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【書籍化】アルマーク ~北の剣、南の杖~  作者: やまだのぼる
第十二章

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休憩

「さあ、お菓子を食べよう」

 モーゲンが誰よりも嬉しそうにそう宣言する。

 全員で輪になって座り、真ん中にランプを置くと、モーゲンは鞄から焼き菓子を出して、それぞれに配っていく。

「さざなみ通りで一番おいしい店のを持ってきたからね」

「ありがとう」

 フィタが嬉しそうに受け取る。

「いい匂い」

「これ、食べたことある」

 そう言ってザップも目を輝かせる。

「すごくおいしかったやつだ」

「なかなか買えないんだよね。ここのお菓子」

 ウェンディもそう言って微笑む。

「モーゲン、いったいどうやってこんなに仕入れたの」

「ふふふ」

 モーゲンは得意気に微笑む。

「それは内緒」

「ふうん」

 ラドマールはつまらなそうに受け取る。

「まあ、こんなものでもないよりはマシか」

「食べてごらん。おいしいよ」

 アルマークはそう言いながら、菓子を口に放り込む。

 アルマークには食べ物のおいしいまずいはあまり分からないが、歯応えが良く、きっとおいしいのだろうと思った。

「ふん」

 ラドマールは菓子を口に放り込み、水をぐびぐびと飲む。

 アルマークは、ラドマールがさっきから歩く途中にもずいぶん水を飲んでいたのを思い出した。

「まだ水はあるかい」

 アルマークに尋ねられ、ラドマールは嫌な顔をする。

 ウェンディの方を向いて尋ねる。

「この近くに水場はないのか」

「この近くにはないかなぁ」

 ウェンディは首をかしげてそう答えると、ラドマールの水筒を見る。

「水、なくなっちゃったの?」

「まだある」

 ラドマールがそう言って水筒を振ると、ちゃぽん、と底の方で頼りない音がした。

「だいぶ飲んだね」

 ウェンディは微笑んだ。

「もう飲まない」

 ラドマールはしかめ面で答える。

「それなら足りるだろう」

「僕のを飲めばいいよ」

 アルマークは自分の水筒を見せる。

「自分用のはもう一本持っているから。これは誰かが足りなくなった時用だ」

「だって」

 ウェンディはラドマールに微笑みかける。

「よかったね、ラドマール」

「ふん」

 ラドマールはそっぽを向いてもう一口水を飲んだ。



 不意に、賑やかな声が近付いてきた。

「ネルソンたちだな」

 アルマークが微笑む。

 その言葉通り、わいわいと話しながら姿を現したのはネルソン率いる第2班だった。

「着いたぜ。ここがイリビノタルホグサの採取場所だ! ……あれ、アルマークたちもいたのか」

「やあ、ネルソン。順調そうだね」

「まあな」

 胸を張るネルソンの隣で、ノリシュが抗議の声をあげる。

「聞いてよアルマーク。こいつ道をちゃんと歩かない」

「な、なんだよ」

 ネルソンがうろたえるが、ノリシュは構わず続ける。

「こっちの方が近道だから、とか言って、わけのわかんない獣道みたいなところにどんどん踏み込んでいくの」

「だから早く着いたろうが」

「2年生は来年どうすんのよ!」

「さすがネルソンだな」

 アルマークは笑った。

 ボルーク卿の庭園の迷路を、まるでためらうことなく先導していたネルソンの姿を思い出す。

 ネルソンにとっては、森の道もちょっと大きな迷路くらいの感覚なのだろう。

「こっちの方が面白かったよな?」

 ネルソンがそう言って2年生を振り返り、2年生たちは「おもしろーい」「でも変な道だった」などと口々に好きなことを言う。

「ほら、面白いってよ」

「面白けりゃいいってもんじゃないでしょ」

 二人のやりとりを、キュリメとピルマンが後ろで苦笑いしながら見守っている。

「ネルソン、ここで何ヵ所目だい」

 アルマークが尋ねると、ネルソンはにやりと笑って指を三本立てる。

「これで三つ目だ」

「早いな」

 アルマークは目を丸くする。

「僕らはまだ二つだ」

「俺たちは近道しまくってるからな」

 ネルソンは笑顔で言うと、でもみんなまだ二つくらいのもんだと思うぜ、と続ける。

「途中でレイラたちとすれ違ったけど、まだ二つ目が採り終えたところだって言ってたしな」

「そうか。レイラ、仲良くやってたかい」

「多分な」

 ネルソンは頷く。

「ガレインが先頭を歩いてたよ。レイドーが一番後ろにいて、レイラは真ん中辺りで2年生と歩いてた」

「そうか」

 あのレイラが、2年生と。

 本当はそういうことは苦手だろうに。

 変わろうとしているんだな、レイラも。

 アルマークは微笑んだ。

 さあ、僕たちも頑張ろう。

「ちょっとウェンディ、聞いてよ。ネルソンがさー」

「モーゲン聞いてくれよ。ノリシュの奴がよー」

 他のメンバーに絡み始めたノリシュたち3年生を尻目に、2年生たちはあまりクラスメイトとの再会に嬉しそうな顔はしていない。

 ネルソンのグループの子たちはラドマールたちの方に目もくれず、自分たちで盛り上がっている。

 ザップとフィタは二人だけで所在なさげに立っているし、ラドマールはそちらを見ようともせず、岩場を見上げている。

 ラドマールの目には、何か暗い情念のようなものが宿っているように見えた。

「よし。そろそろ行こうか」

 アルマークは仲間に呼びかける。

「次はオリハラマビカリソウだったね」

「うん。みんな行くよ」

 モーゲンもそう言って2年生を集める。

「じゃあノリシュ、またね。ネルソン頑張って」

 ウェンディがネルソンたちに手を振りながら近付いてくる。

「ラドマール」

 アルマークは岩場の上のイリビノタルホグサから目を離さないラドマールに声をかけた。

「行くよ」

 返事はしなかったが、ラドマールがゆっくりと近付いてくる。

「行こう」

 アルマークたちが歩き始めると、背後でネルソンとノリシュの

「みんな見てろよ! 俺が登って取ってくるからな」

「だから、全部あんたが一人でやるなっつーの!」

 という賑やかなやりとりが聞こえてきた。





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― 新着の感想 ―
ラドマール、お礼は言えるようになろうね。
[一言] ラドマールも何やら鬱屈したものがありそうですねぇ。 気位だけ高くて何にもできないんじゃさもありなんでしょうけれども。
[一言] ただの地位に押しつぶされている不出来な王子様かと思っていたけど実はラドマールが人間蛇罠だったりして?
2020/05/08 10:59 退会済み
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