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4節「一つになる意味」

4節 「一つになる意味」





山のふもと

目の前には口を開ける様に遺跡の入り口があり、それを見てちくびは言葉を漏らした。


「あ、あの……いかにもやばい雰囲気めっちゃ出てるんですが……」


洞窟の中を会長を筆頭に進む。

奥の方が明るく見えるのを発見し、リタが言葉を口にする。


「この通路は安全ポイントなのかな? HPの残量次第ではここに逃げれば態勢を立て直せるんじゃ?」


それについて会長が言葉を口にする。


「そうじゃとしたらロストはでん」


「たしかに」


洞窟を出るとドーム状に広い空間が広がっていた。

シンメトリーに設置された門番の様な鬼の石造が左右に配置され、綺麗なイメージの遺跡だった。

それについてリタが口を開いた。


「なんか、もうこれからボスの勢いのグラフィックじゃない?」


ちくびがそれに反応した。


「え!? やめてよ! それフラグ立つじゃん!」


その会話に会長が入る。


「大丈夫じゃて! 最初は雑魚と相場は決まっておる!」


会話をしながら中央部まで来た時、入ってきた後ろの洞窟は魔法の様に石で埋められた。


「やはり掃除せんことには休みはなさそうじゃの」


その言葉に皆は改めて認識し、気を引き締める。

その時、目の前に時空の歪みが現れ、会長の激声が飛んだ。


「戦闘準備っ! ちゃま! 後方から援護! ちくは中衛! リタはちくを守れ! 為心は左から旋回!」


歪みの目の前に会長は構え、全員は配置についた。

息を殺しその時を待ち、辺りは静まりかえり歪みの音だけが響いていた。


その刹那、歪みの奥から光が見えた。


「絶っ!!」


陽刀 防御スキル

    無数に連なる六角形のシールド。



会長が反射的にシールドを展開したとほぼ同時だった。

雷炎らいえんのライトエフェクトの玉が歪みから放たれ、シールドに衝突し、凄まじい音を立てる。


「くっ! これはちときついのう!! ちくよ!! ワシをブーストさせるのじゃっ!」


「はいっ!……水浄化すいじょうか!!」


魔氣 回復スキル

   魔法陣を生成し、回復、そして、一時的にステータスを二倍にする。


「クッソ!! これでギリじゃと!?」


しかし、その場の誰もが雷炎を会長1人で防いでいる事に驚いていた。

会長が雷炎を力ずくで押し返そうと競り合っているその間に歪みから脚が出てきた。

そして腕と頭、ようやく1匹の鬼が完全に姿を現した。

その風貌は、歪な石の鎧に、中に見える筋肉組織は赤く光り、非対称な歪な角、安全圏内に突如として現れた鬼と同じ個体だった。


「こ、コイツ!? この間の奴じゃないか!?」


為心が鬼を見てそう驚き、ちくびも声を上げる。


「やばいって! もうただのボスじゃん!! この間は人数がいたから倒せたようなもんなのにっ!!」


ちゃまはもう攻撃な入り、鬼に向け矢を放つ。


一旋いっせん!!」


皇矢 攻撃スキル

   風を使い渦巻く強力な矢を放つ。


風がドリルの様に矢にうずを巻き、鬼に目掛けて凄まじい勢いで飛んでいく。

そして、それと同時に会長が力一杯に激声上げる。


「ぅぅううううりゃゃゃゃあああああ!!!」


会長の叫びと共に耐え続けていた鬼の雷炎をシールドの角度を変えて真上に吹き飛ばした。

そして、ちゃまの一旋が鬼に着弾、更に間髪を入れずにちくびがスキルを使う。


水幻すいげん!」


魔氣 サポートスキル

   霧を発生させ、仲間を敵から隠す。


「サンキューっ!!」


為心が攻撃にうつる。


「閃光っ!!」


双月 回避&攻撃スキル

   雷をまとい、加速する。


為心は霧の中を鬼目掛けて斬り込み、手応えを感じたと同時にもう一つのスキルを発動した。


乱舞らんぶ!」


双月 攻撃スキル

   凄まじい速度で回転しながら斬りつける。


閃光でブーストされた速度に乱舞の乱撃が重なり凄まじい速度での斬撃を為心は繰り出した。


「ゴホっ!!」


しかし、為心は鬼の攻撃を受けて霧から吹き飛び、十数メートルの壁に衝撃音と共に叩きつけられた。


「いってぇ……」


「ウォォォォォオオオオオオオオオ!!!!!」


鬼の雄叫びで周りの霧が消しとび、次の攻撃を予測した会長が指示を出す。


「ちくよ! 早急に為心をかいふっ……」


しかし、指示を出す前に会長は一瞬で鬼に距離をつめられていた。


「ぜっ…」

『やばい!? 間に合わない!?』


鬼の右手の大振りが会長目掛けて振り抜かれた。


「グハッ!」


会長は防御スキル「絶」が間に合わず、見事に鬼の攻撃で吹き飛び、為心同様に壁に叩きつけられる。

