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7☆LoSの創造主

気付いている方も多いと思うんですけど、実は僕Apexってゲームが好きなんですよ。この作品のモデルになってるゲームです。

楽しいんで是非皆さんもやってみてくださいw

 物資を集めながらフィールド中央へと進んでいく箒は、順調に必要なアイテムを揃えつつあった。


 お気に入り武器である『ジャック・リープ』というナイフを右手に構え、左手にはハンドガンの『スフィアシップ』を持っている。


 回復アイテムもある程度は揃っているし、弾薬に至ってはそもそも多くは必要ない。

 ハンドガンは最弱の銃系統ではあるが、フルオート武器と比べて弾薬の消費が遥かに少ないという点だけは長所だった。


「とはいえ、Lv.3シールドを見つけられなかったのは結構痛ぇな」


 箒が唯一見つけられなかったのは、紫色に輝く水晶――Lv.3シールドだった。


 Lv.2シールドは75のダメージに耐え、Lv.3シールドは100のダメージに耐える、と数字でいうとそこまで大きな差ではないが、実際に撃ち合うとその影響は露骨に現れる。


 特に上位になると互いがほとんど全ての弾丸を命中させる為、強力なシールドを所持する側が圧倒的に有利だと言えた。


「鎧道の奴はLv.3シールド持ってんのかね……」


 持ってんだろうなぁ、と箒は呟き自問自答を一秒で終わらせる。


 そんなどうでもいい独り言を呟きながら歩いていると、箒の視線の先に森の切れ目が見えた。


 そこからは明るく照られており、空を隠すものが何もないのだと分かる。


「ってことはそろそろ中央か」


 箒はここまで、ほぼ一切の無駄のない最速のペースで漁りを進めてきた。

 しかし鎧道のレベルも相当に高いことを考慮すると、そこまでスピードの差があるとは考え辛い。


 もし仮に鎧道もまた箒と同じペースで進行していたのであれば、今すぐにかち合っても不思議ではなかった。


「そう、不思議ではない。……んだけど、この辺にはあいつ居ねぇだろうな、きっと」


 しかし最も高い可能性を否定して、箒は鎧道が中央まで詰めてこないことを確信していた。


「……つっても一応、念の為。――《星見の言伝》」


 使えるもんは使っとけ、とばかりに箒は『コネクト』のアクティブスキル、《星見の言伝》を発動させた。


 《星見の言伝》の効果は、「自身を中央に、半径75m以内の敵を感知する」というものだ。

 つまり、もしこの付近に鎧道が隠れているのであれば、それに気付き、尚且つ鎧道の位置を知ることが出来る。


「うん――。やっぱ居ねぇ」


 しかし《星見の言伝》は不発に終わり、鎧道を感知することは出来なかった。


 箒は予測通りに試合が進んでいることを確認して、軽く息を吐く。


「まぁそうだよなぁ。あいつも怖いんだろうな、痛覚有りは」


 基本的には使われない、VR機器自体に取り付けられた「痛覚」の設定。

 この欄は普通、上限を設けて感覚だけは伝わる形にし、あとはずっと放置する。


 今、鎧道を襲ってるのは、慣れない設定変更による未知の痛みへの恐怖だ。


 それは例え、格下だと思い込んでいる敵が相手だとしても、精神を強く縛り付ける。

 絶対にダメージを食らわない自信はある――が、もしも偶然背後を取られたら。マグレで命中した弾丸で頭が弾け飛んだら。


 そんな想像が、行動の選択肢を減らす。


「その結果がこの『超遠距離からスナイプ大作戦!』、なんだろ」


 100%ダメージを食らわずに敵を倒す方法なんて、それしかない。


「あとは何処で芋ってるか、だけどそればっかりはなぁ」


 鎧道の試合を幾つか見れば多少の癖を掴めるのかもしれなかったが、箒は鎧道の癖どころか使用キャラすら知らない。

 推測など出来ようはずもなかった。


「んー、『アーチャー』でも使ってんのか?流石にらしくねぇ気もするが」


 故に箒は的外れな予想を立てる。


 しかし箒にとって鎧道の使用キャラなどはどうでも良く、何よりも重要なのはやはり鎧道が待ち構える位置だった。

 『コネクト』は使える武器からして接近の後が勝負であり、離れてチマチマやっていては勝ち目がない。

 故に箒としてはまず、鎧道の居場所を知る必要があった。


 だが今から、どうやって見つけよう?と考える必要はない。

 箒は既に鎧道を炙り出す手段を思い付いていた。


「撃たれりゃ良いんだよ、あいつに」


 そうすれば居場所なんざ一発で分かる――という暴論。


 先に撃たれたら負け、という認識が強いこのLoSにおいては思い付いても誰も実行しない作戦だった。

 実際、余程の実力差がない限り、勝つのは先に撃ち始めた方。


 無謀、と言って間違いない。

 

「さぁどっからでも撃ってきやがれ」


 しかし箒は気にせずに、森から出ようと足を進め始めた。


 外の光が徐々に近付き、同時に箒に死の色が迫る。


 まだ箒の知ることではないが、まさに今踏み出す先には鎧道のスコープが向けられていた。

 超えたら殺される、というラインを分かりやすく空の光が示している。


 そして、そのラインを超えた瞬間。


―――《空からの警告》


「―――っ!!」


 箒の全身に違和感が走った。

 己がスコープに捕えられたと分かる。


 しかしこれは箒の想定範囲内。


 ここからが勝負だ。


――さぁ来た、頭、ぶん回せ……っ!!!


 箒は《空からの警告》を深く読み解く。


 「違和感」と一言に言っても、種類がある。

 それは言葉に出来ない感覚で無数に分類され、その分類すらも箒が作り出した。


 つまり違和感の正体を暴き、データとして解きほぐすことで、「銃を向けられた」というだけの情報を超え、何もかもを明らかにする。


――向けられている銃はなんだ?


 『Qロッド・セシリア』


――銃口はどこを向いている?


 頭部の94cm上。


――距離と方向は?


 北北東の421m遠方。


――必要な情報。


『Qロッド・セシリア』

・初速…920m/s

・弾丸重量…45g

・弾丸サイズ…12.7×99mm

 

『風向風速』…北西 0.4m/s


『大気圧』…1014hpa


『空気抵抗』…現実準拠


『重力加速度』…9.810m/s^2






――解け。






 











「―――ここだ」


 箒は右手に握る『ジャック・リープ』を振り下ろした。


 虚空を掻いたかのように見えたその一閃は、遥か彼方より飛来した音速を超える弾丸を切り裂き、二つに分けた。


 箒の動体視力などたかが知れている。

 当然、弾丸を目で捉えてなどいない。


 現実世界では絶対に不可能な、このLoSの世界だからこそ出来る、完全なデータと計算に基づく弾道の推測だった。


 箒の背後で、二つの鉄塊が落ちる音が鳴る。


 ナイフを振り抜いた箒はゆっくりと顔を上げて、銃声の先に眼光を向ける。


「……見つけたぞ」


 LoSの創造主は、悪魔のように笑っていた。


細かいことは雑ですが、どうかご勘弁ください……

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