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おわりに:異世界恋愛スキーが『高慢と偏見』を読んでびっくりしたポイント

 以下、読んでてびっくりしたポイントをまとめて〆たいと思います。


①使用人に関する記述が少ない!

 なろうの異世界恋愛、特に女性主人公物だと、わりと侍女やメイドがサブキャラとして活躍することが多いかと思います。

 それがこの作品では、ほんとに出てこなくて、この五人姉妹が家事をしている風でもないし、どういうことなんだろうと思っていたら、終盤になってベネット家の執事や家政婦のヒル夫人が出てきたり、リディアが駆け落ちしたことが召使いたちにバレてないだろうかと心配していたりして逆にびっくりしました。

 『高慢と偏見』の場合は、そこにいるのが当たり前だからいちいち書いていない、なろうの異世界恋愛の場合は、執事とかメイドとか侍女とか出しておくと、貴族階級っぽく見えるから出やすいのかなあと思いました。


②容貌に関する描写も少ない!

 なろうの異世界恋愛が多すぎるんやという気もしますが。

 一方で、メアリやシャーロットなど「不美人枠」の女性の描写を見ると、女性が美しくない=致命傷感が凄いです。

 よかった…21世紀の日本に暮らしててよかった…


 じゃあ、どういうところで恋が育まれるかといえば、とにかく会話。

 なのですが、ぽんぽんとやりとりするわけではなく、文庫本で半ページ以上、延々一人のセリフが書いてあったりして、わりと死ねます。

 特にベネット夫人、コリンズ、レディ・キャサリンの長口舌は辛い。

 完読のためには、この3人の発言は超ななめ読みというか、飛ばしていくしかないと思います…


③やたら親戚や友達を訪問し、数週間も長期滞在するのはなんなん??

 ビングリーがダーシー達にいきなりドナドナされていった後、ロンドンにいる母方の叔父さんのところに、ジェーンとエリザベスはしばらく滞在します。

 ジェーンは、なんだかんだで3ヶ月近くいたような。


 親戚はまだわかりますよ。

 でも、エリザベスはコリンズの牧師館に招かれて、シャーロットの妹と一緒に6週間滞在します。

 近所に住んでたわけだし、付き合いが長いし、夫の方も従兄弟とはいえ(結婚断ったけど)、何週間もいる?とびっくりでした。

 しかも、コリンズのおまけで、近所の凄い館に住んでいるレディ・キャサリンに招待されて、何度か夕食を館でご馳走になったりしています。

 逆に言うと、貴族が地元の館にいるときは、週に何回か牧師とかそういう立場の人を招いて一緒に飯食うってことですよね。

 節目節目ならまだわかるけれど、多くないですこれ?


 現代の日本の感覚では、マジで異世界なんですけど!という感じですが、お互い招待しあって、あっちこっちに旅行、出先で新たな人と知り合って人脈を広げる、みたいな感じで生きてるようです。

 エリザベスが叔父夫婦にくっついて旅行に行く場面もあるのですが、名所旧跡を見るよりも、知人のところに再訪するのが中心のよう。

 このあたり、本や新聞は一応あっても娯楽が少なく、働かないので暇はありまくりなので、人類最大のコンテンツ「人間」に関心が集中しているのかもですが。

 要は、家事は使用人がしているので、長期旅行に行っても留守番の家族は困らない&家に独立性の高い客間がそれなりにあるのでお泊りしあい、遠くから客が来たら近所の人にも紹介するという文化なのかな…


 こういう社交の仕方は、なろうの異世界恋愛では見たことないですね…

 貴族学院の夏休みに別荘にご招待展開とかはちょいちょいありますが、その場合は同世代同士のつきあいで完結することが多いですし。

 あんまりメジャーではないですが、謎な長期滞在、上手にお話に組み込めば、上流階級っぽさを出せるかもしれません。


④プライバシーの感覚が微妙にわからん

 お互い長期滞在しあう話とちょっとつながってますが。

 ダーシーの本宅のペムバリー館とか、一般公開されていて見学者の受け入れとかしてるんですよね。

 見学を申し込むと、普通に家政婦さん的な人が中も案内してくれる。

 現代だと、カントリーハウスの多くは一般公開されていますが、当時から??とびっくりしました。

 私有地であっても、ある程度公的なものとみなされていたのかな…


 ぶっちゃけ、このへんの感覚はよくわからんです。

 昔はとにかく現代の日本だと、家って「家族のプライベートな空間」っていう認識ですよね。

 ベネット家くらいの家にしても、使用人が住み込んで働く場でもあるし、そのへんの感覚がやっぱり違うのかな…


 あ、でも昔、知人で実家が文化財指定されている人がいて、今も家族が住んでいるから見学するなら事前許可を貰っているけど、帰省したときに油断すると、起きたら庭に知らない人がうろうろしているとかこぼしていたのを思い出しました。

 あの人元気かなぁ…




 なろうの異世界恋愛は、ほんわりヨーロッパの貴族階級が舞台になってることが多いので、イギリスの地主階級はまた色々違う話ではありますが、久々に読んでやっぱり面白かったです。

 特に、上巻終わりのダーシーのプロポーズ、下巻、諸々の誤解がどんどん解けてからのもだもだあたり。

 時代は違えど、もだもだ展開はやっぱりこの系の小説の見どころだなと思いました。


 もし『高慢と偏見』に興味をもたれたら、ぜひ、ちくま文庫版でご覧ください。

 うっかり岩波文庫版買ってもうたのですが、後でちくま文庫版をチラ見したら、明らかにちくま文庫版の方が読みやすかったです…


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― 新着の感想 ―
[良い点] インターネットや雑誌や新聞の役目を人間がしなくてはならないなら、確かに話題が豊富で人脈ある人が強そうですね。 明治生まれの祖母とか、誰にでも話しかけて雑談続けてましたもん。それだけでも尊敬…
[良い点] オースティンはものすごく登場人物が少ないんですよねー。 なのに面白いから、漱石も絶賛してる! 私も(それに倣って笑)、異世界めっちゃ登場人物絞ってます。読みやすくなると思って笑。 [気に…
[一言] 使用人の描写が少ないのは、「使用人はいるけど見えない存在だから」だと思います。使用人でも家令、執事、侍女、フットマンなど、家格に応じた「飾り」の要素が濃い面々は、その家の表にいることが許され…
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