長時間、風呂に入る意味
ずっと、カラスの行水で人生をやってきた。
たまに気まぐれで長風呂になることはあったけど、ほとんどの日が、世間の平均よりもあまりに短い時間で湯船から立ち上がっていたように思う。
何事にもせっかちな自分だったが、このところある理由があって、長風呂をするようになった。
そして、それとはまったく関係のない恩恵を受けることになって、かなりの人には当たり前なのだが、僕のようなせっかちさで人生の前半を過ごしている方に、風呂での疲労抜き効果を伝えたいと思った次第である。
何度か書いてきたが、僕の今の仕事は主に山荘の木々の剪定で、あきれるほど背が高い高木から、広い敷地の、長すぎる生け垣を剪定バリカンで刈っていく作業まで、たいていが重めの機材を使って労働する。
CMなどでは、「ほら! こ〜んなに簡単で軽い!!」と主婦が高枝バリカンを振り回していたりするが、もちろんそんな現実は存在しない。
1〜2分ならともかく、8時間の労働時間のうち、3時間も高枝バリカンを動かしていれば、まず腕が上がらなくなる。
夜は腕がパンパンで、次の日はバキバキ、剪定バサミでも太い枝を何度も切り落とすので、指の関節も普通じゃない、昔のロボットみたいなぎこちない動きをするようになる。
「まあこんな仕事だ。職業病だろう」と諦めていた。
きつい土木作業もあるが、比較的軽度な仕事の日もあるので、身体が壊れる、というほどでもない。
箸を持つ手がふるえるようなこともあるが、それにも慣れたころ。
長風呂をするようになって、妙に腕が軽くなっていることに気づいた。
始めは、それが風呂の疲労抜き効果だと分からなくて、「今日は調子がいいんだろう」くらいに思っていたのだ。
それが何度か続いて、やっと思い当たった。
「ああそうか。長く湯に使って血行を良くすると、これほど肉体疲労が取れるのか」と。
僕の場合だと、40度のお湯で約20分である。…きっちり時間を計ると、それほどでもなかった…
女性がよくやる(のだろうか?)半身浴がベストだろうが、まだ四十代の歳で健康体だと、心臓をお湯につけておいてもそれほどの負担はない。
それよりも、精神的リラックス効果は人それぞれだろうが、肉体的回復効果が、すごいのである。
僕の仕事柄、ということになるが、腕と指が常時バキバキで、帰りのスーパーで500mlのペットボトルを買って袋に入れるのも大変だったのが、翌日には「ちょっと疲れが残ってるかな」ぐらいに回復しているのだ。
…まあ、それだけの話である。
医食同源ーー若い頃から食べ物に(それなりに)気を使うのは、将来病気、病院でお金を使わなくて済むことにつながる。(国の医療費負担軽減への貢献にもなる。もちろんどんなケースにも例外はあるが、僕の親族は「結局、健康が一番のお金持ち」と言っていた)
そして長風呂ーーまあ今の時代はホットヨガなんかもあるだろうが、とにかく一日のうちリラックスして血行を良くする時間をいくらか作るだけで、驚くほど翌日身体は楽になる。
もちろん現代は、時間がいくらあっても足りない仕事をしている人も多いだろうが、そんな生き方ではどのみち何かが破綻するものだと思う。
癒やされる音楽を聞きながら、のんびりと湯に浸かる。
大抵の日にそういう時間が持てる生き方が、世間に対して見栄をはるためにお金を稼いで浪費するよりも、まあ幸せなんじゃないかと思うのだ。
※いくらかの世間の人への、極めて勝手な見解を含んでいます。