ゲームオーバー
9/9、前半部分の戦争の出来事の内容を変更、先の話に支障がでない程度に全く違う新しい文へ。
2142年3月15日、戦争が始まって、3年が経った。
第4次世界大戦とも呼べる様な大規模な戦争。それに日本は参加していた。
第1次、第2次の主力で使われていた戦艦や戦車の姿は形を変え、全体的に小型化による被弾面積の低下や軽量化による移動速度アップ、軽量化しても装甲の強度は落とさない化け物へと姿を変えていた。
その技術を最初に開発、実践投入したのが日本。
技術の日本とさえ評された技術は機械のみならず、人にまで及んでいたのだった。
だが技術が凄い国が日本というだけであり、ただ一人世界最高の技術者は他にいる。実現不可能とされた技術と神秘を生み出せる者はこれまでいなかった。しかし、この技術者の手に掛かれば、この限りではない。
(もう戦争が始まってから3年……多くの老若男女は死に、無惨にも何も残せず死んで逝く。……私はそれをとても見ていられない)
どんな優秀な技術者を一人集めても不可能だった技術。約100年前に成功した視覚のみのVR化からその先の技術。
人間の五感を全て機械に身を委ねるフルダイブ型のVRだ。多くの創作物では何の違和感もなくその世界にフルダイブVRが存在するのだが、そんな物は今の今まで不可能だった。
それが、この男で実現した。
(だが……この技術さえあれば……少なからず救う事が出来る。人間は常に娯楽を求めて生活する。何故か二十歳以下の子どもにしか作用しないのは不満だが……これでも十分多くの人に救いが与えられるだろう!!)
この男はあろうことか、この男はフルダイブ型のVRでは満足しきれず、その先の技術まで作ってしまったのだ。
戦争で死んでしまった人を救いたい、その気持ち一心で開発した技術。
電脳の、死後の世界を。
「新たなる楽園、新たなる君達の救いのエデン!!『ヘヴンズゲート』のサービス開始を宣言する!!!!」
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俺達の部隊を含む小隊は今、一昔前の日本では考えられないような荒れた街に来ている。
(俺は……何でこんなところにいるんだろうな……)
____そうだ。俺は『強化孤児』として身体を改造された7人の一人、ライム。コードネームは全て果実の名前から取られているため、通称『アリド』と言われている。アリドとは、果物の王様と称されるドリアンを逆さに呼んだ場合の名前から取ったものである。
そんな俺は南西の最前線に来ている。
もうこの戦争が始まって3年。あっという間に17歳になり訳も分からずこの身を改造され、戦場にいる。
武器は刀とハンドガン。こんな接近に特化した武装で今起こっている弾幕の撃ち合いはなにもできない。
俺は家の隙間で隠れながら撃ち合っている一般兵に声をかけた。
「………この撃ち合い、何とかして接近の俺がどうにかできる位にまで出来ないか?」
「誰だか知らんが圧倒的に数が足りん!このままだと逆に殺られるぞ!」
「ならお前の使っていない予備のアサルトライフル、一つ借りていいか?」
そう言うと撃つのを止め、こちらに振り向く。その顔は険しく、今の戦況を物語っていた。
一般兵は足から順に、明らかに金がかかっている制服、胸のアリドとローマ字で描かれた剣と銃が描かれたエンブレム、腰にある刀を見ると険しい顔からだんだん恐怖映像を見たかのような歪んだ顔になっていった。
「強化孤児……アリドの一人か……!?それなら心強い、存分に使ってくれ」
強化孤児……それは親がいない子どもを中心に日本の最新の技術を用いた強化人間の事。親がいない子どもを中心にするのは強化に失敗して死んでも悲しむ人が少ないため。大人を強化人間にしない理由は子どもの方が身体が小さく、使う部品などのコスト削減のためである。
一般兵はライフルを外し、俺にくれた。そうすると無言でまた前を向き、撃ち合いを始めた。
(さて……隠れるところが家と家の隙間ぐらいしかないこの状況で敵を一掃するには……)
「こちらコードネーム:ライム、南西の最前線。索敵を頼む」
耳に取り付けている通信機で後方で支援している解析班に通信を入れる。
少し遅れて解析班は通信に応じた。
「こちら解析班の葉月。少し時間を要求するが構わないな?」
「出来るだけ早くしてくれ、長くはもたない」
少しすると通信機のカメラから目の前の民家の壁に簡易的なマップが映しだされ、敵は赤、味方は青で表示されている。
数はざっと見て約20人。
「この程度か………通信を終了する」
(目の前にいる敵を倒してもまた別の敵がすぐ横にいるな……だが……)
「今から突っ切る。そしたら見えた敵をを撃て」
「は?ちょ……見えた敵……そうか!」
一般兵に言った時にはもう一般兵の目の前にいて、一般兵は撃っていた。
俺は目の前の敵が撃つのを少し止めた時を見計らって走った。
目の前の敵はおそらくリロード中、もしくは身を隠しているため最低1秒は弾は飛んでこない。
だが横、家の二階にいる敵に一方的に狙われ、弾が四方八方から飛んでくる。
(俺はそれを………避ける……!…!)