そして、鬼の標的が目の間にいるリタにうつり、鬼の手のひらが光輝ひかりかがやき始めた。


「絶対絶命じゃん……」


苦笑いしながらリタは鬼に向け構えをとる。

すると鬼がリタに向けて腕に溜めた咆哮よりは小さい雷炎のエフェクトを放つ。


「絶っ!!」


リタは防御するが、着弾と同時に耐え切ることが出来ず、吹き飛び、転がった。


「リタっ!!」


ちくびが心配して叫ぶ。


「だ、大丈夫っ……あれでギリかよ。 会長は俺が受けたあれ以上を止めてたとかマジバケモン」


リタは冗談が言えるほど軽傷だった。

鬼は屈んで脚に力を入れる態勢になり、ちくびに向かい一直線に飛ぶ。

長く伸ばした爪をかざし、突進する様に攻撃をしてきた。


「やばっ!!」


為心がそれに気づいた。


「閃光っ!」


為心は閃光を使い、鬼の伸ばされた爪に目掛けて横から直進し、双剣をクロスした状態で鬼の爪に当てた。

鬼の爪と双剣が火花を散らしながら滑り、為心は鬼の攻撃の軌道をずらすことに成功する。

鬼はちくびとすれ違う様にそのまま遺跡の壁に凄まじい音を立てて激突し、遺跡の瓦礫に埋まる。


「あ、危なかった……為心ありがとう!」


「ちくちゃん回復して!」


「任せて! 水浄化!」


為心の足元に魔法陣が浮き上がり為心は回復する。


「いたたた……油断してもうたの」


瓦礫から会長が起き上がり、それを見てちくびが声をかける。


「会長回復は?」


「まだ大丈夫じゃ! 主ら体勢を立て直すぞ!」


「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解!」


ちゃまがスキルを使う。


「浮遊」


皇矢 サポートスキル

   浮遊

   自分の周りに風を起こし自由自在に空を飛ぶ事が可能。


そして鬼がいる瓦礫に向かって空中から攻撃をする。


「時雨っ!!」


皇矢 攻撃スキル

   時雨しぐれ

   雨の様に光の矢を降らす広範囲攻撃。



合わせてちくびも攻撃をする。


水光弾すいこうだんっ!!」


魔氣 攻撃スキル

   水光弾すいこうだん

   魔力を凝縮した水の玉を凄まじい速度で数多く放つ広範囲攻撃。


2人は広範囲攻撃スキルで瓦礫の一掃と鬼の目視を図る。

しかし、鬼は2人の範囲攻撃に気にも止めずに平然と立ち上がり歩き出す。


「まだ怯まないのかよ!」


リタが攻撃をされている鬼のHPゲージを確認するが、半分にも満たない状態だった。


「そろそろ怯んでもらうとするかの……」


そして、会長の一言に合わせたかの様に鬼が一直線に飛び、長く伸ばした爪を会長に目掛けて攻撃を繰り出した。


「この程度ならワシが止める!!」


スキル「絶」のシールドに鬼の爪が衝突し、衝撃音と共に火花を放ち、会長は受け止め続ける。


「ちょうどよい! 主らに心魂は変化したかと聞いたな?」


この状況で会長が会話を始めた。


「主らがアバターと意識のズレを感じている話の続きをしてやろう! それはまだ主らがプレイヤーのままが原因じゃ!」


「は!? 今この状況で説明それ必要!?」


あまりの唐突な場に似合わない会話に為心が思わず答えた。

しかし会長は話を続けた。


「問題ない! ちょうど良いタイミングだからのう! 説明する!」


鬼の今の標的は会長だけになっている為、簡易的な爪だけの単純な打撃攻撃しか繰り出していない。

会長はスキル「絶」を使いうまく防御をし、鬼の攻撃を防ぎつつ説明を続ける。


「陽刀の心魂は光剣じゃ! しかしのう……この世界ゲームを……いや! この世界を受け入れ! この世界で生きると腹をくくり! このアバターが! アバターではなく自分自身だと! そう認めた時! 心魂がもう一つ増える!」


「はぁ!? 何言ってんだよ!?」


「まぁ、見ておれ!!」


会長が意識を集中し、そしてタイミングを見極めて叫ぶ。


「心魂!! 挽回ばんかいっ!!」


その刹那、鬼の攻撃をのタイミングで激しい衝撃音と共にまばゆい光に包まれた。

気づけば鬼が凄まじい速度で吹き飛び、壁に当たり、また瓦礫の下に埋まった。


「な、なにそれっ!? か、カウンターだよね? そんなスキルこの世界ゲームには存在しないだろ!!」


為心が会長の所業しょぎょうに驚いた。


「そうじゃろぉ!?」


会長は腰に手を当てて偉そうに微笑み会話を続ける。


「おそらく各個人で出てくるスキルは違うようじゃ! 自分だけの本当の固有スキルになるかの! ワシはカウンターじゃったがな! ワシは会長だからのう……皆を護ると強い決心をした時解放してな。 それからワシはリアルの自分では無く、結晶華の会長じゃ! 意味はわかるな?」


