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本当のゲームスタート


地球と同じで雲があり、そこから雨が降っていたりと、根本的には変わらない。

だが、地球と違って完全な青空は無く、曇りがほとんどである。

理由は雲の上は失楽戦争の戦場で、魔力によってコーティングされた靴と服を使用することで、踏まれた雲が固まり、ちぎれにくくなるからである。そのため、人間も雲の上で戦うことが可能になる。

夜の10時。

さっき軽く闇堕ちしていたなんて思えないほど俺は立ち直っていた。


自分自身も驚くほどの回復。今なら何が来ても怖くない気がする。


「……さて、寝る前の支度まですんだところだし……読むか」


さきほどザクロが置いていった本。

辞書並みの太さではないが、十分に分厚い。読み終えるまでは時間が掛かるだろう。


(Paradise Lost……?直訳すると失楽園か。いったいどういう……?)


本の表紙には英語でParadise Lost、つまり失楽園と書いており、その文字の下に大きな大木たいぼくの絵とリンゴが描かれていた。


そして数ページを流し読みをする。


(失楽園……アダムとイヴが楽園から追放される話。…………!?)


「ご主人様?何を読んでるんですか?」


「……ルーシャ。アダムとイヴという名の人物は知っているか?」


知っていたら……確定だ。


「アダムでしたら、堕天使を生み出したとされる神です。名前は確か……アダム・リベンダー?だったはずです」


「ありがとう、助かった」


(決まりだ。失楽戦争は失楽園。失楽園には堕天使も存在している。さらに神も当然いる。そしてアダムとイヴ、刹那の果実……)


