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十五話

 リュルブッセ諸島。それは大小二つの島からなり、西はタスピモウス、東はコーリカム国に挟まれた両国の緩衝地帯。

 両国の航路上にあり、中継地として昔から利用され、少しずつ発展していった歴史を持つ。

 夜の間だけ浅瀬で停泊させるだけで始まった利用も、今やいくつかの商会が進出し、両国の繋として重要な役割を占めるようになった、なってしまった、両国上層部の目の上のたんこぶ、それが現在のリュルブッセ諸島。


 諸島西側の島、ヒディルキー島。そのヒディルキーでは現在、不穏な風が流れていた。


 ヒディルキー島にはいくつか人の集まり、集落があるが、ここは最初にして最大の港町、名称は特に決まってないが、外の者たちにとってヒディルキーと言えばこの町、島民にとっては南の町で通っているリュルブッセ諸島最大の人口密集地。そこに店を構えるある商会の一室。


「フリンブル港について続報が入りました。軍艦十五隻を超えているそうです」


 そこには、部屋に入って来て矢継ぎ早に事柄を告げる若者と、部屋で書類に目を通していた壮年の男がいた。

 壮年の男は、若者を報告に書類から手を話すと、椅子に深く座り直し、眉間に手を置くのだった。


「――十五か。海賊退治にしては多いな。近頃タスピモウスで大きく金が動いているという噂は、どうやら真実のようだ」

「どうなさいますか?」

「どうもせんし、どうもできん。それに我々はここでは新参もの。失うものより得るものが大きくなるように動けるまたとない機会。しばらく静観を決め込もうじゃないか。情報を集めつつな」


 若者が退室すると、壮年の男が呟いた。


「海上封鎖はなしか。ならそう間をおかず、タスピモウスは来るな。さて、コーリカムはこの情報をどこまで知っているのだろうか……」


 タスピモウスが来るのは、最早確定事項。それも、ただの海賊退治ではない事もここ数日入って来た情報を鑑みれば、至極当然。

 どう立ち回れば我が商会にとって有利となるか、しばらく椅子に背を預けて考える男であった。




 リュルブッセ諸島では、不穏な風に気づき出した者が出始めた頃、時世に流されない者がいた。それは、いつかのように水柱を上げて船に飛び乗ると、海賊と名乗り、マストを殴り折った者を指している。海賊アンドゥである。


 アンドゥが今回襲った商船の乗組員たちも、はじめアンドゥを侮っていたが、マストをへし折ると投降の意を示した。マストは帆船の命。彼らが受けるストレスは想像に難くない。


 商船の乗組員たちが船を降り、しばらくするとアンドゥはフィアへと連絡を取った。


「こちらアンドゥ。フィア、聞こえてますか?」

「――はい。感度良好、アンドゥさんそちらの状況はどうなりましたか?」

「状況終了。引っ張ってって貰っていいですか?」

「はい、少々お待ちください」


 アンドゥたちが通信を終えると、商船側面に水中から潜水艇が海上に現れ、金属ケーブルが射出された。


 タスピモウス、コーリカム国、リュルブッセ諸島。この三つの地域の思惑とは関係なく、また一隻、海から船が消えた。


 役割を終え、アンドゥが擬体を操る部屋から出ると自室へと歩き出した。その後ろ姿は、表舞台に出始めた五月中旬とは違った印象を与えてくるのだった。





 時は流れ、六月一日を明日に控えた五月三十六日。コーリカム国に激震が走った。リュルブッセ諸島がタスピモウスの手に落ちたと。




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