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記憶喪失の陰陽師


ふわりと紫耀の意識が浮上した。


ふかふかのベッドからノロノロと起き出すと、キョロキョロと部屋を見渡した。


『(……何処だろう)』


紫耀には分からないが、彼が今いる部屋の家具等は全てアンティーク風の高級な物ばかり。


ベッドからふさふさのカーペットに足を下ろし、立ち上がろうとすると、頭痛と共にぐらりと視界が揺れて床に倒れてしまった。


『……あたまいたい…』


紫耀が呟く声は扉の開く音で掻き消された。


扉を開けた人物は「失礼いたします」と言ってから部屋に足を踏み入れた。

すぐに倒れている紫耀をゆっくりと抱き上げ、ベッドに戻した。


紫耀のクラクラと揺れる視界に写ったのは、金髪赤目の執事だった。


「頭が痛みますか?」


紫耀は声を出すのが億劫で、軽く頷くしか出来なかった。


執事はベッドのサイドテーブルに置いてある粉薬と、氷水の入った大きめの水差しの水を、吸飲みに入れてゆっくりと紫耀に飲ませてくれた。


多少の目眩は残っているが頭痛は引いたようだ。


『あり…がと……』

「いえいえ」


執事はニッコリと微笑む。

すると、扉がノックされた。執事が扉を開けると、紫耀の診察に来た医者と魔王がいた。


「陛下、ドクター。彼が先ほど目を覚ましました。頭痛薬はもう飲ませました。」

「おぉ。目が覚めたのだな。」


魔王は少し肩の力を抜いた。


医者が紫耀の脈拍と体温を測る傍ら、魔王は紫耀に色々聞く事にした。


「体の具合はどうだ?」

『…え…と…少しクラクラする…けど大丈夫…』

「そうか…。何故お前はあんな所で大怪我をしていたんだ?」

『……?けが…?』

「覚えていないのか?……まさか…」


魔王はチラリと医者を見る。

医者は深刻そうな顔で、紫耀に幾つか質問をした。


「ここで起きるまで何をしていたか覚えてる?」

『…ねてた…?』

「んー…ここに来る前、何してた?」

『…わからない…』

「ふむ。何処に住んでたか覚えてる?」

『覚えてない…』

「キミの種族は何?」

『わからない』

「…キミの名前は?」

『………………』


紫耀はしばらく沈黙した後、泣きそうな顔で呟いた。


『わからないよぉ…』


紫耀は頭を抱えて縮こまった。

そんな紫耀の肩に優しく手を置き、魔王は告げた。


「お前の名前は〝紫耀〝だ。」

『紫耀……?ぼくの名前…?』

「そうだ。」


安心した様に魔王の手にすり寄る紫耀に医者がくだした診断は〝記憶喪失〝。


「少なくとも自分の事は覚えていないようです。本人に確認しないと分かりませんが、他にも忘れてしまった事があるかもしれません。」


確認はまた後日にしましょう、と言うと医者は追加の頭痛薬と、念のため解熱剤等幾つかの薬を執事に預けて部屋を出ていった。


その後、ゆっくりと紫耀に確認していくと、覚えてる事の方が少ない事が分かり、魔王は「体が癒えるまでと思っていたが、何も分からない子供を放り出す事は出来ぬ!」と、紫耀が記憶を取り戻すか、知識を付けるかするまで城に紫耀を客としておいておく事にした。


三ヶ月程で父性が目覚めて紫耀を養子にするとはまだ思ってもいない魔王、アグリオン・ルツ・ファーデリアスであった。


次回「魔王、パパになる~寿命が延びまくる執事を添えて~」


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