その言葉に為心が答える。


「いや! ごめん! わかんない! てか、それ全員ちゃんと解放するのか!?」


「わからん!」


「は?! あんたふざけてんのか!!」


「大真面目じゃ!! まぁ、いいからやってみぃ! さすればわかることじゃ!」


「ふざけんな! こんな危機的状況で試せるかぁ!! あんたは馬鹿か!!」


「なんじゃと!? ワシは厨二病じゃ!!」


「いや……えばって言える事じゃないだろ……」


しかし、リタが誰にも聞こえない声で口遊くちずさむ。


「なるほどね……そういうことか」


その時。


「ギュゥゥゥゥィィイイイイ…」


耳が痛くなる程の低い音から高い音へ変わる音が瓦礫から聞こえてきた。


「またあれか……芸のない奴め! リタっ! ワシと絶を組むのじゃ!」


「あいよっ! 溜めモーションだから準備できて助かるね!」


「ちくよ! ブーストじゃ!」


「水浄化!!」


リタと会長が太刀を構えタイミング見計らってスキルを使う。


「絶っ!!」

「絶!!」


シールドを展開と同時に瓦礫が吹き飛ばされ、雷炎が迫り、そして着弾。


「よし! いける!」


リタも会長も余裕が伺え、会長が指示を出す。


「ちゃまっ! 今じゃっ!」


「はいっ! 時雨っ!!」


「次っ! ちくよ! 霧じゃっ!」


「あっ! はい! 水幻!」


「為心っ!」


「わかってるっ!! 閃光……乱舞っ!!」


パーフェクトな連携を取り、為心が合わせ技で斬り刻む。


「リタっ! 真上に弾くのじゃっ!」


会長が雷炎をリタと一緒に真上に弾く。

そして、為心はモーションが終わる間際、鬼が態勢を崩し片膝を地面に落としたのを見逃さなかった。


「ここだっ!! 心魂! 鳴神なるかみ……夢幻刹那むげんせつなっ!!」


双月心魂

   鳴神なるかみ

   斬りつける度に稲妻が落ちる。


双月 攻撃スキル

   夢幻刹那むげんせつな

   自分を光の速度に置き換え、空中に磁場を生成し、足場にし、全ての方位から斬撃をする。


為心はこの世界ゲームに設定されていた心魂、鳴神を使い、合わせ技の夢幻刹那を使用した。


「うぉぉぉおおおおおおおっ!!!!!」


スキル補正の動きに合わせて自分のプレイヤーステータスを攻撃のタイミングに合わせて乗せる。

あまりの速さに為心の激声が響き渡っているが、姿は目で捕らえられない程に速く、光が閃光の様に当たりを瞬間的に明るく照らし、斬りつける度に凄まじい速度で稲妻が落ちていた。


