一章 八話.朝食
「うん、すごく美味しいです!」
「あら、それはよかったわ」
俺とソフィアは、和食に似た朝食に舌鼓をうちながら談笑していた。
やはり、馴染みのある料理なので俺の口にも合う。まさか、異世界にまできて和食が食べれるなんて思いもよらなかった。それにソフィアが作る料理の味や盛り付け方ときたら、俺が日本に居た時に食べた一級料理店にも匹敵するだろう。
店を出せるどころか、色んなところからヘッドハンティングが来そうだ。
「そういえば、ミルナちゃんはどこ行ったんですか?」
俺はキッチンを見回しても、ソフィアの娘、ミルナが見当たらなかったのでソフィアに聞いてみる。
だいたい時刻は七時前後だと思うのだが、未だミルナの姿を見ていない。
「ミルナはまだ寝てるかな? いつもなら早朝からソファに寝そべってあやとりして遊んでるのに」
「そうなんですか」
一つ、ソフィアが言い放った言葉に引っかかる。
あやとり? 今、あやとりって言ったよな?
もしかして、俺以外に日本から転生してきた奴がいて、そいつが日本の文化を広めたとかなのか?
確かに、あの腑抜けた神なら普段からミスをして、行き場を無くした可哀想な人間達を片っ端からこの世界に送っていそうだ。
「なんか言った?」
すると、扉がガチャっと開いてミルナがキッチンに入ってきた。
噂をすれば本人登場なんてよくある事だけど、まさかこんなにもすぐに現れるなんて......噂って怖いね。
昨日のように不機嫌そうな声でそう言ったミルナは、無言で俺の前に座って準備された朝食を食べ始めた。
なんと言うか、すごく気まずい。
「ミルナ、おはよう」
「おはよう母さん」
ソフィアが微笑んで挨拶したのに対して、ミルナは無表情に加え飄々とした口ぶりで吐き捨てた。
「ほら、ソウマ君にも挨拶しなさい」
「うるさいなぁ」
挨拶を促されてソフィアを睨んで舌打ちした後、俺の方を向いて如何にも心がこもってない挨拶をした。
「おはよーございまーす」
「あ、あぁ、おはよう」
少し戸惑いつつも、挨拶をされたら返すというのが俺の主義であるため、一応挨拶を返しておく。
もしかして、俺、嫌われてるのかな?
朝食を半分ほど食べたミルナは早々と立ち上がり、ドアの向こうへと歩いていった。
「あらあら、今日は特に機嫌が悪そうだわ」
「いつもって、どんな感じなんですか?」
「んんー、いつもは少し不機嫌そうなところもあるけど、基本無口な感じかな」
「そ、そうなんですか」
ということは、俺が来たから不機嫌でいるみたいなことはなさそうで一瞬ホッとする。
ミルナとも仲良くしないとこの先ややこしい事になりそうなため、早いうちに喋れるくらいにしておかないと。
とはいえ、両者年齢は近いもの、思春期という海で泳いでいる真っ最中であるからして、話しかけるなんてとても難しいことだ。
さて、どう攻略していこうか。