序章
次話がプロローグとなっております。
ガタンッ—————
古びた旅行鞄が、音を立てて落ちた。
この田舎町には人の笑い声ももはや無く、風だけがそこにあった。
かつてこの場所で戦った者達がいた。
ある人は言った。
「 来世があるのならば、お前に伝えたいことがある 」
純白の軍服に身を包んだ彼は、黒の軍服を着た私に言う。
戦の最中の出来事だった。
戦況は悪化し、軍の重役達が王の間に集まりだす。
「 覚えておいてくれ 」
そして、彼は白銀の王宮廊下を歩いて行くのだ。私に振り向かず、彼は歩く。ずっとずっと、私のの前を歩いていく。
そうして彼は、死んでいった。
その最後が、語られることは無かった。
そして彼が、私にその言葉を告げることも無かった。
彼が私に何を伝えようとしていたか、私にはわからない。
けれど、彼が言いかけた言葉があった。
「 アイシテル ———–— 」
それが、私の耳に届くことは無い。
私は死んだのだから。だから、来世としてのこの命にもその言葉が私に響くことは無いのだろう。
けれど、何故諦めきれないのか。いつから人の心を得たのか。
私は、《 人形 》
かつて、そう呼ばれた。
「 貴方だけの《 人形 》 」
最後に笑うのは貴方じゃない。いつも、私だ。
始めたばかりですが、ぼちぼち投稿していきますよろしくお願い致します。