表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート4月〜4回目

かんしゃく玉

作者: たかさば

 私には、欲してやまないモノがある。


 小さな豆状のやつ。

 シブい色をした丸っこいやつ。

 薄汚れた小さな袋入りのやつ。

 地面に叩きつけてあそぶやつ。

 でかい音を出してはじけるやつ。

 男子がよく駄菓子屋で買ってたやつ。


 ……かんしゃく玉である!


 あの、ハデな音が魅力的だった。

 あの、独特のニオイが好きだった。


 食いしん坊だった私は、50円で売られていたかんしゃく玉を買うことがほとんどなかった。


 数回投げたらおしまいの儚いアイテムよりも、砂糖でジャリジャリしている裸ドーナツや毒々しいチューブ入りのジュース、プリンカップですくうせんべいにでっかいアメ玉、なかなか口の中で溶けないチョコレートの方が断然魅力的だったからだ。


 たまに太っ腹な男子に恵んでもらって、1つ2つ投げた記憶だけがいつまでも……残っている。


 娘と駄菓子屋に行くようになった頃、かんしゃく玉の事を思い出した。機会があれば買っても良いなと思いつつ、なかなか出会えぬまま時は流れ…販売が終了していた事を知った。


 ……もう手に入らない、そう思うと俄然欲しくなる。


 手作りする方法があるとの情報を得て、息子と自由研究がてらチャレンジしてみるも…私の知っているモノではない感がスゴイ。


 私の求めているものは、ハンマーで叩いて破裂させるものではなく…、地面に叩きつけても爆発しないでドブに転がって落っこちてガックリしたり、ポケットの中でバラバラになっててしこたま怒られたり、いつの間にかしけって全く使えなくなっていて憤慨するような…不出来で脆くて、でもわりかしスカッとする、チープなくせに魅力的なやつなのだ……。


 全く売ってないわけではないらしいが、どうにもチャンスが巡って来ないというか、大量にほしいわけでもないというか、ちょっとだけ楽しめればばんばんざいというか。


 ああ、なぜ私は子供の頃にもっと遊んでおかなかったのだ。なんで駄菓子ばかり食べてぶくぶく肥えてしまったのだ。くそう、悔やんでも悔やみきれない……。


 とはいえ、いい大人なので過去を振り返ってグジグジ言ったりするのも見苦しい。ましてや苛立ちを撒き散らすとか…かんしゃく玉を望んで癇癪をおこすのもね、……フフフ。


 いつかどこかで、古いおもちゃ屋さんとか科学者の先生、コレクターなんかと知り合う可能性も無きにしもあらずだ。


 のんびりチャンスを待ち構え、今日も平凡に穏やかに…幼い日の思い出をたどる私なのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  郷愁をそそられる一篇でした。 火薬の匂い、私も大好きです。足が遅いのに運動会が好きだったのは火薬の匂いを嗅ぎたかったからです。  また駄菓子屋に行ってみたいですねえ。
[良い点] 「何か違う感」に共感してしまう作品でした。 今のかんしゃく玉の方がおそらく安全面などはずっと優れているのでしょうが、 だからこそ「これじゃない」「物足りない」という感情が生まれてしまうので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