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工房

「大丈夫でしたか?ご主人様」


何が起きたのか分からなかった。

何を聞かれたかも分からないくらいに混乱もしていた。


だが、その声と呼び方には聞き覚えしかない。


「お前は……?」


信じたくはない。当然だ。

何せいつもと姿がまるで違う。


いつもは濁りの無い黒の髪。だが今はそのまま色が抜け落ちたかの様な銀髪。

服はいうまでもなく、目の前にいるリリスと同じ系統のやけに露出がある幻想的なドレスに、黒の翼。こんな服装は見たことがなく、余りに表現は難しい。

そしてさらに、いつも灰色をした目は黒とあおのオッドアイになっていた。


これだけ違う。だけど顔は、その顔はアイツ以外あり得なかった。


そして、口をゆっくり開けて言う。




「……ルーシャです。心配掛けました」


やはり笑顔で、言って見せられた。


「なんで……お前……が?」


「話してる時間はありません。逃げることだけを意識してください」


回りはさっきとは打って変わって夜。

白い霧に覆われた草原に、雲が漂う夜空には、一つの上弦の月だけが白く輝いていた。


逃げようにも隠れる場所はない。全神経を研ぎ澄ませて、回避に専念するしかない様だ。


「……やって……くれるじゃない」


濃い霧の中から、ゆっくりと翼を広げた堕天使が姿を表した。


「貴女……勝ったのね」


「……誓いは、この場所で」


「なるほど……失敗ばっかりね……アタシ。貴女なら……執り込まれてくれると……思ってたのに」


「夢の中だけど、誓ってくれた。もうご主人様は……誰にも渡さない」


右手に長い棒の様な黒い炎が手に宿る。長さは身長程にまで伸び、それ以降は上弦の様な曲線を描いたものになり、その武器に風が静かに辺り、炎は消えた。


鎌。それが手には残っていた。


「この結界?は……貴女の固有魔法?」


「堕天使の時点で、全ての能力は固有魔法って思っていい」


「そう……愚問だったわね。……逃げてもいいかしら?」


神器とはきっとさっきの巨大な矢の事だろう。

恐らくあれが最強の一撃で、今から新しく敵の相手は出来ないから逃げたいという事だと推測できる。


「嫌。チャンスは逃がさない。ここで仕留め…」「やめろ、ルーシャ」


え?という声がルーシャから聞こえた。


「今は助けてくれてありがとう。だが、倒す必要はない」


「で、でも」


「推測だが、まだその姿に馴れてないだろう?後、これは俺の敵だ。俺が倒さなきゃ意味がない」


「……ご主人様が言うのなら仕方ありません。分かりました」


ルーシャは少し寂しい様な、悲しい様な顔をしながら後ろに下がった。


「その首、預けておく。……ライチの希望通り、俺がお前を殺す」


「……怖い顔。まぁ……助けてくれることには感謝するわ」


俺はルーシャの方を見て頷いた。

夜空が晴れていき、だんだんと昼へと光が戻って往く。


草原は変わらない、さっきまでいた風景が舞い戻った。


「それじゃ……また逢う日まで」


翼を羽ばたかせ、リリスは空へと飛び立っていった。


対照的にルーシャは地面に倒れこみ、いつもの黒髪と灰色の目の見慣れた姿に変わっていた。


「う……くっ……」


「大丈夫か、ルーシャ?」


「あ…あぁ……」


声になってない渇いたうめき声。

結界を張るほどの魔法だ。身体に相当負荷が掛かっているに違いない。


だが肩で息をするのではなく、呻き声を発するという苦しみ方はきっとただ事ではない。


「ご……主人様。……ご……無事……で」


声にならない声を微かに聞き取った。今にも死にそうな、そんな声だ。


「助かった。ありがとう、ルーシャ。今はもう休んでくれ」


「……は…い」


そういうと、眠るように静かに目を閉じた。

まだ死んではいない。気絶しているか寝ているかだろう。


「さて、また謎が増えたわけだが……とりあえず、ルーシャが無事でよかった」


俺は街に入り、一人の少女を抱えて店に戻った。






####







「あ……無事だったのね!」


「あぁ。……何があったか、教えてくれ」


店に入って直ぐに問い詰めた。

ケイトなら何か知っているはずだ。


「急に目が覚めて数秒も経たない内に直ぐに店を飛び出たのよ。流石にわたくしも家からでて追いかけてみたんだけど、直ぐに見失っちゃって……」


「様子は?」


「魂が抜けたみたいな無表情な顔だったわね……かなり不気味だったわ」


(……こればかりは本人から聞くしかない……か)


