妖精と陰陽師
仕事を終えた魔王は、紫耀を連れて外の庭に出た。
中庭は遊具等が置かれている以外は、ベンチと小型の噴水くらいしかないが、外の庭はとても広く、庭師によって手入れがされた木や花達が美しく咲いている。
そのせいか、紫耀にとっては嬉しいが、魔王にとっては厄介な客も訪れる。
『あ、妖精達が来てますよ。』
「……」
近付こうとする紫耀を引き留めるように魔王は紫耀を抱き締める。
そんな二人に気がついた妖精達が笑いながら飛んできて、二人の周りを飛び回る。
小人に半透明な羽が生えた様な姿の妖精達だ。
〈久しぶり~!ねぇねぇ紫耀!またボクらの国に遊びにおいでよ!〉
〈女王様も王様もまた会いたいって言ってたよ!〉
『えっと…』
紫耀はチラリと魔王を見上げる。
魔王は首を横に振っていた。
『ごめんね。またそのうち…』
〈え~〉
〈前もそう言ってた~〉
妖精達は頬を膨らませるが、紫耀が飴玉をあげると大喜びして何処かへ飛んでいった。
魔王が紫耀を妖精達の国へ行かせないのには理由がある。
〝次に行ったら帰って来られなくなる可能性が高い〝からだ。
実は、紫耀は一度妖精達、精霊種が住んでいる国〝精霊国〝に行っている。
精霊国がある場所はかなり特殊で、精霊種に招かれなければ入れない。
精霊種に〝気に入られすぎると〝帰って来られなくなるので、招かれた者がそのまま帰って来ないと、基本的に死亡扱いになる。
紫耀の場合、前回は運良く帰って来れたが、次に行ったら帰してもらえない可能性が高いのだ。
気に入られすぎた証として、紫耀には〝精霊王夫婦の加護〝がついている。
これが〝妖精の加護〝や〝精霊の加護〝だったらまだいい。
だが紫耀は〝精霊王夫婦〝に加護を付けられた。
精霊種にとって加護とはマーキングの様なもの。
故に、紫耀の居場所は精霊王夫婦に居場所が筒抜け状態だ。
魔王も過保護になる。
紫耀の玉虫色の右目を見て、魔王は「精霊国には行かせない」と決意を新たにした。




