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九州大学文藝部 初冬号

(仮題)初冬号に寄せる文

作者: 俗物

さあ、やってきました! 締め切りのお時間です! 私にとっては大いに恐ろしいお時間です。なんといっても、私はまだ一文字も書いていないのですから。さあ、困りましたね!


 そんな時に私に対して天啓が降りてくるのはいつものこと。いつもいつも降りてくるわけであります。決してドラえもんが脳内に出てくる訳じゃあございませんが、それに近いものは頭にやってくるわけです。ただし、私の中のドラえもんはドラ焼きが好きな訳ではなく、アルコールが好きなアルえもんなのです。


「のびたくん! お酒ないの???」


こんなことを言ってくる困ったちゃんなわけでございます。それはまるでハロウィンの中に警固公園に集まる阿呆共とも変わりません。それでもこのアルえもんに可愛げがあるとするならば私の言うことには従順なのです。決して警固の馬鹿共が持ちえていない性格ということができるかもしれません。だって奴らには知性もモラルもありゃしないですから。高名な政治学者は某国の大統領、いや前大統領になるかもしれない人物を見て、「反知性主義」と評しましたが、警固公園の狂乱を引き起こしたやつらはそれ以上かもしれません。ANTIFAだのQアノンだのとも変わらないAHO組織でございましょう。NPOやらNGOやらではない、ただのAHOなのです。いったい以て、彼らを指すなら「反知性主義」などと言う言葉でも足りず、「範痴性主義」とでも評してやりましょうか。


おっと、本題から離れてしまいました。こうやって話がどんどんずれていくのは私の悪い癖。まったくアルえもんに怒られてしまいます。しかしながら、現状の私にはこうやって本筋から外れたことばかり大切に思えるのです。


例えば、歓楽街の朝、広がる吐瀉物。それに集るカラスたち。こんな何でもない社会階級の底辺を表していそうなものですら、今の私には深い理由があるのかもしれないと思うのです。単に馬鹿が酔っぱらっただけ、そう切り捨てるのも簡単ではありましょう。しかし、例えばそこまで酔う理由、いや、酔わなければならない理由があったのだろうかと考えてしまうのです。


これは単に共感性羞恥の類型のようなものなんでしょうか。いやはや、以前に比べて私の感受性が上がっただけでしょうか。いずれにしたって今の私には他人事に思えない。そういう初冬を迎えたわけであります。


かの有名な作家は花見をする酔っぱらいを見て、桜の下に死体を思い浮かべました。そして、それを受けて、彼は酔っぱらいの気持ちを理解することができました。同じように、ああ、きっと警固公園の下には地獄が広がっているのでしょう。血の池地獄、針山地獄、選り取り見取りのアスレチックがあるわけでございます。キャストと言ったら、それこそ無惨だのなんだの、ようわからん鬼達が集まっている地獄があるのでしょう。


 ああ、きっと、だから馬鹿共は心を燃やしてあの場に集まったんでしょう! ああ、そうか、そうだったんですか! 私のような俗物には思いもよらないものでした。あそのに集まっていた連中がそんな高尚で美しい理由を抱いていただなんて! 単に乳繰りあうことしか考えていない、インスタ蝿やティックトッ蚊ーの集まりだと考えていました。愚か者どもの集まりに過ぎない、そう考えていた私の愚かさに恥ずかしくなります。


 決して彼らは低俗で惨めで空しいことを繰り返すだけの、アホの呼吸を使う馬鹿柱ではないのでしょうから! この真理に気づいた私もまた、今なら彼らと同じ気持ちでコスプレして暴れながらインスタ投稿できそうな気がします。


 またまた、話が迷子になってしまいました。決して私は文字数を埋めるために愚にもつかない言葉を並べ立てているわけではないんです。ただ、ここ一年、ストレスが遍く降りかかる世の中へ不満ばかり高まるのです。それは私だけでなく、世の中の多くの人も抱いているのではないかなと想像するのです。きっとこれはオセアニアだけでなくアフリカでだって常識だと思います。


 こうやって言葉を連ねているうちに期日が迫ってまいりました。そういえばやっと我らの部にも新入生が増えて来たらしいですね。まあ、私はこんな風に威勢のいい言葉を並べ立てていますが、私本人はちっぽけな奴なので、新入生の皆様に置かれましては、もし対面することでもあればお手柔らかにお願いします。これだけ言って今回は終わりにしようと思います。無事何とか字数を埋めることだけは成功することが出来ました、見栄と外聞を犠牲にして。

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