Episode5 Adventurer Exam-1
「ふぁ〜あ」
眠い。一体なぜこんなに眠いのか。理由は簡単だ。良いホテルのチェックインがとれなかったからだ。というのも、何でかというと……
ーーー
悪魔を倒してしばらく歩いていると、日が暮れてきたためホテルでも探してそこで寝ようかと思ったのだが、そこで聞かれたのが
「身分の証明できるものはお持ちですか?」
という質問。当然っちゃ当然なのだが、蓮には身分証明書なんて持ってないわけで、それで暫くいろんなホテルを回ったけど結局どこもチェックインできなくて、ここのカプセルホテルに泊まったのだ。
「やっぱり僕のせいだよね。ごめん、蒼ちゃん……」
「いやいや。仕方ないよ。でも、このままだと困るよね……」
例えば、タクシーに乗ったりするのにもとにかくいろんなところで身分証明書は必須だ。このまま続けていくと、疲労がたまるのも事実だ。早いとこ手をうたないと……
「そうだ!『アドベンチャー制度』を使おう!」
「あどべんちゃあせいど?」
「そう。実は、最近各地を転々と冒険する人たちが増えてきてるんだ。」
「へー。」
「でも、そういう人って住所とか定職とかを持たないから、通販もできないし、身分証明書もないわけ。」
「それじゃあどうするの?」
「そういうときに使えるのが『アドベンチャー制度』。書類を提出して面接を受けて、実技試験を受ければ「級」がもらえる。主に『戦闘』『探索・調査』『素材採取』の3部門で、「級」は、LANK DからLANK Sまである。LANK Sは、かなり上位の人しかとれなくて、特に『戦闘』はアドベンチャー登録を受けた人でも1%にも満たないといわれてるくらいやばい人たちなんだ。」
「へぇ。でも、なんで蒼ちゃんはそんなに詳しいの?」
「あの部隊に所属するには、全部門でLANK Aをとることが条件なんだ。その時発行された身分証『冒険者登録書』も持っているよ。」
「へぇ〜。」
「ちょっと戻ったらそのアドベンチャー制度を運営している組織、『世界総合組合 冒険庁』のCharon支部があるはずだから、そこに向かおう。」
「れっつごーごー!」
ー移動ー
「わぁ……大きい建物……」
蓮が目を輝かせている。田舎者が都会を初めて見るみたいな反応だなぁ。
「まぁ、『戦闘』の実技試験もここで行われているからね。じゃあ、早速入ろうか。」
冒険者登録は2階で行われていた。
「こんにちは〜。」
「こんにちは。どのような要件でしょうか?」
「この人の冒険者登録に来ました〜。」
「こ、こんにちは〜。」
窓口の人は、蓮を見て、書類を取り出した。
「ではここに、情報をお書き下さい。」MPなどが分からなかったら、係員にお申し付け下さい。
Name:蓮
Age:9
HP:20/20
MP:85/85
ATK:5
ATK:1
DEF:2
stamina:18
mental:10
IQ:30
speed:2.5
MPはかなり高く、IQもこの年齢にしては高め。その他は一般的な9歳男児といったところだろうか。てか、俺のHPとかATKとかって9歳レベルなんだな……
「そういえば、出身地とか聞かれたりしないんだね。」
「人が冒険者になる理由はいろいろあるからね。だから、何歳でも登録できるし、体重や身長の制限も無い。」
「へー。」
そして、選んだ部門を見てみると……どうやら、「調査・探索」のようだった。
「動植物の知識とか無いし、あんまり戦闘は得意じゃないので……」
なるほど。自分なりに考えた結果というわけか。
実際に、「調査・探索」コースを選ぶ人は多い。というのも、一度に複数の級を受験できるうえ、Dランクは小学生でもとれると言われているほど簡単なのである。ちなみに、最高難易度のSは、地学の専門家でも難しいレベルなうえ、運要素も絡むようだ。つまり、ピンキリな試験なのである。実際Aをとるときも、地学の専門知識が必要な問題がいくつかあった。まぁ、それはおいておいて……
「まぁ、とりあえず『面接』だね。」
「冒険者」は、コミュ力が大事である。なぜなら、コミュ力が無いと情報伝達、協力・連携に大きく影響するからである。まぁ、他にも理由はあるのだが……
そこで、蓮の持っているブザーが鳴った。
「僕の番だ。行かなきゃ。じゃ、また後でね!蒼ちゃん!」
☆☆☆
「それでは、お座り下さい。」
「ありがとうございます。」
(この『面接』は、正直に。でも自分の長所を伝え、なにより真面目にすぐに質門のアンサーとなる答えをしっかりと答えないといけないな。)
「自己紹介をお願いします。」
「はい。私は蓮、9歳です。魔力は人より多いです。あと、ものを理解するのが得意です。よろしくお願いします。」
「ほう。」
(好印象を与えられたかな?)