「閃光っ!!」


モーションが終わり、スキルを使い為心は後方に距離を取る。


「やったかっ!」


「それ言っちゃダメっ!!」


ちくびがそう言った時だった。


「ギャァァァアアアアアアアァァァァっ!!!!」


鬼の激声が耳を打った。


「ほらっ! 為心の所為せいでフラグ立ったじゃんかよっ!!」


ちくびが鬼の変化を見て為心をめる。


「いやっ! 私の所為じゃなくてっ! そう言うシステムだからっ!!」


そこで会長が会話に割って入る。


「2人とも気を付るのじゃっ!! 何かおかしいっ!!」


鬼に変化が出始めた。

体にこびり付く岩の鎧の間から見える赤く発光していた筋肉が更に脈を打つ様に更に赤く発光した。

まるで燃えているかの様にも伺え、そして鬼が空中に浮き始める。

まるで胎児の様に膝を抱えて空中で丸く屈み込んだ瞬間、鬼の体全体は赤く光輝ひかりかがやいた。


「眩しっ!」


「何も見えないっ!」


為心たちは目視することすらできなかった。

そして光が落ち着き、鬼を確認した時言葉が漏れる。


「ま、まさか……形態変化?……あ、あれは鬼なのか?」


為心の目の前には、歪な石は洋服の様に所々残り、その間からは人間に似た皮膚、長い尻尾と非対称の角を生やした、少女がいた。

そして、為心がHPを確認して驚いた。


「おい! 待てよ! あれだけ頑張って減らしたHPが全回復してるじゃねぇかよ!」


その状況に会長は理解した。


「名無しのわっぱ。 これを知っててあの時の鬼のHPを一気に削り取ったようじゃの」


会長は学院で戦った鬼のノーネームの対処の事を思い出していた。


「こんなことなら情報ぐらい教えて欲しかったのう……もしもの時は……怨むぞ名無しよ」


そして、鬼の目が為心を向く。

為心は標的にされたと認識し、閃光スキルを発動し回避しようとした。


「せんっ……!!」


数メートルの距離を目に見えない速さで詰められ、脇腹に蹴りを食らう。


「うっ……!!」


そのまま凄まじい音と共に壁に衝突し、瓦礫の下敷きになった。


「為心っ!!」


ちくびが回復しに行こうにも鬼はこちらを見ていた。


「僕が引き受けるよ」


そこでリタが軽々しく、言葉を口にしながらその間へと入ってくる。


「主だけじゃ不可能じゃ……ワシも入る」


「いやいや! まぁ、見てなって!」


しかし、リタは会長の加勢を拒否してきた。


「リタよ……さすがに命を落とすぞ……」


「その時は助けてよ! その為の会長さんでしょ?」


「リタ! あんた何考えてんの!? 絶対ダメ! そんなの私が許さない!」


声を張り上げたのリタの姉であるちゃまだった。


「大丈夫! 本当やばくなったら会長が助けてくれるから!」


「それでも絶対なんてなっ……」


ちゃまの言葉を会長が片手を上げて止めて言う。


「ここは……拝見といこうかの……」


「会長……」


「大丈夫じゃ……本当にもしもの時はワシが割って入る」


「ありがとう! 会長!」


リタは笑ってそう言い鬼に向かって歩き出す。

しかし、その姿は周りからは無謀にも似た光景にうつって見えた。


「ここで心魂に影響が出るのなら、それは大助かりになる……ちくよ! 為心は無事と仮定し、リタにブーストを! ちゃまは壁を作ってやるのじゃ!」


「水浄化っ!」

風壁ふうへき!」


足元に魔法陣と風の膜がリタにバッファーが付与された。


「バフか……いらないのになぁ……」


渋々感あるリタに会長は言う。


「まぁ、そういうでない。 お主のお手並拝見といこうかの」


「要は認めればいいんだよね? 僕そう言うの得意だからさ! まぁ、見ててよ!」


「ほう? 自分の意思で解放すると?」


「試して見る価値はあるよね!」


リタは鬼に向かい歩き、鬼も浮遊しながらリタに近づく。

そして、近づきながらリタは自問自答をする。


『認めるねぇ……どちらかと言うと受け入れると言った方が正しいのかな? このリタが僕の物に成るって事でしょ? それって最高じゃん……僕は今まで異世界こういうのを求めていたんだ。 鬼説ここが僕の現実リアルになるなら……何だってくれてやるよ……』


