A級冒険者には大体勝てる!!
目の前には騎士の格好をした一人の青年。
「それではーー始め!!」
メイドさんの掛け声と共に勝負が始まる。
おそらく俺のスキルからして、相手をリア充と認識するほど俺の力は強くなる。
そのために、相手を観察してみる。
騎士のような格好をしていることから、職業としては公務員に近いのかもしれん。そうなると安定した収入を得ているため、結構モテるのだろう。
それに髪もしっかりとしていて清潔感もある。身だしなみに気をつかっている証拠だ。
考察するほど体の奥底から力が湧いてくる。
どこまで戦えるか分からないが、ここで負けると多分家無しになってしまう。すまんが勝たせてもらうぞ!!
◇◆◇◆
勝負は一瞬でついた。
「弱いな……」
なんてことはなかった。まさかここまでの差があるなんて……
「やはりこいつは出来損ないですよ」
俺は瞬殺されてしまった。
だって
「あの騎士ブサイクなんだもん!!!!!!!!!!」
確かに安定した収入はモテるだろう。
だがあいつはブサイクだ!!
ブサイクがモテるはずないだろ(偏見)!!
「やはり家は栞継がせるか。そうなるとこいつは邪魔だな」
「五十嵐様。今しがた、あの方が到着されました」
「ふむ。ちょうどいいな。呼んでこい」
「かしこまりました」
ツッコム暇もなく、淡々とことが進んでいく。
しばらく地面の蟻さんと戯れていると、強面ジジイよりも大柄な男がやってきた。
「あれが例の出来損ないですか?」
「ああ。お前のスキルからしてちょうどいいと思ってな」
「なるほど」
話を終え、先程来たゴリラが俺の前に立つ。
「よぉ小僧。お前もこんな場所に生まれて災難だったな」
「あのー。俺はこの後どうなっちゃうんですか」
「ん?あー、まあ俺とこのまま戦う流れだな」
このゴリラと!!
「すみません。許して下さい。何でもしますから」
「ぷっ、命乞いか?ダッセェ野郎だなぁ」
「俺はさっきそこの騎士に負けましたよ?どうしてまだ戦う必要があるんですか?」
「お前ホントに何も知らねーんだな。
俺のスキルは殺した数だけ力が強くなるって代物だ。普段は魔物や動物で賄っちゃーいるが、人間が一番効率がいいんだ」
「へ、へー。ど、どうして急にそんなスキルの説明を?」
「別に意味はねーよ。
ただ俺とお前が今から戦闘訓練をし、偶然お前が不慮の事故で逝っちまうかもしれねーだけの話だ」
あーーーーーーー死んだ^_^
「マジ、ホント、ガチで許して下さい」
「おいおい、男のくせにびびってんのか?」
はぁ?こいつ何言ってんだ?ノリが昭和の老害と同じじゃねーか。
「死ねやー!!」
「ひーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
ゴリラがすごいスピードで追いかけてくる。
実は、俺はこの世界に来てからかなり身体能力が上がり、陸上選手並みの速度で走れるようになっているが、このゴリラは猪並みの速さで突進してくる。
「ちょこまか逃げてんじゃねーーぞ!!」
「逃げるに決まってんだろ!!筋肉が脳みそにまで侵食されてんじゃねーのか!!!!!!」
「俺はトーキョー大学卒だ」
ふぇ!!お前そんな頭いいの!!てかここにも大学あるんだ
何とか逃げ回り、叫び声をあげ助けを求めるも誰もこない。
多分この世界は前世に比べて命の価値基準が低いのだ。
外で俺の姿を見た人も、まるでよくあることかのように通りすぎて行く。
そしてついに追い込まれてしまう。
「ふぅ…ふぅ…ゴホッ」
「梃子摺らせやがって」
転生してすぐ死ぬとか聞いてないんですけど。
「お前みたいな無価値な人間と違って俺は忙しいんだよ。この後待たせてる女の場所に行かなきゃならねーんだ。帰ってたらお前のせいだぞ?」
「は?」
「お?どうした?」
「お前……今……なんつった?」
「はははははは。これは傑作だな。まさかキレちまうとは。まさか自分に価値があるなんて思ーー」
「てめぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ彼女持ちかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
『リアジュウ度20%突破を確認』
その瞬間世界の時が止まる。
溢れ出る力の奔流。
その力に気付いたのはこの世界でも一握りであった。
ある者は歓喜し、ある者は興味を抱き、ある者は恐怖を示した。
そして世界が動き始めた時には全てが終わっていた。
「ワンパンしちまったぜ」
俺はゴリラを一発KOで倒していた。
「な!!」
これにはジジイもびっくり仰天。
「そんな」
俺をボコボコにした騎士も青ざめる。
「まさか!!」
メイドさんも驚きのあまり口元を手で抑える。
「こりゃあ惚れられたな」
全く、俺はなんて罪作りな男なんだ。
「A級冒険者を一撃で……」
「ば、化け物」
「どういうことだ!!さっきの騎士との闘いで何故力を」
「何か条件があるのでは?」
「クッ、それが分かれば苦労しないものを」
ジジイとメイドがヒソヒソと喋っている。
「このまま追い出してしまえば」
「バカか!!A級を倒すほどだぞ!!そんな力で復讐されたらたまったものではない!!」
「で、では……」
「手元に置くしかあるまい」
どうやら話し合いは終わったようで、ジジイがこっちに歩いてくる。
「でき……晴樹よ。これからも五十嵐のために精進しろ」
ハッ!!完全に俺の力にビビってるの丸分かりじゃん。
これはもう高圧的に出るしかないな
「へへっ、もちろんでゲス」
俺は用心深い男。
これでこっそり暗殺なんてオチもゴメンだしな。
従順なフリをしておくのが一番だ。
「これからお前には学園に入るまで自由にさせる。何か要望があるなら言え、極力叶えてやる」
頭の中で様々な欲望が渦巻く。
女か?やはり女を頼むべきか?
いや!!女しか有り得ない!!
だが待てよ、これで気持ち悪がられたら俺の心が折れてしまうぞ?
だがいちいち仲良くなる時間があれば俺はアニメや漫画、ゲームがしたいしなー。
……
よし!!
「ゴロゴロニート生活させて下さい」
次回
俺に彼女が出来ない理由とは
完