9☆起死回生
そろそろ女の子書きたいんですけど!!
戦闘なんて一瞬で終わらすつもりだったのに、なんで何話も書いてんだろ。
「イクシード―――《固定砲台》」
鎧道が呟いた途端、その目の前には黒く重厚な重機関銃が現れた。
それは360度回転させることができ、スナイパーライフルと同等サイズの弾薬を、サブマシンガン以上のRPSで放つぶっ壊れ兵器だ。
無闇に近付こうとするプレイヤーだけでなく、逃走を謀る者の体力すらも、一瞬で溶かしきる。
オブジェクト破壊速度も、ショットガンを超え銃器の中では最も高い。
「もう近付かせねぇ。覚悟しろよ」
鎧道はグリップを握り込み、箒に向けた重機関銃を吹き荒らせた。
サブマシンガンとは比べ物にならない、重い音が響き渡る。
「おお……」
箒が射線を切るために用いてる大木が、あっという間に悲鳴を上げ始め、今にも倒れそうな不気味な音を鳴らし出した。
「『フォートレス専用重機関銃』のDPSは528で、木の平均耐久力は1500だから…まぁ大体三秒ごとにぶっ壊されんのか。自分で設定した訳だけどこれやべぇな」
瞬間、早速とばかりに弾薬が幹を貫通した。
「―――ッ」
箒は慌てて移動し、別の木に身を隠す。
移動の際の、どうしても身体が露出してしまうタイミングでは、体術とナイフ術を合わせて、その死の雨を回避しまくり斬りまくるが、流石に手数が全く足りない。
一度目の移動にして、早速弾丸が脇腹を掠らせた。
シールドは既にグレネードで割られており、痛みは直接箒の神経を焼く。
回復しようにも、立ち止まる隙が全くない。
「クッソ…ッ!0.3秒だ。それ以上は身体出せねぇ」
今の一瞬の移動から出した数字だったが、それは箒の想像よりも相当に短かった。
それはひとえに鎧道の凄まじいエイム力によるもので、状況の悪さに拍車をかけていた。
箒は応戦すべく、木の脇から左手だけを出してハンドガンを撃ち放とうとするが、腕を出した途端そこに向けて弾丸が襲い掛かるため、おちおち撃ち返すことすら出来ない。
「なんなんだよあのチート武器……ッ!いや考えたの俺だけどさ!!」
箒はその理不尽な弾幕に、つい弱気な言葉を洩らす。
だがチート、という自分の言葉に反応して、ふと昨日の夜に見たTwitterの暴言が頭を過ぎった。
――『フォートレスが強すぎ勝てるわけねーだろ。はよナーフしろやクソ運営』
お前はそれを認めるのか?、ともう一人の箒が問いかけてくる。
「いや、いやいやいやチートじゃねぇし適正だから。強すぎもしねぇし余裕で勝てるわ。見とけ今ぶっ飛ばしてやるから」
結果、全くの謎のタイミングで、箒に一層の気合いが送り込まれることになった。
「要するに移動用の壁を作れりゃ良いわけだから、さっき鎧道との距離詰めた要領で木を切り倒せば……」
箒はそう呟くと、再び破壊寸前まで追い込まれた大木を、それより先に『ジャック・リープ』で斬り払う。
木が倒れ込む先は、次の避難先だ。
倒木によって強引に安全な道を作る。
「っし、上手くいった」
この作戦は無事に成功し、箒はダメージを食らう事無く移動する。
「このまま走り回れば弾薬切れまで持つか…?」
回避手段の確立によって、弾薬切れという一つの勝ち筋を見据える事が可能になった。
しかし鎧道は黙ってそれを許す程、脳死したプレイヤーではない。
鎧道は箒の動きを見て「なるほど」と口を動かすと、即座に対策を練り実行に移した。
「ん?」
突如、箒の隠れる木を襲う弾幕が収まる。
しかしそれは撃ち止めたという訳ではなく、銃声自体は続いており、つまり箒とは違う何かに狙いを定めて弾薬を消費していること。
不思議に思った箒は小さく顔を出し、鎧道の姿を窺う。
その目的はすぐに理解できた。
「あいつ……っ!俺の周囲の木をぶっ壊してやがんのか……っ!!」
鎧道の選んだ作戦は、箒の逃げ道を潰し切ることだった。
気付いた時には既に箒の周りの木や岩はほぼ壊され、倒した一本の木の長さで移動できる場所は残されていなかった。
箒は慌てて鎧道に向けてハンドガンを放ち、同時にグレネードを投げ込むことで、鎧道の環境破壊を止めようとする。
「無駄だ。――《ドームシールド》」
しかし『フォートレス』のアクティブスキル《ドームシールド》に、その全ては阻まれた。
《ドームシールド》とは敵味方の弾丸と爆発物のみの通過を遮断する、ドーム状のシールドを張るスキルだ。