「……僕は……リタだっ!!」


そう言って構えた瞬間だった。

リタの周りに凄まじい風圧と青いライトエフェクトが螺旋状に舞った。


「ふーん……これが僕の力か……良いじゃん!」


リタは楽しさと興奮から笑みが止まらなかった。

鬼は何かを察し、腰を深く落とし、手は広げて、戦闘態勢に入る。


「心魂……鷹の目!!」


リタがスキルを発動した瞬間、瞳があおく発光し、陽気があわく立つ。

そして、リタと鬼は戦闘態勢に入ってから少しばかり沈黙が続き、痺れを切らし先に動き出したのは鬼だった。

しかし、あまりの速さに消えたと誰しもが認識した。

そして、気づけば鬼はリタの心臓目掛けて爪を突き出していた。


彼奴あやつ!! 失敗しくじりおったかっ!?」


そこに居る会長も含め、全員がリタが死んだと思った。

しかし。


「少し危なかったね……まだ慣れるまで時間かかりそうだ!」


笑うリタがそこにはいた。


リタは鬼の攻撃を間一髪のギリギリの所でわしていた。


「今度は、こっちの番だよっ! 刻爆炎こくばくえん……十火炎斬じゅうかえんざんっ!!」


陽刀 攻撃スキル

   十火炎斬じゅうかえんざん

      遠心力を利用し、炎を纏い十連斬りする。


   刻爆炎こくばくえん

      斬りつける度に爆発を起こす。



そして、リタの猛攻が始まった。

凄まじい斬撃と鳴り響く爆発音。

しかし、鬼もただ攻撃を受けてるだけではなかった。

鬼も見えない速度で攻撃を繰り出してはいるものの、リタに全て避けられ、鬼の回復したはずのHPは徐々に減る。


「ちゃまとちくよっ! リタが引きつけてる間に為心の救出じゃっ! ワシはリタのサポートに回るっ!」


会長が指示を出し、ちゃまとちくびは為心のところへと走り、瓦礫を退け、為心の無事を確認する。


「為心大丈夫!?」


ちくびが呼びかける。


「HPレッド……ギリギリ」


「すぐに回復するっ! 水浄化っ!」


「ちゃま、今どうなってる?」


為心がちゃまに戦況を聞く。


「リタが心魂を解放して一人であれと戦ってる!」


「リタがっ!? 一人で? すげーな! こっちなんて鬼の攻撃も見えなかったのに!?」


「よしっ! 為心回復したっ! 体勢を立て直すよっ!」


ちくびが為心の回復を終わらせ、為心はちくびに指示を出す。


「ありがとう! リタ筆頭に陣営を作る! リタの猛攻が終わり次第また水幻で隠してくれ! 次は必ず終わらせる!」


為心達は配置につき、それを会長とリタが確認した。


「為心よっ! 無事で何よりじゃっ!」


「まだ眠っててよかったのにっ!」


リタは鬼と対峙しながら会話をする余裕もあった。


「すげーな……リタの奴本当に優勢で戦ってるよ……」


為心が改めてリタの戦いに驚いていたその時、鬼の片膝が地面へ落ちリタはこのタイミングを見計らっていた。


「とどめっだっー! 心魂! 光剣こうけんっ!!」


陽刀 心魂スキル

   光剣こうけん

   まとわせた炎の温度が高すぎる為、太陽と同じ輝きを放ち、一刀両断する。



「ギャァァァァァアアアアアアアァァァァア!!!」