「では、なぜあなたはこの部門を選択したのですか?」
(ここは、自分の長所と関連させて言うべきだな……あと嘘はつかない方が良いだろう。)
「私は、地図を理解するのが得意です。また、隅々まで見ることもできます。細かいものは見落とさない自信があります。」
「そうですか。では、簡単なテストをしましょう。」
(え!?)
☆☆☆
(そういえば、長所を見栄張って言った友達が実際にその長所が活かせるかのテストされて、面接落ちてたなぁ。蓮はそんなことしないと思うけど。)
蓮の判断は正しかったようである。
☆☆☆
「では、この地図を見て下さい。」
「はい。」
渡されたのは、どこかの地図だった。うーん。どうやら山がちの地形と平原、海と砂浜に、ここに書いてあるのは観光名所?像がいろんなところに建ってあるのか。
そして、一枚の写真が渡された。
「この写真の場所がどこかわかりますか?」
なるほど、写真の特徴と地図の特徴を照らし合わせて場所を当てろということか。なんかそういうゲームありそうだなぁ。
(ここは……遠くに山が見えるし、前のほうが砂浜だから、おそらく砂浜と平原の間だろう。そして、ここになにかあるな。これは……さっきの地図にたくさんあった像か。うーん。でもまだ絞り込めない……いや。でもここに『11丁目』の文字があるから……)
「ここです!」
そう言って、11丁目の像が見える、砂浜近くの平原の場所を指さした。
「素晴らしい。」
お。どうやら正解したみたいだ。
「これだけ素晴らしい頭脳であれば、『採取部門』も受けてみてはどうですか?」
「え?」
急すぎる提案だなぁ。
「いやいや……私なんて動植物の知識も無いですし……」
「知識なんていりませんよ。」
そう言って、今度は図鑑と葉っぱを5枚出した。
「この57ページと同じ植物を当てて下さい。」
「えーっと……」
(まず、この葉の特徴として、網状脈だから、5番は絶対にない。そして、大きさが大体5cm程度だから、3番も違う。裏側には黒い斑点があるらしいけど……)
そして、裏返すと1番、2番、4番のなかで黒い斑点があるのは2番だけだった。
「これですね?」
そう言って、2番目の葉を持ち上げた。
「正解です。ほら?採取部門でも問題無さそうでしょ?」
「いや、でも現場の知識とかそういうのも……」
「そんなのは図鑑見ればわかりますし、植物の名前が分からなくても画像検索なり何なりで解決できます。別に知識なんて詰め込む必要無いんですよ。」
そう言って、面接官はこういった。
「『採取』受けますか?」
「はい!」
「良い返事ですね。面接は合格です。」
え?そんな葉は実在しないって?ジャンル見て下さい。ファンタジーですよ?
本当はこれだけで終わらせたかったんですけど、面接が想定以上に長い描写になってしまったため、実技試験は次回に持ち越しとなります。ちなみに、この時の蒼ちゃんの様子は、後で閑話として出そうかなあと思っています。