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ヤンラブっ! ~ヤンデレ美少女達を洗脳して甘やかされながらイチャラブ~  作者: 風地星花
プロローグ~氷見 六花 (ひみ りっか)編
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1話:元気っ娘アイドル書紀委員長を放課後デートに誘ったらチョーク食らって痛い

「すみませんあなたとお付き合いできません」

「ちげーーよっ!!!」


 僕、皆杓かいじゃく 大八ひろやの「ちょっと放課後付き合って欲しいんだけど……」の言葉にめちゃくちゃ嫌そうな顔して断ってきたのは、我が悠遠学園のアイドル氷見ひみ 六花りっか


「あれぇ違うの?そんな猛獣の様な厭らしい目をしてるからてっきり。てへぺろ☆」


 舌をだしておふざけたっぷりにこちらを弄ってくる。

 彼女は冷たい印象を与える名前とは裏腹に、誰に対しても明るく優しいクラスの学級委員長だ。

 黒髪ショートカットの童顔美少女がこてりと首を横に傾ける。くっ可愛い。


「じゃあなぁに? 用事なら桃寧先輩に言えばいいんじゃないの。あの人かいちゃんの頼みなら何でも聞くと思うんだけど」

「いやぁ、桃寧先輩じゃダメなんだよ」

「お前じゃないとダメ的な?」

「的な」


 仕方ないなぁという目線とどや顔で僕を上からニヤニヤと見つめる。

 腕を組んで割かし豊満な胸を持ち上げた。えっっろ。


 あ、いや、実際の身長は僕の方が高いぞ。……5㎝ぐらい……。


「ハーゲン一杯」

「……わかった」

「乗った!」


 丁度よくチャイムが鳴り。長身美女の羽咋はくい先生が教室に入ってくる。わいわいがやがやしていた教室が椅子を引く音を経て静かになり、委員長の号令がかかる。


「きりーつ、れい、ハーゲン!」


 お前頭ん中ダッツかよ。


「……はい?」


 怪訝な目で見つめる羽咋先生。

 クラスメイトも皆、普段の癖で着席した後、何事かと六花を見つめ次第に笑いが広がる。

 真っ赤な顔をして慌てふためく学園のアイドル氷見六花の反応を見て、更に笑いが広がった。


「あ、あわわわわわわわ」

「六花ぁ。そんなにアイス食べたいの?放課後私に奢ってよ」

「いやそこは奢ってあげるんじゃないのか?」


 僕の前の席に座っていたショートカット茶髪ギャル、観音下かながそ あいに、思わずツッコミをいれてしまった。

 ぱんぱん、と乾いた拍手が鳴る。


「ほらもう静かにしろ!授業始めるぞ」


 はーい、という声がクラスメイトから上がり、一応は授業が始まったが皆、六花を弄りたそうにこちらをチラチラと見てくる。悲しいかな、学生の性だ。

 本日二度目の仕方ないなぁ。という顔をしたのは愛だ。未だ熱さの引かない親友をちらりと見やり。


「しゃーねーなあ。はーい皆さんちゅーもく!」


 愛はガタリと立ち上がるとすしざんまい、といったポーズでクラスの視線を集めた。

 愛が何をしようとするか察した羽咋先生は綺麗な黒髪ポニテを揺らして彼女を止めようとする


「あ、こら、勝手にスキルを使うんじゃない!」

「『慈愛』」


 先生の言葉虚しく愛は目を閉じスキルを発現した。

 彼女の周りに温かくも輝かしい黄金の光が生み出され、増えて、次第にクラス中を優しく包み込む。

 数秒の後、教室は普段の形を取り戻した。

 心なしかクラスメイトが六花を見る目が温かい目になったように見える。


「そうですよね。氷見さんだってアイス食べたくなる時だってありますよね」

「あんまりいじっちゃ可哀そうだわ」

「そうだな。今日バニラ味買ってやろうぜ」


 失礼。やっぱりまだからかいが残ってた。生温かい目であった。

 六花はガツンと机にうづくまると声にならない声をあげていた。KOである。


 とはいえ流石にアブスキル。クラスメイト達はそれ以上六花に目を向けることはなく、落ち着いた様子で黒板に目を向け。固まった。


 なぜならそこには鬼がいたからだ。


「ぼがぁあ??!」


 およそ女性らしくない叫び声をあげる愛。彼女の机の上にチョークがコツンと落ちた。彼女の額にはかわいらしい赤丸が浮かんでいる。


「観音下さん、授業が終わったら、職員室に来なさい」

「先生だって今スキル使って……どりゃあああ捕まてやら……ほげぇええええ?!!」


 情け容赦のないチョーク投げがもう一度愛を襲った。

 およそ女性らしくない叫び声をあげて彼女は両手でチョークを捕まえようとするも、あり得ん軌道でくねくね曲がるチョークは確実に愛の額を捉えた。

 

「……ふえぇぇぇぇ……」


 涙目になり着席する茶髪ギャル。合掌。



 そんなどこにでもありそうで、この学園にしかない日常はスキルによって彩られていた。


 スキル。それは第二次世界大戦後、日本人の女性にしか発現しない特殊な先天的能力。1万人に1人にしか発現せず、その九分九厘は日常生活にも役立たないような微弱なものだ。

