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ぬいぐるみから成り上がり転生したので、仲間も転生させてみせます

妙な静けさに、僕は目を覚ました。


ここは、僕の主だった紗来の家じゃない。ショックだけれど仕方がない。でも、僕は意識はあるし特に問題なさそうだから、もしかして、僕はぬいぐるみとしての新たな人生を始められるのかも__!?という淡い期待を持ちながら自分の体を見る。僕の体は僕の知る重さより遥かに重く、手足も長い。僕の見てきた主とよく似ている。僕は、ぬいぐるみじゃなくて人間になったの___!?


僕は、僕の知らない記憶が頭の中にあることに気づいた。おそらく、この人間が持っていたものだろう。つまり、中身だけが変わったということか……前世で紗来が見ていたアニメのようなものだと考えることにした。そう考えながら、この人間の記憶を確認する。この人間は、アルという名前の男子。4歳で、誕生日は6月24日。今年の9月から学校に通う()()()()()らしい。予定ということは、今はもう行かないこといなったのだろうか。しかし、このアル、めちゃくちゃ何も分かっていない。紗来の家で色々なことを耳にしながら生きてきた僕より頭が悪い気がする。4歳ならせめて自分の名前くらいかけてほしいし、すごく簡単な計算くらいならできてほしかったなあ、と考える。僕が前世で見たアニメだと転生した中身は僕とは違って賢かったり、ぬいぐるみじゃなくて人間だったりしたからアルみたいに頭が悪くても生きていけたのに……


アル自身の最後の記憶は、誰かに長くて丈夫な棒で殴られたシーン。もしかしてアルは、この棒で何度も殴られて天国にいっちゃう、、、、、なんとかというやつになったのか。天国にいっちゃうやつの名前は僕の日常では聞いたことがなかったのでアルの記憶をたどって探してみる。



「はあ、なんでアルを生んでしまったのかしら。アルなんていなくなってしまえばいいのよ。アルがいなかったら私達はきっと今頃幸せだったのよ。今はもうクレアもいなくなったし。ねぇ?ウォーリー。」

「そうかぁ?」

間抜けな返事。

「ウォーリーはなんでいつもアルのことはすぐに肯定してくれないの!?クレアのときはもう少し肯定的だったじゃないの!!!!!」

「ふぅーん。」

ウォーリーはクレアという子に対して肯定的じゃなかったのだろうか。不満げだ。というか、肯定的ってなんだ。

「アルもクレアと同じようにするべきかしら。それとも、、、」

「エミリア、それはだめだ。それだけはやめてくれ。」

「ふん。分かったわよ。じゃああなたは2度とアルの部屋へは行かないで!!!!!」

「……あぁ。」



……なるほどねぇ。僕はエミリアという女性にとても嫌われているっぽい。でも、ウォーリーという男性は僕のエミリアへの嫌われ具合をなんとかしてくれようとしているのかもしれない。そして、クレアって誰だ?僕がぬいぐるみだったときの紗来たちを思い出す。紗来には『おとうと』が一人いて、『お父さん』と『お母さん』がいたな……でもさすがに、エミリアが『お母さん』ということはないか…?いや、ないと信じたい。でも、ウォーリーは『お父さん』というのはあり得る気がする。もしもウォーリーとエミリアが僕の『お母さん』『お父さん』だったとしたら、クレアは、『おとうと』みたいな存在の可能性があるな……



僕の想像とアルの記憶を照らし合わせる。もしクレアが『おとうと』みたいな存在だったら、きっと大事な人として記憶に残っているんだろうな、と思ったからだ。でも、アルの記憶にクレアという名前はあってもそれらしき人は見当たらなかった。じゃあ『おとうと』とかいう関係じゃないのか。そうなったら、ウォーリーとエミリアは誰だ???


あーーーーーもうっ!!!!分からなくなってきた。ひとまず僕の周りを確認しよう。



色々なことを確認してから改めて僕、アルの体を見ると、すごく薄着で、豪華な部屋に反して薄汚れている。しかも、記憶の最後に棒で殴られた跡が残っている。寝転んでいる体を起こす。でも、殴られたせいか、全身が痛い。ぬいぐるみ時代に感じたことのないお腹のあたりがぽっかり穴が空いてる感覚。音も鳴っている。これはもしかして、紗来がよくいっていた、

「お腹すいたーー!!!!!!」

ということなのかもしれない。なにかこの感覚を満たせそうなものを探す。


部屋の中には僕が今寝っ転がっていた場所と、そこから少し先にある、どあ?があって、僕の寝っ転がっている場所の近くは、外が見えるようになっていた。


この感覚をどうにかしようと思ってどあに向かうために体を起こして歩こうとする。まだ痛みはかなり残っているが少し慣れてきた。歩こうと寝っ転がっていた場所から降りる。


「よっ…と。」


一瞬フラッとしたがアルの力のお陰で支えられた。転んでしまいそうになりながらこの新鮮な感覚を味わいつつそっと歩き進める。どあの前まで来た。どあの出っ張りに手をかけようとするが、届かない。アルぅぅぅぅぅぅぅ!!!


「もぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!おなかがどうにかなっちゃうよぉ...」


どあの出っ張りにはジャラジャラしたものがぐるぐる巻き付けられていて、僕の身長が足りていたとしてもジャラジャラのせいで開けられない。最悪だ。僕かわいそう。


仕方なく戻っていると、遠くから足音が聞こえてきた。僕は慌てて寝っ転がっていた場所に戻る。


「アルはどうしようかしら。もしもまだ生きていたら私はどうすればいいのよ!!!!!!!!」


僕が聞きたいよ。この感じは多分エミリアだ。


「俺が少し離れたところにある森に連れて行くよ。」

「ちゃんと捨ててきなさいよ!!!!!!!捨てるときに一言でも話したら許さないから!!!!!もしも捨てずに隠してたら、その時はどうなるか分かるわよね!?」

「あ、ああ。」


僕、エミリアに嫌われてるなぁ。でも、そんな事言うくらいなら一緒についていけばいいのに。


「私が同行いたしましょうか。」


聞いたことのない声。


「それはなりませんわ!!!!!ふざけないで!!!!!私以外の女と2人きりで歩いてはなりませんもの!!!」


うわぁ、エミリアすんごいめんどくさい。


ガチャ。ガチャガチャ...バン!!


ウォーリーとエミリアたちがはいってきた。

紗来が年齢の割にドロドロしたアニメが好きで見ていたのが功を奏しました。

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