二十一話
馬と荷馬車を手に入れたアンドゥは早速動き出した。
馬屋で教えて貰った場所で飼料を購入し、荷馬車に積み込むと、
「行こうオーク」
アンドゥはオークヒディス、愛称オークと名付けた馬に指示を出した。その動作は周りの見様見真似だったが、元々誰かが使っていた馬。ある程度調教はされていて素人でもなんとかなっていた。
現在の場所はヴォフレラントの端、アンドゥたちは周辺探索を兼ねた試運転へ出掛けるのだった。
オークと名付けられた馬は、茶色の肌にほどほど長い黒いたてがみ、腹は出ていて、全体の体つきはロバに似ている、そういう馬種だった。
御者席に座り、アンドゥは、
――うーん。擬体、立ってるのはいいんだけど座るの苦手なんだよな。
全く周りなんて見てなかった。
今御者席に座っているのは擬体。本体のアンドゥは、外から見れば空気椅子、しかも擬体操作用のスーツなしでは足の指で地面を掴んでいないかぎり不可能な姿勢をしていた。
フィア曰く、スーツを変え出力を上げないと座る姿勢は違和感を強く感じるそうだ。
――はあ。微妙に腹にくるな。お腹が割れたらどうしよう。
それはそれでいいんじゃないだろうか?なことを考えるアンドゥがいた。
ヴォフレラントからしばらく離れたところで、荷馬車の御者席で横たわっている人物がいた。その人物は気の弱そうな顔を歪ませ腹を押えている。
「は……腹痛い」
きっと明日は筋肉痛だろう。そんなアンドゥがいた。
しばらくして痛みが収まってきたのか、アンドゥは地面の上に降り立った。
「若い子は歩かなくちゃね」
誰に言い聞かせるのか、アンドゥは休ませていたオークと並んで歩き出す。
ほとんど物が載っていない荷馬車を軽々とした調子で引くオーク。
幸い朝の忙しない時間帯は過ぎているので、アンドゥの周りを見ながらのゆっくりとした歩みでも、他の者の通行の邪魔にもならずなられず一人と一頭は道を進んで行く。
道の途中、アンドゥたちはここを行き交う者たちが休憩に使っているとおぼしき広っぱで足を止めた。
「オーク、ここで休もうか」
辺りに漂う長閑な雰囲気に、更に広っぱを進み川近くまで到達すると、アンドゥはオークの輓具を外す。
「あんまり遠くへ行っちゃ駄目だよ」
オークは川辺までゆったりとした足取りで歩くと、川に口をつけて水を飲み始める。アンドゥはその光景を尻目に、荷馬車に載せた飼料を飼料用の桶へと移していく。
「オークー。草を食むのもいいけど、こっちもお食べー」
水を飲み終わり手近に生える生草を口へ運ぶオークに、店で買った飼料を入れた桶を掲げるアンドゥ。
そうするとオークは、草を食むのを止めて顔を上げアンドゥの元へと歩いて行く。
アンドゥたちの周囲は時がゆっくり流れているようだった。
午後、アンドゥたちは再びヴォフレラントに戻って来た。
「試しだったけど、中々良かったんじゃないか」
オークに試運転の感想を語るアンドゥ。
「これだったら明日から頑張って貰えるね。明日からしばらく大変かもしれないけど、よろしくよ」
アンドゥはオークを買った馬屋にオークと荷馬車を預けると、しばらく町中で用事を済ませ、あと少しで夕焼けに染まる日の光を右肩に浴びながらヴォフレラントから再び外に出た。
「初仕事も取ったし、運び屋アンドゥここに誕生だな」
そう言い残し、アンドゥは海へ消えていった。
作者三作目も無事人外キャラが登場しました。
ペット、相棒、家畜。
グミ、綿菓子、う〜まー……ば、馬刺しっ! やってしまった。人外キャラ美味しい食べ物(見た目)シリーズも今作で途切れることになった。そのことをここに謝罪します。
人と動物?のあり方ってあと何がありますっけ? 動物憑依? 転生?




