暗殺者(アサシン)
判定
武器がかち合った時に発生する。
武器の大きさと重さが思いほど判定は強くなり、武器が小さく、軽いものは判定が弱くなる。
例えば上記の二つの武器がかち合うと、後者の判定の弱い武器は折れたりヒビが入る可能性があり、さらに自分に少量のダメージがはいる。
そのため、判定の弱い武器は身軽さを武器にして的確に敵本体のみを攻撃することが重要となる。
「なっ!?」
「これは……ひでぇな」
街から出た瞬間、まだ死んだばかりで消滅していない死体が大量に倒れていた。
さらに肝心の堕天使は一人も見当たらない。
(俺達が来るのが遅いっていっても精々三十秒から一分程度……まさか本当に全員死んでいたとは)
「……!?ライム、危ない!!」
ザクロは槍で何かを弾いた。
「……狙われてるな。油断したら死ぬぜ」
「すまない。助かった」
遠距離からの攻撃。逆算すれば位置を特定できる……が、相手もずっとそこに居座るわけがない。
現に今も180°から弓が放たれてくるのを避け続けている。
しかも何故か俺だけを狙っている感じがする。
「相手はお前が好きらしいな。……俺に策があるが、試すか?」
「……分かった。このまま避け続けても意味がない」
作戦を聞き、放たれた矢を逆算してその方向へと走る。
森に入り、左から矢が放たれると、そちらに走り続ける。
その走る方向に銃を撃ち、相手に威嚇をしながら森の外にいるザクロに発砲した際に生じる光と音で位置を伝える。
そして……。
「破壊神、力を借りるぞ。この一撃で仕留める」
槍を持ち、槍投げの構えをとる。
(見えた!)
「『三叉槍断道』!!」
槍とは思えない太さと刹那の輝きを見せ、目標へ届く。
俺でも避けるのがやっと。つまり避けれる人は極少数に限られるはずだ。
「……すまん、ライム!恐らく……逃がした。手応えが丸でない」
「なら、敵は近くに…」
集中。気を抜くと狙撃される。
「……見つけた」
「!?そこか!!」
後ろに発砲。だが誰もいない。
「ふふ……アタシを……見つけてよ」
「隠れてないで、出てきたらどうだ?」
「暗殺者に……正々堂々……戦えって?」
気配を感じるところを闇雲に撃つ。
だが、
(だがこれじゃ拉致があかない……一旦退くか……?)
「後ろだ!ライム!」
「くっ!!」
直ぐ様反応し発砲。
だが又しても外れる。
「ライム、大丈夫か。この状況じゃ不利だ……一旦退こう」
「……しょうがない……か。このままじゃ俺達が持たないな」
後退りをしながら森を抜ける。
所詮ミニマップ、深く追っていれば遭難していただろう。
暗殺者と名乗る少女は後退する俺達を見過ごしたのか、何もしてこなかったが、森を抜けた時、一本の矢が飛んできた。
(今の軌道……業と外した?)
後ろの地面に矢が刺さる。
矢を見ると、紙が巻き付いていた。
「どうやら、果たし状が来たらしい」
紙を手解き、内容を読む。
『また……逢いに往く』
「……内容は?」
「また来ると書いていただけだ。果たし状でも何でもない」
内容は間違ってないからいいだろう。
俺達は後退りを辞め、街に向かって歩く。
「ふーん、そうか。……ところでよ、一つ頼んでいいか?」
「どうした?」
「悔しいが俺と此処へ来た騎兵も、恐らく死んでる。だから、一晩泊めてくれねぇか?」
「それはケイトに頼んでくれ」
####
「駄目よ!!!」
「そこを何とか頼む。寝るだけでいいからよ」
「寝る以外する事ないでしょ!寝床はもうないんだから!」
そうか、今日は夕飯がないのか。なら確かにする事がない。
「おい、聞いてたのと違うぞ!?どういう事だよ!!」
「お前王なんだろ?金を出せば泊めてやる」
「この鬼畜!今は金になるもんが無ぇだろ!」
「その腕にずっと付けてる防具くらいなら貰えるだろ。俺はそれを売る」
「ご主人様……怖い」
ルーシャにはカツアゲしてる様に見えたのだろう。
だがこれは違う、生きるためにはやむを得ない事だ。
「金がなくて飢え死にするのと、生きるためにやむを得ず良からぬ事をするのなら迷わず後者を選択しろ。死んだら元も子もないからだ」
「……なるほど。記憶しました。……王様、お金…下さい」
「変な教えしてんじゃねぇ!!ルーシャ?とかいったか。コイツの言うことは間違ってるからな!!信用するんじゃねぇぞ!!」
「ルーシャ、ご主人様の言うことは絶対。王様が間違いです」
「あぁぁぁもう!!玄関!玄関ならいいだろ!!」
「玄関ねぇ……玄関ならいいわ」
「ケイトさん、ありがとうございます!この恩は必ず…」
「恩?なら……その防具ちょうだい!」
