一章 六話.思わぬニッポン
更新が遅くなって申し訳ごさいません。
俺は村に到着して早々、カザンさんの助力もあって寝床を提供してくれる村人を見つける事ができた。
その村人は、皆を出し抜いて一番に手を挙げてくれた人で、茶髪を腰らへんで縛った柔和な顔立ちの美しい女性だった。
早速、家へと案内してくれたので、俺は後を追うように着いて行くと、木でできたログハウス風の立派な建物が俺の目を奪った。
村の中では、結構裕福な家庭なのかな? 他の家は積み石や泥壁で造られた家だったし、見比べるとその違いがよくわかる。
「ここが私の家です」
「随分とご立派な家ですね」
「いえいえ......あっ、まだ名前を言ってなかったですね、私はソフィア・ナナリーゼと言います、よろしくお願いしますね」
「俺は、タカギ・ソウマと言います。ソウマと呼んでください」
「はい、ソウマ君」
そう言って自己紹介を終えた俺とソフィアは、家のドアをガチャリと開けて中に入る。
家の中に入って気付いたのだが、ここは日本と同じで玄関で靴を脱いで中に入るらしく、俺も見慣れた文化で内心ホッとする。
なんか、外国みたいに家の中を外履でウロチョロするのは気になってしまうからね。
靴を脱ぎ、中に入ってみると、森の中にある別荘を連想させるような部屋になっていた。
テレビなどの電化家具はないもの、暖炉やソファ、ロッキングチェアなどが置かれており、全体的に落ち着きがある雰囲気を醸し出していた。
もしかして、この世界と日本の文化や価値観ってそう変わらないのかな?
ソフィアが暖炉の前にあるソファに腰を下ろして待っていてねと言ったので、俺はフカフカのソファに腰をかけた。
ソファは、羽毛で出来ているのか、飛び跳ねれるほどにフカフカで少し驚いた。
疲れている体には、ダメな誘いをかけてくる悪魔なのかもしれない。
急に猛烈な眠気を感じたので、目頭を押さえて必死に堪える。
すると、二階があるのか階段をドドッと勢いよく降りる足音が聞こえたので、そちら側を見ると同時に扉がガチャっと開いた。
「あんた誰?」
扉を開けて、そう第一声をナメるような口調で飾ったのは、十四歳くらいの少女だった。
その後ろから、小走りでやってきたソフィアが「こら」と嗜める。
「ごめんなさいね、ソウマ君。この子、相変わらず口が悪くてね」
そう苦笑いをしながら言うソフィアに、俺は「大丈夫ですよ」と返しておく。
すると、少女は「余計なお世話だ」と言ってどこかに行ってしまった。
容姿から見て、反抗期の真っ只中といったところかな。俺もそんな時期があったし、経験した者同士よくわかる。
「えっと、さっきの子は、ソフィアさんの娘さんですか......?」
俺が首を傾げながらそう質問すると、ソフィアは「はい」と首肯した。
「あの子は、私の娘のミルナ・ララリーゼと言います。ああ見えて、最初は大人しく優しい子だったんですが、いつしかあんな風になってしまって......」
「大丈夫ですよ、誰が通る通過点ですから、安心してください」
「そうですね、私はあの子を見守ることしかでしませんが、あの子にとってそれが一番の拠り所なのかもしれないですね」
「はい」
よく俺も、親の言葉一つ一つに苛立って歯向かったりしてたっけ。なんだか、懐かしい気もするな。
......現役十七歳反抗期の真っ最中の俺が言えることではないが。
まあ、経験上で言えば典型的と言えば典型的なのだが。
あれから、日が暮れるまで少女は俺の目の前に姿を見せず、夕食になってからようやく見かけるようになった。
「はい、たんと食べてください!」
「いただきます」
「......」
俺はしっかりと挨拶をしてから、夕食に向かった。
夕食はソフィアさんが作ったのだが、並べられたものに若干驚きを隠せない。
そこには、山菜を盛り合わせたサラダに、焼き魚の切り身、白米に味噌汁といった、360°どこから見ても日本伝統の料理、和食と言いざる終えないものだった。