プロローグ
かつて、この世は2つの世で成り立っていた。
人間が支配し、魔術の発展によって力を得た『人の世』
魔物、亜人、幻獣、精霊、アンデットなど魔法を使い、弱肉強食の中生きる『幻創の世』
2つの世は互いにいがみ合い、時にはぶつかり合いを繰り返していた。
やがて、『人の世』も『幻創の世』も人口数、種族数が増えていき、領土を拡大させ、いつしか互いの世が交わる土地を奪い合うようになっていった。
その奪い合いは戦争となり、『人の世』と『幻創の世』の好戦的な種族たちとの激戦が始まってしまった。
その激戦は後に『領土戦争』と呼ばれ、長い間2つの世に生きる者たちは殺し、殺され、奪い、奪われ、多くの命が犠牲となった。
しかし、『領土戦争』は皮肉にも絶滅の危機を引き起こしてしまった。人間も、魔族も、亜人も……争いを避けた精霊や幻獣たちも、個体数が急激に激減。さらに、奪い合っていた土地は激戦の果てに大地は死に、もはやなにものも生きられない土地となってしまった。
これを機に、2つの世は争うことを止め、死滅した土地は不可侵領域として『領土戦争』は終戦した。
終戦後、『人の世』と『幻創の世』は一切の交流を断ち、それぞれが存続していくための復興に時間を当てていった。
そんな中、新たな世が生まれた。
『人の世』、『幻創の世』から弾かれ、捨てられ、あぶれ、そして『領土戦争』によって住む場所を奪われ、2つの世から逃げ出した者達が創世した、魔法と魔術が混在する『多種族の世』
彼らは種族の概念に囚われず、共存し、発展し、やがて1つの世として確立していった。
軍を作らず、1つの種族を長にせず、あらゆる分野が、あらゆる人材が、あらゆることができるよう『ギルド』を構成し、その頂点、全てを統括し、『多種族の世』の治安を守る存在『ギルドマスター』を作り、5つの席を用意した。
同時に『人の世』と『幻創の世』との交流も行った。『人の世』からは人もそれ以外も混ざった中途半端な「亜人の世」と見下されるが、『幻創の世』の一部は、「洞の世」と呼ぶも、同種が共存を選び築いた世と言うことで、対等とまではいかなくとも情報共有ができる程度の関係を築くことができた。
こうして、この世は3つの世によって構成され、微妙なバランスを保ちながら、世同士が争うことなく存続していった。
全ての種族を滅ぼしかねない、恐ろしい魔術が生まれるまでは。