集落に運んだ結果、そのまま亡くなった。

 俺はこの通り五体満足だったが、向こうは片腕も飛んで内臓の幾つかも失ったみたいだが。

 だから、俺から断ったんだ。

 ただ復讐に明け暮れた俺達を、英雄として名を残すなんてのは恥さらしも良いところだ。

 自分達の自己満足が結果として、世の為、人の為になっただけだからな」


 「っ………」


 「旅の途中までは、アイツも復讐に明け暮れていた。

 でも、いつの日からか復讐はアイツの中でどうでも良かったらしい。

 ただ、楽しく旅をしていたかった。

 復讐なんて忘れて、色々な場所を巡って旅の思い出を師匠に聞かせてやりたかったと………」


 「それじゃあ………何で?

 何で、二人は黒獣と戦ったの?

 どうして、その方を失っても遥は今も神畏を続けているの?」


 「復讐がどうでも良くても、目の前に実の家族を殺した存在が居たんだ。

 だから戦った、それだけの事だ。

 そして俺も同じだよ。

 今もこうして奴が野に放たれている、俺の家族を殺したように、今も誰かを殺しているんだよ、アレは……。

 もう既にやると決めた事だ。

 一度、その半ばで自分の大切な何かを失ったとしても、今まで歩んだ過程で俺が裁き失ったモノを今更否定する事なんて出来はしない。

 復讐の為に、これまで全部を捧げてきたんだ。

 それを今更、止めろなんて出来なかった。

 アイツを失って、余計に今更引くなんて真似も出来ず拍車をかけた。

 やると決めた事を、やり切るまでは俺はこの道をやめるつもりはない」

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