第29話 記憶の戻った国王の嫌がらせ
本日13話目!
目が覚める。
そして時間を確認する。
「……お昼か」
星羅は寝すぎてしまったが、体の疲れは吹き飛んでいる。
「さて」
星羅は服を魔術で綺麗にしてから外に出る。
向かうは魔法大学。
星羅は国王の記憶を消した事も忘れて、お願いされた王女の安否を確認するために魔法大学に向かっている。
「すみません。魔法大学ってどこですか?」
星羅は近くを歩いていた人に道を聞く。
それは運が良かったのか、
「俺も今から行く所なんだ。一緒に行こうぜ!」
「本当? ありがたく、そうさせてもらうよ」
「おうとも。俺はチャーリー、チャーリー・ルドセルクだ」
「よろしく。俺は星羅。天城星羅ってのが俺の名前」
「よろしく、セイラ」
チャーリーと一緒に魔法大学を目指す。
魔法国家ユリエーエはどこもかしこも魔法使い用のローブを売っていたり、魔法使い用の杖を売る店が多く見られる。
どれも星羅には必要のない物だ。
「さぁ、ついたよ」
チャーリーが手を広げてドヤ顔をしている。
「お前のじゃないだろ」というツッコミを我慢してその門を潜る。
「君たちも受けに来たのかな?」
「はい、そうです」
チャーリーが答えた。
そして門番なのか先生なのか分かりにくい人は、
「紹介状があればあっちに。無ければこっちね」
2つは全くの逆方向。
そして、
「俺は紹介状が無いからこっちだ」
「俺はあるからこっちか」
「じゃあ、セイラ。会えることを祈ってるよ」
「そっちこそ、落ちるなよ」
星羅はチャーリーとわかれて、指定された場所に向かう。
ついた場所は体育館……と言うよりレンガで出来た倉庫のような建物。
「紹介状を見せてください」
「これです」
「……えっと、ここに向かってくれますか?」
「はぁ」
星羅は困惑した様子で、貰った地図に記されて場所に向かう。
魔法大学の敷地は広く、移動するのも一苦労だ。
生徒は分かりやすいようにリストバンドの様な物をつけている。
「ここ、か」
普通の建物で中に入る。
人の気配は無いが、魔力で確かめると1人だけ人がいる。
――――トントンッ
「開いてるよ」
「失礼します。ここに来いと言われて来ました」
ソファーにドカンと腰を下ろしてる男が目に入る。
歳は50くらいと星羅は予想する。
「あぁ。じゃあ、君がアマキ・セイラだね?」
「はい、そうです」
「じゃあ、これは君に渡すから。それを読み終わったら言ってくれ」
渡されたのは1枚の手紙。
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セイラ殿、元気かな?
セイラ殿は魔法の才能がないんだったな?
なら、紹介状は使えなくなる。
何故だかわかるか?
私の面目が潰れるからだ。
とりあえず、自力で頑張りたまえ。
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と、国王からの手紙だった。
「えっと……」
「ファイナを怒らせるような事をしたのか?」
「ま、まぁ。ちょっとだけ」
「あっはははは。フェルミニアの国王に怒らせるような事とは。まぁ、色々と聞いている」
男はベラベラと話していく。
星羅が魔法よりも凄いのを使える事だとか、星羅の体重身長、その他星羅が何をどのくらい食べたなど、いらない情報まで話してきた。
「ん? そういえば自己紹介がまだだったな。この魔法大学の校長をしているバルラ・リュダンダルフだ」
「えっ!」
「弟がお世話になったようで、ありがとな」
「い、いえいえ。冒険者として普通の事をしたまでです」
この校長であるバルラは商団、マルコの兄だったのだ。
「そうか? まぁ、とは言っても試験は受けてもらう。私だけでは合格に出来ないんだ」
星羅は試験を受ける事を渋々、承諾した。
「それはそうと、バルラさん。王女さまは?」
「……あぁ、その事か。その話をする前に試験から始めよう。相手は私でいいかな?」
「はい、かまいません」
校長であるバルラは「そうか」と言ってから式句を言う。
「“‘戦いの場に’”」
星羅はこの世界で初めて関心することになる。
「まさか、こんな変則的な式句が存在するなんて」
「驚いてもらえたかな?」
建物は姿を変えてレンガ造りの倉庫の様な「戦いの場」に姿を変えた。
「さて、まずはなんの説明からするべきか……この魔法国家ユリエーエは8つの角があるのは知ってるな?」
「八芒星ですからね」
「八芒星……いい響きだね。その八芒星の角にはそれぞれ塔が建っているのは知ってるかな?」
「はい、一応は」
普通に会話をしているが、バルラは無詠唱で岩の塊を何発も何発も撃っている。
それを星羅は避けるだけで、話を聞くことにする。
お遊びのような物だ。
「そうか。その中で今は5つの塔は人がいる。そこの1人が私、土の賢者ことバルラ・リュダンダルフ」
「うわ……肩書きを沢山持ってるんですね」
「まあね。そろそろわかったんじゃない?」
「なるほど。その中の1つに王女さまは賢者としている、と」
「そういう事。そして賢者はこの国から出られない」
星羅は銃弾よりも速くなった岩の塊を避け続ける。
「そろそろファイナに凄いと言わせた魔法を見せてもらいたいな」
「わかりました。いいでしょう。
“‘鋭利の刃 《spica》’”」
9つの噐晶石が式句と反応して魔術が発動する。
「さぁ、避けるのはバルラさんの番ですよ」
光剣は星羅に向かって飛んでくる岩を斬り、バルラを突き刺す為に飛来する。
が、華麗にもバルラは光剣を避け続ける。
星羅は更に、椀飯振舞と言わんばかりに魔術を発動する。
「“‘魔力回廊・形成 《magia andron-formation》’”
“‘魔法陣・展開 《circulus magicae-deployment》’”」
星羅の魔力が膨れ上がり、魔法陣が建物を囲む。
「“‘追跡する氷柱 《jalid aldebaran》’”」
7つの噐晶石が式句と反応して魔術を発動させる。
幾重にもある魔法陣から氷柱がバルラを追いかける。
そして避けきれなくなり、
「参った」
――――パンッ
星羅が手を叩くと魔術が全て消えた。
「うん、問答無用で合格だな」
「ありがとうございます」
「そうだ! 賢者に興味はないか? 今なら光の賢者は開いてるし、空白の賢者もある。そこに新たな属性を入れればすぐに賢者になれるぞ?」
「えっと、例えばこんな感じ?
“‘雷法・紫電’”」
星型の魔法陣が星羅の前に展開されて一角が強い光を放つ。
そして星羅の指にはバチバチッと音をたてて紫色の雷が起こっている。
「す、凄い! それを初老魔賢会に見せればすぐにでも賢者になれるぞ?」
「でも国からは出られない」
「……そうだ」
「なら必要ないな」
星羅はそう言ってから、話を戻す。
さて、“ホタル。”は気がつきました。このままだと、1時間に1更新はストックが足りないということに。