その後の戦場→カスタマイズ
禁忌の聖書
3回破ると、神の裁きにより黒い光と共に空に消えるとされている。
1つ、仲間の種族間の差別を禁ずる
2つ、人間以外に街を悟られてはならない
3つ、敵意のない殺害行為は禁ずる
4つ、全ての人は同じ権利を持つ
5つ、刹那の果実を食してはならない
6つ、失楽戦争において、下記の掟は無視する
7つ、以下をもって神の掟とする
「君達は……あの脆い兵士の仲間かなぁ?」
「えぇ。あのライムが、簡単に殺られる筈ありません」
「お前が殺したんだろ?ライムはタイマンじゃ日本軍最強の兵士。ナツメの言う通り、簡単に殺られるはずがねぇ」
ザクロは持っている槍を前に突きだした。
彼女達、アリドはライムが死んだ場所に来ている。
ライムの反応が消えた瞬間に異変を感じ、復讐も兼ねて6人で叩き潰すために。
「それでも6人はちょっと多すぎるよ……。一人ずつにしてくれないかなぁ?」
男は苦笑いと震えた声で問う。
しかし、それが叶うはずもない。
「……その目だと、どうしても僕を数で押したいみたいだねぇ」
「ライムの仇をとりたいと思う気持ちが全員にある。そうだろ?」
ジャックがナイフを取り出して言う。
「そう、怒ってるのは私だけじゃない。みんなですから」
ナツメは両腰からマシンガンを取りだし、構えた。
「マシンガンの両手持ちなんて当たるわけないだろう!?しかも君の腕もボロボロになっちゃうよ?」
男は笑いながら言う。そして、真剣な眼に変わった。
「嘗められたものですね。まぁいいです。皆さん、いきましょう」
アリドの皆が位置に着くのを黙って男は眼を光らせながら見る。
「僕はいつもどうり下がります。前線は頼みますね!」
大砲使いのミントは後ろに下がる。
「もういいかなぁ?……クク……この戦い……僕の力を存分に使えそうだよ!」
その言葉を聞いた瞬間、ザクロが先行して前に出た。
「俺から仕掛けるぜ!支援を頼む!」
様子を見るため、とりあえずの一突き。それを男は屈んでかわす。
その屈みにナツメはマシンガンを撃つ。
「うぉっと!?危ないじゃないか!君ぃ!」
男は屈んだ状態で右にジャンプする形で避けた。
____だが。
(なぜここに槍が!?)
避けた先に、槍が空中に置かれていた。
ザクロの先読みで避ける位置に槍を突き出していたのだ。
「くっ!」
ギリギリで頭の直撃は免れたが、手が掠り、血が飛び散る。
「もっと全力で楽しもうぜ、この戦いをよぉ!」
ザクロはさらに近づき、多段突き。
この人外の早さの突きを一回でも避けた者はいない。
「くぅ……『影武者』!」
その声と共に、血が飛び散った___
(………どうだ?)
「君たちは凄い。素直に誉めてやろう」
腹が穴と血だらけになってもなお、生きて立っていた。
「なっ……!お前生きて!?」
「こっちだ」
(後ろから!?)
声のある後ろに振り向くと、無傷の男が立っていた。
そして、
「『腐喰香』!」
拳が当たる音と嫌な香りと共に、ザクロは倒れた。
####
見渡す限り草と木と川。
生き物らしい生き物も見当たらない。
たまに現実世界と同じ様なトラックが数台道を通っただけだ。
だが今いるのは俺とルーシャ、二人だけだ。
「ルーシャ、この世界の食事はどうなっているんだ?全く腹が減らないんだが」
「……?食事は普通2~3置きに食べるものですよ?」
どうりで腹が減らないわけだ。
だが食事はするという概念がある以上、餓死という概念も同時に存在するという事だ。ゲームの枠を超え本当の異世界に思えてしまうほどに凄い。
「私はもう一週間ほど食べていませんが……」
「………」
ルーシャの為にも早く次の街へと行かないといけないが、周りに街という街が一向に見えない。
あるのは今通り過ぎた石でできた二つの柱のだけだ。
その柱と柱の間には森があり、進むことができない。
「おい、兄ちゃん。何してんだ?」
後ろから声が聞こえ、振り向く。
そこにはトラックの窓から顔をだした若い男性だった。
「その先は狩場で、ここ1年は狩れるような生き物はいねぇ。この街に用があるんじゃねぇのか?」
「あぁ、すまない。ちょうど街を探してるところだ」
「やっぱアンタ、異世界人だろ?教えておいてやる。この柱と柱の間が街に続く道なんだ」
若い男は車から降りて、柱をを指さす。
指を指す方向は柱と柱の間の道なき森だ。
「道が見当たらないが」
「行けば分かるさ」
男は面白そうに笑う。
「一つ聞くが、異世界人はよく見るのか?」
「あぁ。だがお前みたいなデカイ人は少ねぇけどよ」
「移動中すまなかった。それじゃ」
「気にすんな。誰だって最初は分かんねぇものよ」
