Episode:12 決戦
翼を広げ、リョートは空高く飛び上がった。
魔法結界の外側は、上空から分かるくらい激戦区となりあちこちで黒煙があがっている。
「ひでぇ状況だ」
『リョート……』
「大丈夫だダンナ、俺は常春の山地で一戦交えている。奴らの行動パターンなら把握済みよ!」
リョートはβを首に巻いているストールの中に入れ、激戦区へと一気に急降下した。
激戦区では魔兵とヴァイスビーネの死体があちこちに転がっており、木々はなぎ倒され燃え、時に氷り付いている。
魔兵の方が導入人員の数多く、劣勢を強いされていたヴァイスビーネの群生の上を飛び抜き最前線に降り立つ
「おらぁ!!弱い奴らは引っ込んでやがれ!!」
『フロストドラゴン!?』
「俺も加勢するぜヴァイスビーネ!」
リョートは両腕をドラゴンの腕に変化し魔兵を手当たり次第氷漬けにしていく。ラグナが後方支援してくれるおかげで隙は少なく、着実に数を減らしていった。
これを好機にヴァイスビーネも前進をはじめ、劣勢だった状況を優勢へと変えていく。
「ダンナ、指揮官って奴には特徴があるのか?!」
『他の兵士と服装が違うのが1番の特徴だが、描かれた陣の中心に立っていたら間違いなく指揮官だ』
「陣の中心?」
『他の魔兵に支持を送る魔兵長に連絡をとるための魔術を展開しているのだ。分かりやすすぎてあまりその姿を見られることはないと思うが……』
空中から遠距離氷魔法を飛ばし続けると、魔兵は防御魔術を発動させる。その発動の隙をついてヴァイスビーネが魔兵の体を貫き地面に叩きつけていく。
お互い指示し合うわけでもなくリョートとヴァイスビーネは共闘できているのは、常に連携を崩さず行動しているヴァイスビーネの性質のおかげだろう。そのことを理解しているからリョートはラグナの助言をもとに自由に動き回って戦えていた。
* * * *
一方、魔兵側はフロストドラゴンの突然の乱入によって優勢だった戦況をひっくりかえされていると報告を受けた指揮官は苛立ちを感じていた。
それもそうだ、魔兵たちは綿雪の森でしか採取できない希少な素材やヴァイスビーネ達の羽、体液、ヴァイスヴォルフの毛皮、そして森の中心にあると言われる大樹が目的であり、ヴァイスビーネとの交戦は予想外だったがドラゴンが自らの意思で前線に参戦してくるとは予想外でしかなかった。
「駒を使って森の中に入れさせたと言うのに、その駒が全滅しただと!?」
「はい、何者かによって殺されたかと……生体反応がありません」
「おのれ……人外の分際で人間に立て付こうなどと!!」
バンッと地図を広げている机を叩く。
さらに
「隊長、フロストドラゴンがこちらに向かっているとの通達が!」
「ぐぅうう……!!!」
ドラゴン種を相手にするのは人の世でも苦戦を強いられると言われ、それこそ優れた魔兵をかなりの人数犠牲にすると言われている。
「致し方ない。主要部隊だけを撤退させろ」
「……まさか、おやめくださいそんなことしたらこの森での採取は不可能となってしまいます!」
「黙れ!」
副官の助言を遮り、指揮官は主要部隊に撤退指示をだし自身は地図を投げ捨て机に描かれていた陣に手をかざす。
* * * *
リョートはかなりの数の魔兵を氷漬けにして森の外へと走り続ける。ところが、ある地点から魔兵の数がぐっと減り、一部は武器を放棄して撤退していく姿が見られるようになった。
これ好機とリョートは翼を広げ一気に前進するがそれをラグナは制止した。
「どうしたんだダンナ?」
『嫌な予感がする……リョート、βを外に出してくれるか?』
ストールの中からβを取り出すと、βは上空へと上がり森の外へ顔を出した。
ラグナは辺り一面の様子に魔術を発動させると、指揮官を発見。さらに
『まさか、『あれ』をする気か……?!』
指揮官の動きに危険視をし、急いでリョートの元へ戻った。
『リョート、今すぐドラゴンの姿になって指揮官を叩くのだ』
「ドラゴンでか?でも魔兵は逃げ出して……」
『指揮官が『自決魔術』を発動させようとしている!主要部隊だけを撤退させるときに使われる魔術は『あれ』しかない!』
「っ!!」
ラグナが告げた『あれ』とは、『常春の山地』で発動しようとしていた『感染型呪術』。
それに気づいた瞬間、ラグナは本来の姿……ドラゴンの姿になり翼を広げた。
「リョート!」
飛び立とうとした時、背後から名を呼ばれた。そこにはアウルが立っていた。
「アウル!?お前なんでここに!?ガキの始末に手が離せないとか言ってたのに」
「その始末が終わったから前線に来たんだよ。それよりも指揮官の所へ行くんだろ?」
「ああ、ダンナが指揮官見つけてくれたからな」
「俺も一緒に行く。そいつには一言言ってやらねえと気が済まねえ」
そう言い、アウルは勝手にリョートの背中に乗った。
何を勝手にとも思ったが、それよりも時間が惜しくリョートは翼を羽ばたかせ勢いよく森の中を突っ切った。
「フロストドラゴンが現れるぞ!全員配置につけ!!」
リョートが森を抜け魔兵たちの前に姿を現す。魔兵たちは一斉に魔術を発射するも全てアウルによって跳ね返されてしまい、さらに魔術を魔法で包み込み、それらを倍の力にして魔兵にぶつけ返されてしまった。
『リョート、あれが指揮官だ』
机に手をかざし魔術を発動させようとしている人間を指さし、リョートはドラゴンの姿から半人の姿になり尻尾で指揮官を叩き飛ばそうとしたが、それを副官が魔術で防衛。
「邪魔だ人間!!!!」
「指揮官殿には触れさせはせん!!」
「お前の相手は俺がしてやる!」
リョートと副官の間に割って入り、アウルは自身と副官を闇属性魔法で覆い隠した。
中から「若造は俺に任せろ。終わるまで指揮官殺すなよ」と言う声が聞こえてき、リョートは返事をして再び指揮官に向き合った。
「闇属性、貴様アンデットか!」
「光属性が使えるとかで有利だとか言うなよ若造。そんじょそこらのアンデットと一緒にされちゃリーダーの名が汚れるってものだ」