「色々すまなかったな。俺はルーシャをベッドまで連れていく」


「役に立てなくてごめんなさいね」


「いや、どんな風にここを出たか知れただけでも十分だ。ありがとう」


部屋を出て、二階へと上がり部屋に入る。

そしてルーシャをもと居たベッドに再び寝かせた。


「お前は……一体何の誓いをしたんだ?」


あの闇夜、確かに聞こえた一言。

俺とは何も話していない、寝ていたため他の人とも接触をしてないはずだ。


たが奴隷の頃の話なら別。聞いてみないと真相は分からない。


「今度こそ離れない……絶対に」






####






「使いやすさを重視するか、威力を追求するかでここの構造が変わってきます。どうされますか?」


「威力を重点において造ってくれ。どれだけ重くなっても、扱いにくくても構わない」


銃の設計を頼まれたザクロはとにかく威力をぎ込めと命令する。

ライムの技量と力量なら、慣れている武器であれば使うことは出来ると考えているからだ。


「威力を追求するならあの魔導式が使えるな……撃ち出す力は炎と力魔法で動かして……あとは……武器その物か」


「銃は余り見たことがないから、造るにも難しいし、造れても当然魔法を無力化する素材を使わなきゃいけないから、こりゃ時間がいるな……」


研究員二人の会話を聞いたところ、案外造りやすいようで造りにくいらしい。


「詳しいことは分からんが、何が作業を手詰まらせているんだ?」


「銃の構造です。魔法で弾を撃ち出す以上、魔法に耐える素材で造らねばなりません。後、面倒くさい問題が一つ……」


「どうした?」


「我々銃は絵では見たことがありますが、実際に見た事も触れた事もありません。……造り方が分からないのです」


コストよりもずっと深刻な問題があった。

どうやらこの国は思っている以上にヤバイらしい。


「見たことがない?この国は銃を誰も持ってないのか?」


「国民も魔法使いが多いですし、魔法でなんとかなるんです。後、聞いた話なんですけど今は魔法が使えない人も銃を使うのはほとんどいないらしいですよ」


失楽戦争でも銃を使う人はほとんどいない。

魔法で造る魔法武器は魔法を使えない人も問題なく使えるため、一般的にはそちらが使われる。


その武器の一部はこの国でも依頼を承けては造っている。


「鍛冶屋にでも頼めば作れる……が、確かに時間は掛かるな。まぁ急ぐ話じゃないから、多少遅れても問題はないが」


「なら近くの鍛冶職人に頼みましょうか。個人的に他の国から来た友人がいるのでなんとかなるかと」


「凄い都合がいい話だな。分かった、それでいこう」


そう言うと、一人の研究員は部屋から出ていった。


「銃を見れば造れるのか?」


「見よう見まねですが、なんとかなるかと。私達だけじゃ銃の器は造れないので他の技術者の協力が必要ですがね」


横に座っていた他の研究員に声を掛ける。

今はやることがないらしい、


「魔導師だからか……」


造るといっても魔導師、銃事態は造れないのだ。

元の武器と魔法を組み込んだ武器、それが魔法武器であって魔法使いだけで造れる物ではない。


「そうだ、あっちの方はどうなってる?」


「あっち……あぁ、大丈夫です。あちらは順調ですよ。器の要望は全て鍛冶屋に提出しました。後はこちらが手を加えるだけです」


「分かった。あれは特に気合いを入れて造ってくれ。……あれがあれをもし使う事が出来れば、世界は救われる」


「……?まぁいいです。ところで王よ、もうやることはないとはないとは思いますので、お休みになられては?」


知らない内に時間は夜になっていた。

お休みするほど疲れてはいないが、ここにいてもやることはない。


ここは言う通り、自由に行動するとしよう。


「後は頼んだ。お前らも早めに休めよ」


そう言って部屋からでる。


やることもないため、部屋からでてそのまま外へでた。


(さて……ライムのやつ、上手くいってるかな)


夜空に腕を伸ばし、身体を伸ばす。


「う……あぁ……」


「王よ」


後ろから聞きなれてきた渋い低い声が聞こえたので振り返る。


「ん?なんだ、神父か」


「明日、軍から話があるとの事です。午後の1時からここで話がしたいと」


「分かった」


と短い声で返す。

恐らく魔法武器の話か、国の魔導師を戦争に徴兵したいという話だろう。


どちらにせよ軍からの話。今後に関わる情報を聞けるかぎり聞いておきたい。


(いよいよか。……失楽戦争、いったいどんな世界があるってんだ……?)


曇り空の夜空を見上げて呟いた。




盛り上がらない話でした。

そろそろ話が動かないとヤバイです。。

後、1章の終わりがだんだんと近づいて来ているんで頑張って書こうかなと思います。


更新日時はTwitterで報告します。よければフォローよろしくお願いします。


https://mobile.twitter.com/i32m6s777barrel

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