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【本編完結】不幸少女、逆境に立つ ~戦闘系悪役令嬢の歩む道~  作者: 雨足怜
2.地下に生きるモノたち

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51不幸少女と奈落の魔物1

 一夜明け……たと、体内時計から判断したシャーロットが起床して数刻。


 相変わらず奈落をさまよっていたシャーロットは、突然の危険察知スキルの反応に足を止め、探知魔法に集中した。


(……周囲に反応なし。今度は罠……の可能性は低いですか。魔物、それも気配隠蔽系ですか?厄介なことこの上ないですね)


 シャーロットは戦闘モードとなった意識で周囲を警戒するも、それらしい反応はない。


(危険察知の誤作動……は今まで一度もありませんよね?だとすると、隙を伺っているのですか。なら——アクアスプラッシュ)


 シャーロットを中心として、周囲に魔法で発生させた水滴が飛び散る。


(……いた。魔力反応は……ああ、なるほど、私の認識をずらす形で潜んでいましたか。偽装系のスキルですかね。これは発見が困難ですね)


 周囲に飛び散った水を探知魔法で把握、不自然に空中に存在する場所を見つけ出す。

 その場所を一層注意深くうかがえば、先ほどまでなかったはずの魔力反応を感知できるようになった。


(私を落としたあいつも偽装系のスキルを持っていたのでしょうかね?まあそれはともかく、魔力反応から察するに強さはDランクくらい、二足歩行の……ゴブリン?)


 つるりとした毛皮のない肌、禿頭、子どもくらいの背格好。シャーロットの把握する魔物増は少しずつゴブリンへと近づいて行き、それからシャーロットはぷるぷると首を振った。


(初遭遇の魔物相手に油断は絶対にしません。それに危険察知スキルが無ければ高確率で奇襲を受けていたでしょうから、細心の注意が必要でしょうね)


 シャーロットはゴブリンに気付かれないよう自然な立ち振る舞いのまま魔力を放出、地面に転がっていた小石を飛ばす風魔法を発動しようとして、驚愕に思考が染まった。

 尖った石を握りしめたゴブリンらしき魔物は、シャーロットが魔力を放った瞬間にかがみ、無音で移動して自分の体を岩の陰に隠した。


(ッ⁉私の攻撃がバレた⁉いえ、魔力か危険察知……ですがこの手の相手との戦闘は初めてではありません——ストーンバレット)


 シャーロットは魔力をさらに放出、魔物を取り囲む位置四か所へ魔力を運ぶ。包囲網を抜けようと慌てて駆けだした魔物めがけ、シャーロットは魔法を発動した。

 素早い動きで瓦礫を飛び越え、射線に岩が存在する位置へと体を滑り込ませた魔物は、しかしぐにゃりと曲がって進む小石が頭部に当たり、軽く宙を舞った。


(アースニードルッ)


 地面が渦を巻き、そこから顔を覗かせた土の針が魔物の胸部を貫いた。


(ふぅ、無事に完封できましたか。奇襲・移動速度特化といったところでしょうかね?腕は通常のゴブリンよりも細くて胴体含めもはや皮と骨といった有様ですし、それに背も低い気がするのですよね。足もかなり細いと思うのですが、技術の問題ですか?明らかに通常のゴブリンよりは早いですよね。ゴブリンジェネラル以上、キング以下といったところですか?)


 絶命した死体に近づき、魔石を取り出しながらシャーロットは探知によって魔物の情報を集めていく。


(環境に適応した結果、気配を殺し、技術を磨くようになった、ということですか?あの能力でこの痩せ細り具合……少なくともこのゴブリンを捕食する存在がいるということですか)


 うへぇと顔をゆがませ、シャーロットは洗った魔石を背負い袋にしまって立ち上がる。戦闘音が響いていたことで警戒を強めていたがそれらしい反応はなく、シャーロットはほっと息を吐いた。


(……この魔物が寝ている間に襲って来ていたら厄介でしたね。何か対策を……ああ、そういえばこういう時に役立つスキルを手に入れにきた結果ここにいるのでした)


 シャーロットはすっかり忘れていた聖域展開スキルの存在を思い出し、早速発動してみる。


(んー?わずかに体が温まっているというか、妙に安らぐというか……炬燵に入っているような感覚ですかね?)


 一般の人が「母親に抱かれてぬくもりを感じている」と答えるような不思議な安心感があると答えるところを、変な例えを出してその感覚に浸るシャーロット。

 けれどハッと周囲への警戒がおろそかになっていることに気付き、慌ててスキル発動をやめて探知魔法に意識をやる。


(諸刃の剣ですか?いくら魔物が寄ってきにくくなるとはいえ、それで警戒心が緩んでしまっては意味がありませんか。寝ているときがせいぜいですかね?またなんとも微妙なスキルが手に入ったものです)


 シャーロットは役立たずスキル筆頭の「美食感知」を思い出しながら、微妙な思いで歩き始めた。

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