「この世界は……神話の…創世記をモチーフにしているのか……?」


「正解。流石頭が人造人間。知識が段違いだな。俺は神になる前にそれ見せられてもなんのこっちゃさっぱりだっただろうよ」


ドアと声の音が聞こえたと思ったら、ザクロが部屋に入ってきていた。

その顔はにニヤついていて、少し楽しそうにも見える。


……どうやら、俺と話がしたいらしい。


「どういう事だ?これは。……お前は、何か知っているのか?」


「いや、俺もそこまでたどり着いたまでだ。それ以上は流石に分からん」


「あの……二人は何の話を……?」


「すまんが、ルーシャは部屋から出ていっt…」「いや、別に構わない。ルーシャ、話を聞いていろ」


これから話すことはこの世界がゲームだということをルーシャに知られてしまう重要な話になってくる。


この世界の住人であるルーシャに、それはまずいと雑誌は思ったのだろう。


「別に知っても問題はないだろう。知ったところで、多分信じないだろうし」


「はぁ……。お前がルーシャに命令したら絶対言うこと聞くんだろ?俺は反対だが、お前が言うんならしょうがねぇな……」


何故こんなにも残念そうな口ぶりなのかは俺には分からなかった。


「……実は聞かせたいんじゃねぇのか?」


「真実を聞かせて何が悪い。知らないより知ったほうがいいだろう」


知識や真実は知っておいたほうが他の人よりもどの立場において有利になるからだ。

特に思い込みは早めに直したほうが良い。


だが、この世界がゲームだという真実をルーシャが知っても、信用するしないはルーシャ次第だ。

何故ならこの世界の全ての住民はこの世界をゲームと思っていない。全ての人が嘘のことを本当だと思えば、それを訂正するものはいない。つまりそれが真実になるのだ。


それをわざわざ訂正する必要は無い、そう考えた。


「お前な……。知っていい事と悪いことがあるだろ」


「私……聞きたいです」


「ルーシャもこう言っている。俺はルーシャのしたい事はできるだけさせてやりたい。聞くくらいいいだろう」


「分かったよ。別にルーシャがどうなったって俺の責任じゃない。保護者であるお前の責任だからな」


いったいルーシャがどうなるというのか。

考えられるのは自分が現実世界と思っていた世界が突然ゲームといわれて起こる一時的なパニックくらいで、責任も何もない。


「さて、本題だが……どう思う?」


「しかも突然だな!……俺は別に特に意味は無くって、コンセプトとして創世記をモチーフに使ってるだけだと思う」


普通ならそう思うだろう、だが俺は違う。


「俺の深読みだが……これはヒントだ」


「ヒント?なんの?」


「この世界で起こっているのは失楽園をモチーフとした失楽戦争だ。……ところで、失楽園は何の話か知っているか」


「まぁ……大体はな」


失楽園。それはアダムとイヴが禁断の果実を食べ、楽園を追放される話だ。


「それをさっきルーシャが言っていたアダム・リベンダーと合致させてみると、こう仮説ができる」


説ではなく、どちらかというと読みに近い。

これが合っていたとすると、このゲームでするべきことが見えてくる。


「アダムは禁断の果実……いや、刹那の果実を食べた。そして楽園……地上から追い出された。これがこの世界の失楽園だ」


「……まて、刹那の果実は食うと…」


かまわず俺は続けた。


「俺の頭で考えられるのはここまでだが……この本が答えをくれた。失楽園は堕天使の巣窟そうくつと書いてある。ここでアダムが堕天使の創造者という事に繋がるんだ」


本の二番目にに記された言葉、失楽園。

俺はこの言葉が後々キーワードとなるであろうと推測している。


「つまり……何が言いたい?」


「じゃあ、失楽戦争は何のためにやっているんだ?」


「……堕天使を殺すことだろ?」


「俺も前まではそう思っていた。だがこの本の刹那の果実の説明を見て、もう一つ可能性ができた」


刹那の果実。本に記されていることを分かりやすく変換して言うと、食したものは堕天使と人間の混血に変貌するか、あるいは天使と人間の混血に変貌すると記されている。


「この内容から推測できる事がある。お前は理由として堕天使を殺すことと言ったが、こうも考えられる。……軍は、刹那の果実を欲していると」


「……!?」


「二分の一で天使だ。天使になれば、この戦争を終わらせられる力も得られ、地上に楽園エデンを創る事だってできる」


「堕天使は失楽園を……天使は楽園エデンを……か。……だが、リスクが大きすぎねぇか?」


「もう100年も倒せていない敵だ。二分の一で世界が救われるなら、博打をしてでも手に入れたいって事だろう」


ある程度はこれで話が通る。

だが、あくまでも俺の考え。実際はどうなのかは全く分からない。


「……なるほど。で、お前はこれからどうする?」


「ゲームである以上、クリアがある。だから転生させたゲームマスターは俺達にクリアさせたいはずだ。これからは攻略に励む」


「俺達アリドの二人がこう都合よく転生されてるのも妙だしな……。クリアって言っても、何をどうすればクリアなんだろうな?」


一番の問題と言っても過言ではない。

本当のゲームと違って、誘導してくれる人物がいない以上、どうすればクリアなのかが分からない。


「俺は堕天使を全滅したらクリアだと思っている。……だが、MMOのオンラインゲーム形式なら話は別だ」


「なんで?」


ゲームの経験が無いザクロは首を傾げる。

実際俺もやったことは数えるほどしかないが、頭の機械が基本なんでも知っているため、この考えが生まれた。


「ストーリーゲームなら、ストーリーが終わるとゲームクリアだ。だがオンラインゲームは違う。あれにクリアなんて無い」


「ゲームにはクリアがあるって今言ってたじゃねぇか」


「こればかりは例外だ。余り考えたくはないが……」


それだとゲームマスターはなんのために俺達を転生させたのかが分からない。理由もなく転生させたのか……?


色々考えている途中に、ザクロが立ち上がって言った。


「ま、とりあえずこれで方針は決まったな。俺は明日国に戻って作戦を練りたい。お前も来てくれねぇか?」


「別に構わない。……一つ聞くが、この本はどこで手に入れた?」


「この店に帰る途中、変なじいさんから渡された。そして中身を見てみたらこれだったわけさ」


「で、ある程度しか分からないから俺に聞きに来たと」


「ま、細けぇことは気にするな。んじゃ、俺は約束通り玄関だ。じゃあな」


ザクロはドアから出ていき、そして姿を消した。


「私も付いて行ってもいいですか?」


「もちろん連れていく予定だがお前……今までの話を理解してたのか?」


頭を使い、さらにあまりにも声が無かったため、ルーシャには悪いが危うく存在を忘れかけていた。


「げーむますたーというのはよく分かりませんが、他は大体理解できました」


「なるほど……ところで今まで気になっていたんだが、一ついいか?」


「……?はい、なんでしょう」


「さっき、アダムを知っていたな。勉強はしたこと無い筈なのに、なんで知っていたんだ?」


奴隷に勉強させるとは思わない。

そう考えると今までのルーシャの知識量は異常だ。


「私は一瞬でも目や耳に情報が入ると忘れることはありません。だから、どこかで聞いたんだと思います。何度か教育機関にも持ち運び雑用で行った事がありますし」


俺は気付くと少し口が空いていた。

本当なら凄いと言うレベルじゃない。一種の特殊能力に近い。


「固有能力とか固有魔法じゃないのか?」


「いえ、特技です。その二つはまた別にあります」


「その二つはまた機会があったら聞くとするか。俺はもう寝るとしよう」


今日は色々あって疲れたらしい。

頭が疲れを感じてなくても、身体はしっかり感じている様だ。


俺はベッドに入り、直ぐに横になった。


「お休みなさいませ、ご主人様。……あの、それでしたら私も一緒に……いいですか?」


「確認を取る必要はないだろう。好きにすればいい」


「はい。……では」


ルーシャは俺の背中にぴったりとくっつき、俺とルーシャはしだいに眠りについたのであった。




ルーシャがこれからだんだんと……?


更新日時はTwitterで報告します。よければフォローよろしくお願いします。


https://mobile.twitter.com/i32m6s777barrel

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