俺は飛び出て敵の注目を集め、相手にカモだと思わせる。そうして殺そうと思った敵は一斉に俺に銃を向け、撃ってくる。撃ってきたという事は身体を物陰から出しているのと同じこと。
だから俺はそこの一般人に見えた敵を狙えと言い、一般兵はそれを実行した。それは視界の右上に見える敵が倒れたことで確認できた。
俺は目の前に隠れている敵の場所を『熱』で察知し、刀を構える。
そして家の角を曲がると…………一閃__。
「そこだ!……………なっ………に…………」
「遅い。逃げればいいものを」
相手も俺が来ることを当然知っていて待ち構えていた様だ。
だが所詮は雑兵、この俺に勝てるはずがない。
その横に立っていた雑兵も問答無用に切り裂く。
「ひ……ひぃ……た…助け…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逃げても、追いつくだろうがな」
俺はそう目の前の二人の死体に言った。
(借りたアサルトライフル、使わなかったな……)
俺はアサルトライフルを地面に置き捨て、次の敵へと向かった。
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「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
(これであと一人か……この家より少し離れているな……)
俺はそう思いながら全神経を集中させた。レーダーにはなかったがすぐ後ろの壁越しに人の熱を察知したからだ。
(敵…………?レーダーに映らない………だと……?)
「僕に用かな?」
「なに!」
そう言うと後ろには銀髪のモデルでもやっているかのような中性的な顔、声をした同年代位の男性がドアにもたれて立っていた。
武器は不所持、防具もつけているようには思えない。
「誰だ」
「そんな顔してちゃダメだろぉ?綺麗なイケメン顔が台無しじゃないか。」
「敵なのか、聞いてもいいか?」
「僕たちは君たち強化人間の対抗策として造られた存在だよ。その意味が分かるよねぇ?まぁその前に君、倒れちゃうけどねぇ」
「どういう意味だ……?」
(敵対心を全く感じない。そして倒れる……どういう意味だ……?)
「それじゃ、いい夢を。また逢えたらいいねぇ」
そう言うと男性は俺を残し、ドアを閉めた。
すぐに追いかけないのは熱探知で歩いて部屋を後にしているのが分かり、すぐに追いつけると思ったからだ。
(敵であることは変わりない……なら倒すまでだ)
俺はドアに向かってドアノブを握った。しかし開かない。どう力を加えても開かなかった。
なら剣で無理やりこじ開けようと剣を抜いたその時だっだ。
(刀が………腐食して………!)
剣が腐食していて折れかかっていた。すぐにハンドガンも確認したがハンドガンも少し錆びついていた。
そしてさらに追い打ちをかけるかのように俺にも不運な事が起こった。
「うっ…………!?胸が……熱い……!」
胸を摑みその場に倒れ、そして蹲った。胸だけでなく頭も焼けるように痛い。
俺はただひたすら痛みで我を忘れて叫んでいた。
「あ……!うっ……!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫んでいる声に霞んでうっすらと外から声が聞こえた。
その中世声はさっきの男性に違いなかった。
「痛いかい?痛いだろう!?君たちの体内は半分機械でできている。だから身体の中が僕の『魔法』で腐食しているのさ。……でも……家ごと壊してやるけどねぇ!」
「なっ……!腐食……だと……!?」
「また逢えるといいねぇ……フフッ……これさっきも言ったね。じゃあ……今度逢うのは天国だ!!」
「『腐喰濁!!』」
「地面が揺れ…………!天井が………落ち……て……」
あの地面が揺れた感覚。いや、実際に揺れていたのかもしれない。痛いという感覚も次第に無くなっていた。
(死ぬのか……俺は…?)
この短い人生の中で思うことはない。あるとすれば……。
(俺の本当の名前は………いったい………)
俺の意識は、そこで途絶えた。
「フフ……強化人間というものも脆い……ですがこの『魔法』という創作物でしかあり得なかった神秘の塊……………ん?なにか用かな?彼方達は」
「ライムの反応が途絶えたから来てみたけど………許さない」
そこにはアリドの……6人の強化孤児が立っていた。
早め早めの更新を目指して頑張っていきます。