若い男はまたトラックに乗り、俺たちが進んできた道を走って行った。
「ルーシャ。行くぞ」
俺は柱と柱の間に手を伸ばす。
すると驚く事に、手が森の中へと消えた。
危険を感じ、手を直ぐに戻した。
「ここはそのまま歩いて入るんです。付いてきてください」
「あ、あぁ」
俺はルーシャの後に続いて、森の中へと足を踏み入れた。
そういえばルーシャはこの世界の住人だ。最初からルーシャに聞けばよかった。
中に入り目を開くと……そこはちゃんと街があった。
「森は……なるほど。幻覚か何かで見せかけているのか」
街の感じは先ほどとあまり変わりないが、大きな道や店、人の多さなどさっきいた街が田舎とするとここは都会という表現が分かりやすい。
それと、ここに入った瞬間ルーシャが俺の後ろで袖を掴んできた。
「どうしたんだ?」
「この街は奴隷商人がたくさんいるので。怖い……です」
服が微かに小刻みに揺れている。この感じは間違いない。
ルーシャが震えている。
(奴隷商人か……ならルーシャが奴隷と悟られたら何かとまずいな……)
「ならまずは服だ。今の手持ちで一着くらいは買えるだろう」
あの男から盗んだ金がまだ多く残っていた。値段によっては食事くらいもできるだろう。
俺たちは少し進んだところに見つけた洋服屋らしきマークの店に入った。
「は~い、いらっしゃーい……ってまぁ!こんな店に男と奴隷がどんな御用で?」
「コイツの服を買いたい。できれば傷を隠せるやつがいいんだが」
「これはこれはペット用奴隷でしたか!それじゃこの私めが責任を持ってコーディネートして差し上げましょう!ささっ、こちらへどうぞ!」
俺はルーシャを独特のしゃべり方を持つ店員に引き渡した。
何があってもいいように、熱探知をかけながら待つことにする。
奴隷に服を買うなど頭がおかしい扱いされ拒否されるかと思ったが、ペット用奴隷……?とやらのおかげでうまく通っているみたいだ。
ペットとは表現したくはないが、あながち間違っていないのも事実。しょうがない。
20分程すると、店の奥から店員とルーシャが出てきた。
「あの……どうでしょうか?」
少し照れくさそうにこちらを見た。
初めての洋服で嬉しいのだろう。
「とても似合っている。その様子だと喜んでいるみたいだな」
恐らく21世紀に流行ったらしい女子向けファッション、いわゆる「ゴスロリ」と言われるファッション。
生前の頃に、そういうのが好きなヤツがいて覚えてしまったものの一つだ。
確かに傷はできる限りの傷は隠れている。オーダーどうり。
だが。
「これ、絶対高いだろ」
「はい!一セット5000円です!」
「高いな。買うには何かして稼がないと無理だ」
「……のところ、500円でどうでしょう!」
「安いな、買いだ」
「……はい!お釣り600円!ありがとうございました!……ってすんなり買わないでぇ!」
「お前が値下げしたんだろうが」
そろそろ呆れてきた。
ルーシャも立場を失って戸惑っている。
「で?なんでこんな値下げをした」
「私、奴隷が大好きなものでぇ……つい興奮してしまいましたぁ……。この街に店があるのも、この街に奴隷が集まるからなんですよぉ」
急に言葉がねっとりしてきた。なんだが気味が悪い。
「でもこの娘、奴隷から解放されて貴方の下に付いてきてる感じですよね。だってペット奴隷なんてものないですし、会話に違和感感じましたし」
「……その観察力、何か裏があるな?」
俺は左腰の銃を握る事だけ見せた。ルーシャも俺の隣に近寄る。
すると店員は何かにやけた顔になる。
「貴方、気に入ったわ。でも大丈夫、安心して。私は(わたくし)は貴方の味方よ」
「何を根拠に?」
「私、実は奴隷制度自体は反対です。ですが身分差といいますか?自分より立場の低いという存在が大っ好きなのです!」
「……」
(嘘はついていない……が)
「根拠になってないな」
「根拠なら500円に負けたところが根拠になるかしら?まぁ直ぐに信じなくて結構です」
「……まぁいい。一つ聞きたいことがある。何か金を稼ぐ方法を教えてくれ」
「それならこの店を出て左、冒険者の集会所があるわ」
「助かった。気が向いたらまた来てやろう」
俺はルーシャを連れて外へでた。
あの店員に言われた通り、左には大きく剣と杖と弓のマークが描かれた、城にしては小さく、屋敷にしては大きい建物があった。
(そういえば店員の名前聞いてなかったな。まぁいいだろう)
俺たちはその建物へと足を踏み入れた。
人を平気で殺すのにライムさんルーシャには優しすぎる……
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