悲鳴と共に鬼は炎で包まれる。

しかし、燃ながら鬼は右手に雷炎を作っていたが、リタはそれよりも速く叫んでいた。


「会長っ! スイッチっ!」


「リタよっ! 御苦労じゃったっ!」

『なんて勘の良さじゃ!? 相手の動きより速く指示をこんなに的確に出せるものか!?』


リタと会長は入れ替わり、会長がシールドを展開する。


「絶っ!!」


鬼は燃えながら雷炎を放ち、会長のシールドに着弾した。


「このタイミングでっ!! こうじゃなっ!!」


要領を掴んだ会長は雷炎を真上へ跳ね上げた。

そしてすぐに指示が飛ぶ。


「ちゃまとちくよっ! 援護じゃっ!」


「時雨っ!! 一旋っ!!」


「水幻っ!! 為心!! 後は頼む!!」


ちくびとちゃまの連携に合わせて為心が動く。


「心魂……鳴神なるかみ


為心が持つ双月に稲妻が走る。


閃光せんこう


今度は為心自身が雷を纏った。


「行くぜぇ!! 夢幻刹那むげんせつなっ!!」


為心が発光し、目に見えない速度でその場から消え、霧の中に向かう。

夢幻刹那のスキルにより磁場を使った足場を利用して全ての方位から猛烈な斬撃を繰り返し、スキル鳴神が鬼を斬る度に雷撃の落とす。

衝撃音だけが音が瞬く間に辺りを鳴り響かせた。


「うぉぉぉおおおおおおっ!!!」


霧が晴れたと同時に為心が空高々に飛んだ。


「終わりだっぁぁぁぁあああああああ!!」


遥か上空から螺旋の様に回転し、凄まじい速度で雷と共に為心は落下し、鬼を頭頂部から地面まで斬り抜いた。


一時いっときの沈黙が続いた。


その時、鬼はゆっくりと倒れ、そしてポリゴンになって散乱し消えた。

それと同時に為心達の視界にはクリアの文字が浮び、安堵から為心は腰を落として言う。


「結構やばかったぁ……」


なんとかなった安心感から続けて愚痴をこぼす。


「誰だよ! 最初は雑魚と相場が決まってるって言った奴はっ! もはやこれボスでしょっ!」


全員が会長を見た。


「まぁまぁ、全員無事なら良いではないか!!」


会長は腰に手を当て堂々と開き直る。

そして、為心と、ちくびと。ちゃまが会話をしている最中、会長はリタに話しかけた。


「ところでリタよ。 主の心魂、あれはなんじゃ?」


「心魂、鷹の目。 相手の一歩先が見えるスキルだってさ」


「ほう……それは凄いなぁ! 次はもっといいフォーメーションができそうじゃの!」


そして、瞬間的に会長は穏やかだった表情を一変し、言葉を続ける。


「ところでリタよ」


「ん?」


「お主は誰じゃ?」


「僕はリタだよ」


「そうじゃない……現実リアルの名前じゃ」


「は?……そんなの……」


その瞬間だった。

リタはあまりの驚きに表情は一変し、言葉を漏らす。


「……な、なんだって……思い出すことが……で、出来ない……」


「思い出せんじゃろう。 この鬼説せかいに生きると言うことはそういうことじゃ」


リタの記憶からリアルの名前が消えた。









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