「だからなんでだよぉぉぉ!!!」
地面に両手を叩きつける。
これが一国の王には到底見えない。
「今のは冗談だ。ただ、ちょっと俺の頼みを聞いてくれ」
「なんだよ。どうせ酷い事するんだろ?雑用だろ?」
「ルーシャに……剣の使い方を教えてくれないか?」
ザクロの目が変わり、発せられた声のトーンは低かった。
「どういう事だ?」
「俺は訳あって剣が使えない。教えられるのは体術と拳銃の扱い方だけだ。しかもお前は槍も剣も、弓も使えるだろ。適任だ」
ザクロは場所を選ばない器用な所が取り柄。
槍は勿論、剣術、弓術、銃など武器の扱いはなんでもできる。
「そういう事じゃねぇ。なんで教える必要がある。コイツに戦う意味なんてねぇだろ」
「……戦いたいんです。ご主人様が生きてきた道を見てみたい、ご主人様の力になりたいんです」
ザクロはルーシャの視線に合わせて、じっと見つめる。
俺と同じで目を見て判断していると思われる。
「……お前もライムに似て変わり者だな。……いいだろう、引き受けてやる」
「すまないな。先に言っておいてなんだが、よかったのか?王は忙しいイメージなんだが」
「俺は王だが、俺が居なくても国には神父と魔術師がいるから大丈夫だろ」
「ならよろしく頼む。ルーシャは身体が細いから出来るだけペースはゆっくりでやってくれ」
「分かった。ルーシャと言ったか、明日からよろしくな」
ザクロはルーシャに手を伸ばす。
その手を見てルーシャは俺の方を向いた。
「ん、どうした?」
「これは、握手……ですか?」
「そうだ。玄関で寝れる代わりに俺はお前を指導してやる。だからよろしくなって事の挨拶だ」
俺は黙って頷く。
「……分かりました。どこまでやれるか分かりませんが、頑張ります」
その大きな手を小さな手で握った。
「さて、明日からって言ったけど、今日からやっていいか?」
「あぁ、好きにしてくれ」
「ならルーシャ、街で武器は危ねぇ。街の外にでるぞ」
ザクロは玄関に向かって歩きだした。
ルーシャはそれを見て再び俺を見る。
「ルーシャ、外にいる間はザクロがご主人様だ。アイツの言うことを聞け」
「……分かりました。行ってきます、ご主人様」
ルーシャはザクロの背中を追い、外へ出た。
「私、ちょっと空気だったわね」
「何の話か分からないが、まぁいい。俺も外へ出る」
「あらそう。行ってらっしゃい」
「あぁ。行ってくる」
そう言って俺も外へでる。
外に出たのは、長く滞在するであろうこの街の全体を把握するためだ。
自由時間があまり無かったため、ルーシャとザクロがいない今、街を回るのにはちょうどいい時間だ。
(街といっても、見た感じでは街と呼ぶには狭すぎるな……奴隷が沢山いるとも聞いていたが、その割りにはあまり見ないな……)
今は夕方の一歩手前といったところの時間だ。
そんな街は現在、さっき堕天使が降りたという事が無かったかの様に人がもう外に出ていた。
(恐怖心があまり感じられないな。そういうのに慣れているからか?)
その賑やかな街には、カフェやレストランといったファンタジー感があまりないものから、集会所の様な城みたいな建物まで、色々混ざっている。
「ここが街の端か……」
家からでて約30分。街の最端らしき門まで来た。
ここまでの道で見た感じだと、カフェやレストランの他に雑貨屋や花屋、現代社会の街と街並みは全く違えど、基本は変わらなかった。
「ここまで一本道で来たが……やはり狭いな」
横にも道はあったが、取り敢えず真っ直ぐに歩いてきた。
もしかしたら横に曲がったら案外広いのかもしれない。
「外の方は……」
俺は門から出て、街の外を見渡す。
「向こうとあまり変わらない……か」
森と木、変わっているところは数メートル先に池があることくらいだ。
そして誰も見当たらない。
(……帰るか)
後ろの森に身体を向けた。
「……待って」
後ろから少女の声。柔らかく、だが適度に無感情な声質。
今日聞いた声とは似ているが少し違う。
なんというか……懐かしい。
「……誰だ?その気配の無さは暗殺者か?」
「敵に背を向けるな。それは死と同じ。」
「なっ……!?」
その言葉、懐かしいと感じたその声。
俺の耳に間違いは無かった。
「ラ……イチ?」
「……もう…逃がさないから……フフ…」
その背中には、見たことがない黒い翼が付いていた。
日にち開けすぎてごめんなさい。
急いで書いたため文も何かおかしい感じにもなってる感じがします。
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