しかしスキルは特殊能力が本質ではない、とするその筋の学者がほとんどだ。まずスキルを持って生まれた女性は例外なく美しい。知性や運動能力も一般人の比ではなく、スポーツの類の新記録はスキル持ちが全て塗り替えた。


 女性の記録?いいや、男性の記録だ。美しい肌、ルックス、筋肉がついてなさそうな軟腕からどうやって出力されるのか。永遠の疑問である。

 並みいる世界の超一流選手がスキル持ちに単純な腕相相撲では負け、陸上では負け、野球サッカーバスケテニスバレーetcetc……。

 勉学では日本人(スキル持ち)女性が新たな学説を生み出した。解明した。というのが日常茶飯事である。


 ”女性が男性に腕力で勝てるわけがない。”その常識をここ70年で覆し、

 ”男性が(スキル持ちの)女性にどんな分野でも勝てるわけがない。”という新たな常識はここ数十年で当たり前となっている。


「はぁぁぁぁ……」


 僕は超人的な二人の攻防に思わず長い溜息をついた。


 極々極々まれにスキル持ちの中でも強力なスキルを持って生まれる才女の中の才女がいる。

 先ほど愛が使った「慈愛」はその一つで、アブノーマルスキル、略してアブスキルと言われている。「慈愛」を使うと犯罪者はたちまち真人間になってしまうという凄いアブスキルなんだけど、普通の人間に使っても、先ほどのようにそこまで威力は発揮する訳でもない。愛はスキルを事あるごとに乱発するものだから、僕的にはそんなに凄いスキルだっけ?っと有難味が薄れている。スキルは使う人使われる人によって価値が変わってしまうのだ。


まぁ、アブスキル持ちなんて世界に(というかスキル持ちは日本人だけなので実質日本に)10人もいないのだが。そしてそのアブスキル持ちは全員飛びぬけた美少女、美人としてとんでもない有名人だ。メディアに引っ張りだこ。何かあればネットがざわつく。


 ここは悠遠学園。創立70周年のスキル持ちの才媛才女が集まる美少女動物園。

 そんな学園で、僕は何の因果か唯一の一般人としてこの学園に入学することになってしまったのだ。やれやれだぜ。

 

「ここに入れてうれしいくせに」


 愛と羽咋先生とのやりとりを見て、いつの間にか復活した六花が僕の耳元にぼそりとささやいた。普段は見せない艶やかな声色に内心どきっとして彼女を見た。


 はい嬉しいです。美人美少女ばっかりに囲まれて嬉しくないわけがないです。

 ちなみに学園の男女比は半々です。男性は超上流階級のお坊ちゃまばっかりです。この学園の男は玉の輿狙いですね、はい。



「ふっふっふ」


 六花は悪戯っぽい笑顔を浮かべ、自身のノートを指さした。


『放課後はどこに行けばいいの?』


 僕は慌てて自分のノートに殴り書きした。この学園は隣同士の席が小学校のようにくっついているのである。その昔許嫁制度が残っていて、隣席を許嫁にする時代の風習が伝統となって残っているらしい。そのため女性に合わせて男性の入学者数が決まり、3カ月ごとに席替をすることができる。

 ただし、恋仲となった場合は二人の同意で席替えを拒否できる。勿論イチャイチャしたいからである。死ねリア充どもが。


『旧校舎の2階、視聴覚室で。』

『字、下手すぎ(笑)』

『う・る・さ・い』

『なんの話?』

『それを言えないから旧校舎なんだろが』

『ちょっとだけ!さきっちょだけ!』

『おいやめろ』


 ふぅむ。と柔らかそうなかわいらしい唇に手を当て。少し悩むようなそぶりを見せる六花。なにやら長文を書いている。

 六花は少し不安げにごちらをちらりと見て、ノートを見せた。


『金も顔も地位も性格も何もかもまともなものを持っていない貴方のために、この私がわざわざ時間を作って「二人きりで」「防音の」「夏休み中に取り壊しが決まっていて」「誰も来ないことが分かり切っている」旧校舎の視聴覚室でお会いする訳なのですが。』


 なんだこのお嬢様文章は。前半でブチ切れ金剛するつもりが、なにも言えねぇ。。。六花はとんとんと、とある文を叩いた。


『なんの話?』 

『だから言えないんだってば!』

『ま、いいけど』


 あっさりとOKが出て驚いた。そんな気はなかったけど、あれ、これ、もしかしてワンちゃんあるのでは?押し倒せばいけるのでは?恋人になって3年間六花を隣の席独占ひゃっほう!


 というピンクな妄想のままに期待を込めて六花を見る。


「ボケナスが」


 ゴミを見るような目で罵られました。ありがとうございます。


「いやでもマジでお前に告白するとかそう言うんじゃないからさ」

「それはそれでムカつくなぁ。ま、かいちゃんに押し倒されても余裕で蹴り倒せるから別にいいけど」

「アブスキル使い様は余裕ですねぇ。六花、お前本当に押し倒してやろうか」

「君、普通のスキル使いにも何にも勝てないのになんでそんなに上から目線なの?」


 売り言葉に買い言葉。ヒートアップする僕らの(凄まじくくだらない)喧嘩に終止符を打ったのは


「うぎゃあああああああ」

「いたああああああああ」


「そうかそうか。私の歴史の授業はそんなにつまらないか。ぐすっ」


 涙目になっていた美人教師の必殺チョーク投げであった。

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