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【書籍化】アルマーク ~北の剣、南の杖~  作者: やまだのぼる
第七章

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ロズフィリア

 選手席に戻ったネルソンを、アルマークたちが笑顔で出迎える。

「やったな、さすがネルソンだ」

 アルマークがネルソンの肩を叩く。

「相手に全く攻撃の隙を与えなかったな」

「おうよ」

 ネルソンは笑顔で頷く。

「俺の作戦勝ちだ」

 その言葉に、レイドーとモーゲンが顔を見合わせて何か言いたそうな顔をしたが、アルマークが笑顔で

「そうだな」

 と頷いたので、二人も言葉を飲み込んだ。

「……僕らも一生懸命応援したけど」

 モーゲンが気を取り直したように言う。

「応援席の女子の応援が凄かったから、かき消されちゃったよ」

「あれは凄かったね」

 レイドーも頷く。

「まさかネルソンがあんなに女子に人気があるとはね。今日一番の黄色い声援だったんじゃないか」

「べ、別に人気なんてねえよ」

 ネルソンは否定するが、頬が緩んでいる。

「特にノリシュ」

 とレイドーは観客席を見る。

「君たち、付き合ってるのかい?」

「はあ?」

 ネルソンは目を見開く。

「そんなわけねえだろ。バカなこと言うなよ」

 だがレイドーはクールに続ける。

「別に恥ずかしがることじゃないだろ。お互い好き同士なら付き合えばいいんだ」

「お互い好き同士ってお前……!」

「その方が自然じゃないか」

「へえ、付き合うってそういうものなのかい」

 アルマークが興味深げに話に加わろうとする。

「そういうもんじゃねえ! アルマークも入ってくんな!」

「……もういいかしら」

 顔を真っ赤にしたネルソンが両手を振り回した時、後ろからレイラの冷静な声がした。

「お、おう」

 ネルソンが気圧されたように横に避ける。

「私で優勝を決めてくるから」

 レイラは静かにそう言いながら、ゆっくりとアルマークたちの脇をすり抜ける。

「頑張って、レイラ」

 アルマークが声をかけ、モーゲンが隣で頷く。

「試合中、応援は要らないわ。気が散るから」

 レイラはアルマークを横目でちらりと見てそう言うと、振り返らずに試合場へと歩いていく。

「うおぉ、レイラのやつ気合い入ってんなぁ」

 ネルソンがその背中を見て呟く。

「背中から闘気が立ち上ってるみたいだぜ」

「そうだね。すごい意気込みだ」

 アルマークは頷いた。

 背筋を真っ直ぐに伸ばし、揺るぎない足取りで試合場の中央へと歩いていくレイラ。

 ウェンディともエメリアとも違う、彼女の存在それ自体から発せられる気高い強さ。

 しかし、アルマークの目に、不意にその背中が以前の記憶と重なって見えた。

 夏の休暇初日。

 一人、学院の庭園を硬い表情で歩いていたレイラ。

 無言で正門の方へと歩き去る背中。

「……頑張れ、レイラ」

 不吉なイメージを払い除けるように、アルマークは小さく口の中で呟いた。



 ロズフィリアは既に試合場の中央で微笑みながら、レイラが来るのを待っていた。

 彼女は、会場にまだ先程のネルソンとエストンの試合の余韻が残る中、何の気負いもなく、まるでその辺に散歩にでも行くかのようにすたすたと歩いてきて、ほとんど誰にも気付かれないうちに試合場の中央に立っていた。

 ネルソンの勝利にはしゃいでいたノリシュたちが、既に次の選手が立っているのを見て慌てて静かになったほどだ。

「待ったわ」

 レイラが自分の前に立つと、ロズフィリアが疲れたようにそう言った。

「あなたが来るのが早いんでしょ」

 レイラは冷たい目を相手に向ける。

「今日は私が勝つ」

「2組の男子、強いわね」

 ロズフィリアはレイラの言葉に構わずそう言って、2組の応援席に目を向ける。

「特に、最初の子。アルマークって言ったかしら。彼、毛並みが違うわね」

 そう言って、優しい眼差しで笑う。

「みんなも仲良さそうで、いいチーム。それに比べてうちの男子は口ばっかり。だらしなくて」

「他の子のことはどうでもいいのよ」

 レイラはあくまでロズフィリアから目を逸らさない。

「私は今日はあなたに勝つために来た」

「そう」

 ロズフィリアは笑顔で頷く。

「光栄だわ。でも、優勝はさせないわよ」

「正直、優勝なんて本当はどうでもいい。あなたに勝てるなら」

 レイラの言葉に、ロズフィリアは目を見張る。

「ますます光栄ね」

 レイラの眼光が鋭くなる。

「その余裕、すぐに消えるわよ」

「ずいぶん突っかかるのね。まあ確かに、私の上にはもうウォリスしかいないものね」

 その言葉に、レイラの目がさらに険しさを増すが、ロズフィリアはおどけたような表情を作って肩をすくめる。

「頑張って私を超えれば、頂上はすぐそこよ」

「頂上?」

 レイラは鼻で笑う。

「順位が二位だったのがずいぶんとご自慢みたいね。でもおあいにくさま。私が目指してる頂上は、ここの成績トップとか、そんな低いところにはないの」

 吐き捨てるようにそう言い、ただ、と続ける。

「道の途中にあなたがいるから、超えていく。それだけのこと」

 レイラの刺すような視線は、大半の男子生徒も目を逸らすほどの迫力だが、ロズフィリアはそれを平然と受け止めた。

「どうぞ超えてみなさいな。高い目標を掲げるのはあなたの自由だけど、目標倒れになっちゃったらこう呼ばれるわよ」

 ロズフィリアはちらりと横に目をやり、審判のボーエンが近付いてきているのを確認してから、笑顔でゆっくりと言った。

「口だけの、レイラ」

「……試合が終わったときには」

 レイラは低い声で言った。

「自分の立場を分からせてあげる。 こんな低いお山の大将気取ってるのがどんなに恥ずかしいことか」

 その言葉に、ふふ、とロズフィリアは楽しそうに笑う。

「了解。じゃあ、楽しみましょ」




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― 新着の感想 ―
これは素直に怖いわ
[一言] なんだろうね、男子の煽りは、このヤロとムカつきながら読むが、女子の煽りトークには、いいぞもっとやれと思ってしまう
[良い点] なんか今までで一番バチバチしてる……かっこいい
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