身体は普通に通過でき、武器もまた問題なく通るが、発砲された弾丸と起爆状態に移行した投擲物は、どんなに強力なものでも決して通さない。
鎧道は重機関銃の銃口だけを《ドームシールド》から外に出し、周囲のオブジェクトを破壊していた。
「あーくそ、『フォートレス』相手ならフラッシュグレネード拾っとくべきだった」
箒はフラッシュグレネードを不要と判断した、己のミスを呪う。
光であれば、《ドームシールド》でも防げないため、視力を奪ったのちに距離を詰めることが可能だった。
無い物ねだりをする間にも、箒の周囲は順調に更地へと近づいている。
「ヤバイヤバイどうするどうする」
箒は起死回生の手段を探して、周囲を見回すが何も見つからない。
「もうその辺にフラッシュグレネード転がってたりしねぇのか!?」
する訳がなかった。
だがその代わり、箒は一つのことに気がつく。
「あの、小屋……。ワンチャン行けるか……?」
少し離れたところに、まだ扉の開いていない建物があった。
生きたまま到達出来るか否か、かなりギリギリラインの距離だ。
だが、もしもあそこまで辿り着けて、尚且つ小屋の中にフラッシュグレネードが落ちていれば、それはまさに起死回生。
「……やるしかねぇか」
箒は、鎧道が周りのオブジェクトを撃ちまくっている間に、シールド回復を始めた。
箒はシールドジュエルを握り割り、光の粉を漂わせる。
シールドジュエルと呼ばれる宝石を砕くと、そこから光る粉末が飛び出し、これが全身を覆うことによってシールドのエネルギーが補充される。
この時、素早く移動すると粉末が空気中に散ってしまうため、回復中は移動に制限が掛かる。
走って粉末を散らした場合には、粉末は再び宝石に戻るためジュエル消失の心配は要らないが、やり直しで時間を無駄にする羽目になる。
その後医療キットも使用し、怪我も全て無くなった。
体力合計はLv.2シールドの限界値である175まで戻る。
箒は息を吸い、覚悟を決めた。
「間に合え……ッ!!」
鎧道に気付かれるまでの時間を伸ばすために、木は切り倒さずに音を立てない。
ひたすらの疾走。
死なない為に、死ぬ気で走る。
「あ!?お前反応早すぎんだよ……ッ!」
しかし箒が身体を出した瞬間、重機関銃のエイムは完璧に合わされた。
《空からの警告》が身体中のあらゆる場所で危機を知らせまくる。
「く、そ……っ!」
全ては防げない。
頭部への被弾はダメだ、ダメージが大き過ぎる。
ナイフを持つ右手もダメだ、衝撃で防御が遅れる。
軸足もダメだ、走る速度が落ちる。
代わりに左手は捨てろ
浮かせた足も捨てろ。
脇腹も捨てろ。
「―――ッ!」
回避して回避して切り飛ばして被弾して回避して切り飛ばして切り飛ばして回避して回避して被弾して切り飛ばして被弾して―――。
「が、あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!」
被弾エフェクトが収まらない。
捨てた部位から血が吹き出す。
そして、残り体力7。
死の間際で、小屋に辿り着いた。
「……いっ……てぇ。いや、んなことよりアイテムは……」
箒は痛む身体を押さえながら、周囲を見回してフラッシュグレネードを探す。
それさえ見つければ、勝ち目はある。
「………。」
しかし。
小屋に落ちていたアイテムは、医療キットと三倍スコープ、そして『ジャック・リープ』。
その三つだけだった。
フラッシュグレネードは、どこにもない。
起死回生のチャンスは消えた。
「……あぁ。まぁ小せぇ小屋だしな。元から確率は低かった」
しょうがない、と箒は呟く。
外からは、今にも小屋を壊さんとする重機関銃の音が聞こえてくる。
小屋が崩れる瞬間が、箒の敗北の合図だった。
弾丸がめり込む毎に小屋は軋み、崩壊のタイミングは刻一刻と近づいてくる。
だが箒は、まだ絶望に染まっては居なかった。
「いや。もう一本の……ジャック…リープ」
床に落ちていたもう一つの『ジャック・リープ』を見つめ、何かを考える。
「出来んのか?そんなこと」
製作者本人ですら分からない、未知への挑戦。
それはシステムでは無く、己の限界を問う質問。
箒は『スフィアシップ』を床に置くと、代わりに『ジャック・リープ』を手に取り、両手にナイフを構えた。
――すなわち、二刀流。
それは銃撃戦を謳うLoSでは、誰も選ばない最弱の選択肢だった。
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